February 5, 2010 / 4:42 AM / 11 years ago

COLUMN-〔インサイト〕景気回復で高まる中国のインフレ圧力、金融政策「出口戦略」の発動はいつか=野村資本市場研 関氏

 <内需に加え、外需も成長のエンジンに>

 

 中国経済は、2008年9月のリーマンショックを受けて、一時景気減速を余儀なくされたが、素早く打ち出された政府による拡張的金融財政政策が奏功し、先進国に先駆けて回復してきた。内需が堅調であることに加えて、輸出も持ち直しつつある。2009年の国内総生産(GDP)成長率は8%という政府の目標を超える8.7%に達し、特に第4四半期には10.7%とリーマンショック以来、初めて2けた台に乗った。

 

 内需では、09年の社会消費財小売総額(名目ベース)は前年比15.5%(実質ベースでは16.9%)増で、中でも自動車販売(32.3%増)が好調で、消費全体をけん引している。所得と資産価格の上昇や雇用の改善は、今後も消費を支えていくだろう。

 また、08年11月に発表された4兆元に上る公共投資を中心とする景気対策の実施を受けて、09年の全国の固定資産投資(名目)の伸びは前年比30.1%(都市部では同30.5%)と高くなっている。そのうち鉄道が前年比67.5%と、最も高い伸びを示している。景気回復とともに投資の担い手は、政府部門から民間部門に移っていくと予想される。

 

 外需では、輸出と輸入の伸び(前年比)は09年の通年で、それぞれマイナス16.0%とマイナス11.2%に落ち込んだが、ここに来て持ち直しつつある。輸入の伸びは、1月の26.7%に続いて、12月に55.9%と加速しており、12月の輸出の伸びも17.7%と、14カ月ぶりにプラスに転じた。

 中国では、貿易全体に占める加工貿易のウェイトが高く、輸出を増やすためには、まず部品や原材料などの中間財を海外から輸入しなければならないため、輸入の動向は輸出の先行指標となる。最近の輸入の急増は今後の輸出が力強く回復することを示唆している。人民元がドルとともに円やユーロといった他の主要通貨に対して下落している上、世界経済も上向き始めていることから、輸出の回復は今後も続くものと見られる。

 

 <中国の利上げ実施は年央か>

 

 08年9月以降、世界的金融危機を乗り越えるために中国政府は、拡張的財政政策とともに利下げや預金準備率の引き下げ、そして融資に対する総量規制の撤廃など思い切った金融緩和を行った。これを受けてマネーサプライ(M2)と人民元貸出の伸びは加速し、資産価格が高騰しており、インフレ圧力も高まりつつある。

 

 まず、08年11月の初めに1700ポイント近辺まで急落した上海総合指数はその後急伸し、現在、3000ポイントを挟む水準で推移している。一時、調整局面に入った不動産価格も高騰しており、バブルの様相を呈している。70大中都市住宅価格は、08年8月から7カ月連続して前月の水準を割ったが、09年3月以降、上昇傾向に転じ、12月には1.5%(年率換算19.6%)に達している。前年比で見ても3月のマイナス1.3%を底に、12月には7.8%に加速している。

 

 その上、09年2月以来マイナスとなっていたインフレ率(消費者物価指数(CPI)、前年比)は11月には0.6%とプラスに転じ、12月は1.9%に加速した。インフレ率は、経済成長率より約3四半期遅れて動くことが観測されており、最近の景気の急回復を受けて、今後さらにCPIが上昇すると予想される。

 

 安定成長を持続させるために、当局はこれまで取ってきた拡張的金融政策の出口戦略を実施し始めている。すでに09年夏以降、一部の融資への制限が導入され、これを受けて、貸出の前月比の増加分が縮小してきている。

 また、中国人民銀行(中央銀行)は、2010年1月18日から大手銀行に適用される預金準備率を0.5%ポイント引き上げた。今後、インフレ率がいっそう高まるにつれて、利上げを含むさらなる引き締め策が取られるであろう。これまでの経験から判断して、CPIで見たインフレ率が4%を超えることは、利上げが実施される目安となる。その時期は今年の年央になるだろう。

 

 <安定成長に寄与するタイムリーな金融引き締め>

 

 金融引き締めへの転換が遅れた場合、資産バブルが膨張し、インフレ圧力も高まるため最終的に当局は、より強烈な金融引き締めを実施せざるを得なくなる。その結果、バブルの崩壊に伴って、銀行部門は多くの不良債権を抱えることになり、経済全体も大きい打撃を受けることになる。

 最近の金融政策の出口戦略をめぐる一連の動きは、株価の下落要因となったが、このようなハードランディング・シナリオを避けるための予防的措置としてむしろ評価すべきである。

 

 関志雄 野村資本市場研究所 シニアフェロー

  

 (5日 東京)

 

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