December 29, 2008 / 6:03 AM / in 10 years

〔ポスト金融危機〕米国の一国支配は終えん、ドル崩壊の軟着陸が必要=クオンタムリープ代表・出井伸之氏

 [東京 29日 ロイター] 米国発の金融危機が世界に広がり、1929年以来の世界的大不況のリスクが現実味を帯びてきた。「金融動乱」とも言われる今回の混乱は、この先の世界経済の構造をどのように変えていくのか。新しい枠組みを明確に描くシナリオはまだ不透明で、市場主義の終えんを指摘する声も浮上する。企業経営やM&A(企業の合併・買収)、日本経済はどこへ向かい、個人はマーケットとどう向き合っていけば良いのか。ソニー(6758.T)元会長の出井伸之氏、早稲田大学大学院の野口悠紀雄教授、GCAサヴィアングループ(2174.T)の佐山展生取締役、作家の石田衣良氏の4人にインタビューした。

 コンサルティング会社クオンタムリープ(東京都千代田区)の出井代表(ソニー(6758.T)元会長)はインタビューで、現在の世界経済の大混乱は、金融問題だけでなく世界的規模で多くのひずみが噴出した結果であると指摘した。その上で、米国による世界経済の一国支配が終わった今、ドルの崩壊を食い止め、軟着陸させることが重要だと語った。現在の円高は自然のメカニズムでは調整されず、ドル/円JPY=は史上最安値の79.75円を突破する可能性が高いと予測。かつてのブレトンウッズ体制のような為替の新しい仕組みを作ることが必要との認識を示した。また、日本企業は大量生産型からの業態転換を迫られており、今後はテーラーメイド型の産業が有望だと述べた。

 インタビューの主なやりとりは以下の通り。

 

 ──今回の金融危機をどう見るか。

 

 「時期や規模は予想がつかなかったが、いずれ(金融のバブルは)破たんすると思っていた。私がソニーのCEO(最高経営責任者)だったとき、IR(投資家向け広報活動)をやっていて『難しいな』と思った。ヘッジファンドの人に経営戦略をいくら一生懸命に説明しても意味がなかった。彼らの関心は今後1週間で株が上がるのか、下がるのか。それによってポジションを変えるだけ。モノの本当の価値を考えるのではなく、瞬間的なゆがみを狙って投資の機会をうかがっていた。そういう経済がどんどん拡大し、ついに破たんした」

 ──金融資本主義は終えんを迎えたと思うか。

 「米国の行き過ぎた金融資本主義は、もはや続かないと思う。資本主義と一口に言っても、産業資本主義と金融資本主義の二層構造になっており、上部の金融資本主義があまりに大きくなり過ぎたため、支えきれずに崩壊した。米国の金融は、ホテルや不動産など20世紀に作られ、ゆがみが生じたものを売り買いして金儲けをしてきた。しかし、人口や企業が生み出す富など実物経済に限りがある以上、金融ビジネスにも限界がある」

 「企業も金融ビジネスの対象となり、ゆがみが生まれた企業が売買されたが、それも崩壊した。金融ビジネスでは企業の価値を算出するのに、EBITDA(税引前利益に支払利息と減価償却費を加算)の乗数や売上高の乗数、さらに米ユーチューブのようにまだ収益を上げていない企業に対しては期待利益の乗数などの単純な数式を当てはめてきた。実物経済の世界では足し算してはいけないものを、金融工学の世界では足し算していた」 

 「ただ、これは金融だけの問題ではない。世界中であらゆるゆがみが噴出してきた。産業資本主義と金融資本主義の間のひずみ、グローバルに活動する企業と政府の間のひずみ、先進国と新興国・資源国のひずみ。今回の金融問題が引き金となり、世界はさまざまな問題に対処しなくてはならなくなった」

 

 ──世界経済の今後の行方をどう見るか。

 

 「一番のポイントは為替。ドル崩壊のハードランディングをいかに防ぐかが重要だ。大半の通貨がドルに固定され、円とユーロが変動する今の仕組みを見直す必要があるだろう。ドルと連動した通貨はどんどん価値を下げており、こういう状態なら早く円に換えようという動きが強まり、ますます円高が進む。私がソニーの社長に就任した1995年に1ドル=79円まで円高が進んだが、今回はその水準を超えると思う。ほとんどのグローバル企業はドルの価値が緩やかに下落していくことを認識して中期計画を立てている。これ以上の円高が進めば日本で生産することは考えられない」

 「かつてのブレトンウッズ体制のように、もう1度各国が集まってシステムを作り直すしかないだろう。現在のゆがみは自然のメカニズムでは直らない。ただし、当時は欧米だけが集まれば良かったが、現在はそうはいかない。アジア通貨危機でのIMF(国際通貨基金)が象徴するように、いろいろな国が好き勝手なことを言うから、国際機関がうまく機能するのは難しくなっている」

 

 ──日本経済はどうなるか。

 

 「米国というロールモデルの一国支配が終わり、日本は戦後初めて自分で判断しなくてはならない事態に直面している。規模の大きいことが良いことという20世紀の常識は崩れ、もはや日本は業態転換をしなくては生き残れない。中国が最新設備を使って低賃金でモノを作れる時代に、日本のメーカーが今さら国内工場で生産するのは理屈に合わない」

 「日本に携帯電話メーカーや自動車メーカーが10社近くもあるのはおかしい。例えばその患者にしか効かない医薬品など、これからは大量生産型ではなく、テーラーメイド型の産業が有望だろう」

 

 *このインタビューは12月24日に行いました。

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 (ロイターニュース 久保 信博記者;編集 田巻 一彦)

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