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〔特集:アローヘッド〕1カイ2ヤリの個人投資家は総撤退か、機関投資家はリスク軽減
2009年12月21日 / 03:47 / 8年後

〔特集:アローヘッド〕1カイ2ヤリの個人投資家は総撤退か、機関投資家はリスク軽減

 [東京 21日 ロイター] アローヘッドの導入によって一部の個人投資家は投資スタイルの変更を余儀なくされることになりそうだ。あまりの高速取引となるために、売買情報のみに基づいて取引判断するような手法は、事実上不可能になるからだ。今後は相場のトレンドやバリュエーションに基づいた投資手法が主流になる見通し。一方、機関投資家にとっては、アルゴリズム取引を行いやすくなるほか、トラッキングエラーの減少などリスクが軽減されるなどメリットが多い。

 <米国ではデイトレーディング学校が減少>

 最も影響を受けるとみられているのが、1カイ2ヤリといった超短期の取引手法を得意とする一部のデイトレーダーたちだ。1カイ2ヤリとは1円で買って2円で売るという意味。何円に何枚注文が入ってるのか個別銘柄などの板情報を見て、例えば101円で買って102円で売ることを繰り返し利益を上げる。

 板に売り注文が出てるのをみて買い注文を入れるのだが、アローヘッドでは、これまでの100倍というスピードで約定されてしまうため、買おうと思った次の瞬間には売り注文がなかったという事態が容易に起きうる。東証のホームページに15分の1のスピードに落としたデモ画面( hereを参照 )があるが、それでも人間の目では追えない速さだ。

 反射神経に頼るような投資スタイルは、高速・小口取引が可能になるアローヘッドが導入され、コンピューターのプログラムで自動売買するアルゴリズム取引や短時間に大量の注文を出すハイ・フリークエンシー・トレーディング(HFT)などのシステム売買の活発化が予想される中で、圧倒的に不利になる。

 実際、野村総合研究所・主席研究員の大崎貞和氏によると、米国にはかつて「デイトレーディング学校」なるものが存在し、個人投資家にデイトレーディングの方法を教えたり取引用の端末を貸し出したりしていたが、米国証券取引所のスピードが格段に上昇して行った2001年以降は目立って聞かれなくなったという。

 売買の価格を指定しない成り行き買いにも注意が必要だ。これまで約3─4秒かかっていた約定が、0.04ミリ秒以下になるわけだから、あっという間にストップ高・ストップ安がついてしまうことになる。思わぬ高値・安値で売買してしまうおそれもある。

 <流動性増加は個人にとってもメリット>

 ただ、すべての個人投資家が、機関投資家によるアルゴリズム取引や高速取引によって「食い物」にされるという見方も間違いだ。従来のオーソドックスな、バリュエーションやテクニカル分析をベースにした投資方法がなくなることはない。アローヘッドと同じ、もしくはもっと速いような高速約定システムを使っている欧米の株式市場でも、個人投資家は依然として十分な取引シェアを有している。

 ニューヨーク証券取引所では1990年代の終わりごろは1日50─60万件だった取引件数が、今年7月には900万件近くにまで拡大している。取引高速化に伴って、より小口の取引が多数入るようになったためだ。流動性の増加は、取引を行いやすくし、適切な市場価格により近づくことになるという市場全体のメリットもある。

 

 成り行き注文には注意すべきだが、アルゴリズム取引などは価格の動きを一方向に加速させるプログラムだけではない。マーケットバリューから離れたと判断すれば反対売買を行うプログラムもあるため、逆にボラティリティを抑える可能性もある。

 投資歴20年になる、ある個人投資家(46)は恐れていないという。「約定が速いのはいいことだ。1カイ2ヤリといった取引手法は不利になるが、別の取引手法を見つければいい。流動性が増加すれば個人投資家にとっても取引がしやすくなる。大口取引によるマーケットインパクトが減ることも、個人にとってはメリットの1つだろう」と話している。

 <機関投資家は安全な約定が最優先>

 一方、機関投資家にとってはアローヘッド導入のメリットは多い。「呼び値」が縮小し、例えばこれまで2000円以上の株価は5円きざみだったが、来年からは1円きざみとなる。VWAPといった理論値に基づく手法では、より「理想的な」価格で購入することができるため、日経平均などとのかい離をできるだけ小さくしたいパッシブ系運用者も、トラッッキングエラーを減らすことができる。

 さらに大口の注文では自らの売買で値段に大きな影響を与えてしまうマーケットインパクトも、小口化により抑えることができる。

 「最良執行」についても、これまで以上に意識が高まる見通しだ。取引の高速化、システム化によってPTS(代替執行市場)の発達も予想されており、投資家は、そのなかで一番「最良」の価格で売買することができるようになる。日本では東証に取引が集中していた時代が長いためか、日本の機関投資家や運用者の中に「最良価格」を求める意識が低いとの声もあるが、今後は、PTSの価格を一覧で表示できるような端末も増えてくるため、投資家の間で「最良価格」を求める土壌が広がってこよう。

 ただ、ある機関投資家のファンドマネージャーは慎重な姿勢を崩さない。「最も重要なのは安全な約定。執行先などの選定は実際にアローヘッドが動いてからでも遅くはない」と「安全第一」を強調する。

 それだけに来年1月4日にきちんとシステムが動いてくれることを望むだけだという。

 (ロイター日本語ニュース 伊賀 大記記者;編集 田巻 一彦)

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