September 4, 2009 / 9:02 AM / 11 years ago

〔焦点〕大和証<8601.T>は正念場へ、信用力低下と顧客基盤そう失のリスク

 [東京 4日 ロイター] 三井住友フィナンシャルグループ(8316.T)との合弁を解消する方向で協議に入ったことで、大和証券グループ本社(8601.T)の経営は正念場を迎える。銀行が持っていた法人顧客基盤を失って収益機会減少のリスクに直面するのに加え、銀行の後ろ盾で保っていた信用力がはく落すれば、格付けの低下と資金調達コスト増加は避けられない。独立系の証券会社として出直し、新たな顧客を開拓する方向で収益拡大を狙うことになるが、ガリバーとして証券業界に君臨する野村証券の存在が大きく、今後の展開は決して楽観できないとの見通しが業界内で広がっている。

 <信用力の低下、避けられず>

 「大和証券の方が失うものが大きいのではないか」――。あるメガ金融グループの首脳は、三井住友と大和の資本・業務提携解消を「協議離婚」と称して、こう分析した。

 大和が失うものの1つは、その信用力だ。「提携が解消されれば、大和証券グループ本社の格付けは2ノッチ引き下げられる可能性がある」と複数のアナリストや金融関係者は指摘する。三井住友の出資を受け入れているのは大和証券SMBCだが、子会社の信用力が考慮されて持ち株会社である大和証券グループ本社の高格付けが維持されている面がある。

 実際、大和証券SMBCの格付けはムーディーズでA1(格下げ方向で見直し中)だが、グループ本社はBaa1(格下げ方向で見直し中)にとどまる。信用力で見れば子会社の方が高い。子会社の信用力に支えられたグループ本社の格付けは野村ホールディングス(8604.T)(Baa2)を上回る。「提携解消で今後の資金調達コストの増加は不可避」(外資系証券幹部)との指摘されるのは、このためだ。

 リーマンショック後、世界の金融機関を襲ったのが「流動性危機」。米国の有力投資銀行も軒並み銀行の傘下に入ったり、商業銀行の免許取得で流動性を確保した経緯がある。今回の大和証券の動きはまさに正反対の方向となる。先の首脳も「大和は今後、流動性危機が再発した場合のリスクに対応できるのだろうか」と懸念を示す。

 格付けの低下は資金調達面だけではなく、ビジネス面での収益にも影響を与えるとの指摘もある。格付けの引き下げにより、大和SMBCで展開するトレーディング業務においてカウンターパーティー・リスクが上昇してしまい、デリバティブ取引の低迷や収益悪化の懸念も生じる。

 ただ、カウンターパーティー・リスクやトレーディング業務全体について、クレディ・スイス証券の大野東アナリストは「金融情勢が安定していれば、短期市場で調達しにくくなることは考えにくい」と分析。野村と比べると大和はバランスシートを使ったデリバティブ取引などが少なく、調達コストは上昇しても、短期の資金繰りに支障は出ないという。

 また、格下げになっても短期資金は「国債を担保にレポ取引などでまかなえる」と指摘。一方で、長期の融資で大和証券SMBCを支える三井住友銀行も「融資の引き上げは考えにくい」(同)と見る。経営を行き詰まらせ、不良債権化すれば銀行に跳ね返ってくるからだ。大和証券グループは7月に公募増資で約2000億円を調達しており、財務基盤は強固。三井住友は、大和との友好関係は維持する方針で「メーンバンクとしての立場は今後も変わらない」(経営陣)とのスタンスだ。

 <顧客基盤の再構築が必要に>

 もう1つの懸念は、顧客基盤の喪(そう)失だ。大和は、提携関係にあった10年間、三井住友から法人顧客を紹介してもらうことでメリットを享受してきた。JPモルガン証券のアナリスト、辻野菜摘氏は合弁解消によって大和の「(法人証券業務への)収入が大きく減少する可能性がある」と述べ、大和が生き残るか否かは、収入が減少する一方で、どの程度コストコントロールができるかが焦点になると分析する。ただ、提携解消により、大和の収入がどの程度減少するかは現段階では不透明だ。

 一方で、提携解消はネガティブな側面だけではなさそうだ。法人顧客の中には、資金調達やM&Aの戦略を描く際に「銀行におうかがいを立てずに進めたいと希望するところが多い」(外資系証券)とされる。大和にとって三井住友との縁切りは、メガバンクと無関係であることを売りに新しい顧客を獲得するチャンスにもなる。

 JPモルガンの辻野氏は「大和のリテール基盤は強固だ。ホールセール業務は小規模になるが、確実に販売できるものを組成するというリテールに重点を移した適正サイズの法人証券にすることができれば、面白い証券会社になり得る」と予想する。また、ライバルである野村証券関係者も「10年間、カゴの中の鳥だった大和が自立するまでに相当の覚悟と時間が必要になるだろう。

 しかし、脱銀行のいいチャンスだ。野村が唯一の独立系証券とは言えなくなるが、国内で健全な競争が生まれる」とエールを送る。

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(ロイターニュース 布施 太郎、江本 恵美、平田 紀之、編集:田巻 一彦)

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