October 27, 2009 / 3:47 AM / 10 years ago

〔特集:自動車・電池新時代〕カギ握る電池の大容量化、自動車業界に構造変化も

 [東京 27日 ロイター] モータリゼーション普及の起爆剤となった「T型フォード」を米フォード・モーター(F.N)社が世に送り出してから約100年。産業界のチャンピオンとして世界に君臨した自動車業界は今、歴史的な転換点に差しかかった。環境問題の重要性が意識される中、次世代自動車の心臓部はエンジンからエレクトロニクス技術を基盤とする蓄電池に代わるとの見方が強まっている。クルマを取り巻く産業地図が大きく塗り替えられる可能性が高まると同時に、電力インフラやIT(情報技術)ネットワークと融合し、従来は想像もしなかったような新ビジネスが生まれる可能性も指摘されている。自動車、エレクトロニクス、エネルギーなど広大なビジネスのすそ野に波及しそうな一連の動きは、「新・産業革命」と呼べるほどのインパクトを予感させる。ロイターは次世代自動車を中核とした巨大なうねりの一端を3本の記事で紹介する。

 <普及台数で電気自動車に水を空けるハイブリッド車>

 千葉市(幕張)で開かれている「東京モーターショー」では、ホンダ(7267.T)が近距離用小型電気自動車「EV N」を初出展し、三菱自動車(7211.T)が既に発売済みの電気自動車「i―MiEV(アイ・ミーブ)」をベースにした小型商用車を出品した。トヨタ自動車(7203.T)のプラグイン・ハイブリッドは12月に国内発売予定で、3時間充電すれば電気のみで20キロメートル走行でき、事実上の電気自動車である点も注目された。

 中でも電気自動車に社運をかけている日産自動車(7201.T)は、前後2人乗りで、カーブで二輪車のように車体が傾く超小型電気自動車「ランドグライダー」や、2010年から日米で投入し年産20万台の量産を計画している電気自動車「リーフ」を展示した。カルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は19日、都内の外国特派員協会で講演し、「自動車の排気ガスと地球温暖化との間に因果関係があるかないかにかかわらず人々は(排気ガスが)ゼロの車を求めている」と力説、電気自動車に経営資源を集中投下する意気込みをみせた。

 しかし、エコカーの主流は当面、ハイブリッド車とみられている。調査会社の富士経済によると、ハイブリッド車の世界市場は2009年見込み68万4000台だが、電気自動車は2010年で3000台程度。2020年の予測でもハイブリッドは375万台まで急増するが、電気自動車は13万5000台程度にとどまる見通しだ。

 電気自動車は、搭載する電池が300万円程度と高い上に、現在の電池容量では走行距離が最長160キロ程度(日産「リーフ」の場合)にとどまる。電池の容量や充電施設などインフラの整備が不可欠で普及へのハードルは高い。

 このためトヨタは、家庭で充電可能で、ガソリンも併用できるプラグインが「現実的な解」(内山田竹志副社長)との立場。同社の豊田章男社長はモーターショーが報道陣に公開された21日に「短距離は電気自動車、長距離は燃料電池車という住み分けになっていくと思う」と述べ、次世代技術は全方位で取り組む姿勢とともに電気自動車は当面、短距離輸送手段に限定されるとの見方を強調した。

 <充電済み電池の交換方式、電気自動車の将来変える可能性>

 これに対し、電池に充電するのでなく、充電済みの電池を丸ごと交換するビジネスモデルを提案しているのが米ベンチャーのベタープレイスだ。電池に充電する時間がかかるうえ、電池の容量拡大が今後急速に進むとみられるため、車全体でなく電池のみを交換する方が合理的と判断しているからだ。同社はイスラエルで仏ルノー(RENA.PA)・日産グループと共同で事業展開を予定しているほか、日本でも経済産業省の支援を得て、タクシー最大手の日本交通と提携。来年1月から都内で電池交換式タクシーの実証実験を行う。

 8月末に自動車・機械向け大容量リチウムイオン事業への参入を表明した三菱重工業も、電池交換式の電気自動車に期待。「ベタープレイスと共同事業化について情報交換している」(福江一郎副社長)ことを明らかにしている。

 日本法人ベタープレイス・ジャパンの藤井清孝社長は、15日ロイターの取材に答え「人間が乗る自動車は、パソコンと同じスピードで技術が進化するとは思えないが、(自動車業界も)パソコンやIT業界から学ぶレッスン(教訓)がある」と語り、電池や半導体のように特定の部品の技術進化が急速に進む場合、部品メーカーと組み立てメーカーの分業化が進む可能性を指摘した。

 コンピューター業界はCPUとOS(基本ソフト)のメーカー、および組み立ての分業体制が浸透し、組み立て側が付加価値を生みにくい構造ができ上がった。自動車も電動化が進展すると、電池メーカー側に主導権が移る可能性が考えられるからだ。

 <攻める電機メーカー>

 日産の山下光彦副社長も、20日都内で開かれた自動車関連セミナーで、自動車の電動化が進めば「トランスミッションのような精密機械のような部品が不要になるため、まっすぐな道を進むだけのような(機能の限定された)クルマであれば、参入障壁が下がってくる」と指摘した。

 自動車メーカーは、あくまで中核技術を自社内にとどめたいため、トヨタがパナソニック(6752.T)、日産がNECグループ(6701.T)、ホンダ(7267.T)と三菱はジーエス・ユアサコーポレーション(6674.T)とそれぞれ合弁を設立し、電池技術の内製化を目指している。

 東京大学准教授を兼任する日産の堀江英明・EV技術開発本部エキスパートリーダーは、「自動車メーカーは当初ガソリンエンジンに相当する電気自動車のコア(中核)部品はモーターと考えたが、モーター技術はある程度完成されており、電池こそが電気自動車の性能を左右する中核部品だ」と話す。

 自動車の電動化が進めば、従来は自動車メーカーの開発分野ではなかった二次電池の大容量化が開発のカギとなり、自動車業界の構造が大きく変わる可能性もありそうだ。

 

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(ロイターニュース 竹本能文:編集 田巻 一彦)

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