December 4, 2009 / 4:34 AM / 11 years ago

COLUMN-〔インサイト〕COP15の先行指標になりうる東アジアの試み、カギは知的財産権=名古屋市立大 永野氏

 コペンハーゲンで開催される気候変動枠組条約第15回締結国会議(COP15)は、米中の2大CO2(二酸化炭素)排出国が、開催直前に削減目標を明らかにしたことで、1つの目的はすでに達成されたと言える。しかし、もう1つの目的である新たな削減目標の設定は、残りの6割の排出量を生み出す190カ国の間で、コンセンサスを得られるか否かが最大のテーマとなる。そのコンセンサスを得るため克服しなければならないのが、数で上回る途上国を納得させる制度設計とルール作りである。大多数が途上国・新興国である東アジアをケーススタディとして考えてみると、この問題解決がさほど困難ではないことがわかる。キーワードは知的財産権だ。

 

 <東アジアとCOP15の共通点と相違点>

 

 東アジアの環境政策に関する国際会合には、東アジア首脳会議(EAS)環境大臣会合とASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3環境大臣会合の2つの枠組みがある。2008年に初めて開催されたEAS環境大臣会合は歴史が浅く、参加国のコミットメントは小さい。

 一方、11月に8回目の会合が開催されたASEANプラス3環境大臣会合は、多くの実績を残してきた。東アジアの環境外交では、日本、韓国、中国の高所得国からASEAN諸国に対し、環境関連資金協力を実直に提案し続けてきた。この手法はCOP15にも生かすことができる有力な手法と言えそうだ。

 最近開催されたEAS、ASEANプラス3環境大臣会合の双方の共同声明をよく見ると、次の点に気づく。

 この2つの会合では、ともに気候変動、生物多様性等の環境政策面での取り組みを強化することで合意する一方、そこに必ず環境政策を通じたキャパシティ・ビルディングや人材育成といった開発援助が強く記されている。このことは日中韓がASEAN諸国との間で合意形成に至るには、気候変動対策や生物多様性保全、貧困対策がワンセットとならざるをえない状況を示している。

 この東アジアの環境外交が持つ構造的な問題点が、COP15では他大陸にまたがって顕著となる。COP15においても、対途上国資金支援の役割が強く重視され、途上国側は従来の先進諸国からの政府開発援助に加え、環境面での資金支援を求めてきた。具体的な削減目標の設定が議論の対象外となっているASEANプラス3会合では、この資金支援面での問題が、他の議論へ影響することはない。しかし、COP15の場合、この問題が先進国の削減目標引き上げへ向かうことで先進国―途上国間の合意形成をさらに困難にさせている。

 

 <CO2問題解決に欠かせない知的財産権制度の整備>

 

 国によりその比率は異なるものの、CO2は産業部門と運輸部門から概ね5割から6割程度、排出されている。米国と中国という世界全体の4割を排出する国々が削減目標を明らかにした今、次の課題はこの5 6割の排出を生み出す2つの部門で、いかにエネルギー消費の効率化を進めるかにある。

 主要産業におけるエネルギー効率を日本と東アジアで比較してみると、電力、鉄鋼、化学、セメントなどあらゆる産業で日本の生産単位当たりのCO2排出量、もしくはエネルギー消費そのものが、少なくとも2─3割以上、他の東アジア諸国を下回っている。逆にフランス、カナダ、ドイツの電力事業、製紙業は、日本のCO2排出量を大きく下回る。

 上記のCO2排出量、エネルギー効率に関する国際比較データは、優れた環境技術を持つ企業の相互進出が、本来であれば、技術移転を通じて産業部門、運輸部門のCO2排出削減に貢献するはずであることを示している。

 ところが、東アジアでは外国企業の進出が進んでいるにもかかわらず、エネルギー効率は低いままだ。例えばタイでは、株式を公開していない地場企業の3割で、51%以上の株式を外国企業が保有している。外国企業の進出が著しいにもかかわらず、環境関連技術を中心とする技術移転が進まない理由は、外国企業グループが知的財産権制度の問題等により、知識集約型生産工程の現地化を進めていないためである。

 知的財産権に関するリサーチ機関、プロパティ・ライツ・アライアンスによると、2009年のASEANの知的財産権制度は、タイが115カ国中52位、フィリピン75位、インドネシアが89位と、その整備の遅れが報告されている。

 同様に企業の相互進出が進み、環境技術の移転が進む北欧諸国が、トップ10に名を連ねているのとは対称的である。知的財産権の整備は、さきごろ開催されたCOP15バルセロナ会合において、途上国側が強い拒否反応を示している。

 しかし、この制度の強化は、たとえ短期的に技術のスピルオーバーを起こしにくくするとしても、外国企業による知識集約型工程の途上国への移転を促すことは間違いない。そして、長期的にはいずれ特許は失効し、外国企業グループに属さない独立系の途上国企業も利用可能となることで、国全体のエネルギー消費効率が高まるはずである。COP15では、単純な途上国向け資金支援ではなく、こうした民間部門の活力を後押しする知的財産権をめぐる制度設計を、合意形成のための手段として議論する必要がある。

 

 永野 護 名古屋市立大学大学院教授、三菱総研客員研究員

 

 (4日 東京)

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