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〔クロスマーケットアイ〕リスク回避の巻き戻し機運継続、スペイン問題で反応鈍い

<東京市場 17日>

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日経平均   | 国債先物9月限| 国債308回債  |ドル/円(12:43) |

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  10025.02円 | 140.41円 | 1.225% | 91.19/23円 |

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-42.13円 | +0.13円 | -0.010% | 91.36/41円  |

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注:日経平均、国債先物は前引け、現物の価格は午前11時の値。

下段は前営業日終値比。為替はNY終盤。

 [東京 17日 ロイター] 17日の東京市場は、各市場とも小動きで推移している。

欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)、米財務省がスペイン向け流動性対策をまと

めているとの報道がスペイン国内であったものの、このところ顕著なユーロの下げ止まり

を基点にしたリスク回避行動の巻き戻しの動きがグローバルに広がっており、今後は米欧

経済のファンダメンタルズ動向に関心が集まるのではないかとの声も出始めている。

 <株は利益確定売りが先行>

 株式市場では日経平均.N225が反落している。米株が小動きで手掛かり材料に欠ける

中、利益確定売りや戻り売りで上値が重くなっている。「スペインの信用市場や銀行シス

テムへの懸念が出たものの、ユーロが底堅い動きとなっているため売り材料にはしにくい。

民主党のマニフェスト発表を控えて国内年金筋から政策期待の買いなども入っているよう

だ」(大手証券エクイティ部)との声が出ている。

 16日付スペイン紙エコノミスタは複数の関係筋の話として、EU、IMF、米財務省

が、スペイン向けの流動性対策をまとめていると報じた。スペイン向けに最大2500億

ユーロ(3350億ドル)の融資枠を設定する案が盛り込まれているという。 これを受

けてスペイン国債の利回りは上昇したが、ユーロは目立った反応をみせていない。

 米株式投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラ

ティリティー・インデックス(VIX指数).VIXも20%半ばで落ち着いている。「欧

州の債務問題への反応が鈍くなっているところをみると、織り込みが進んだのではないか。

欧州問題よりも今後は米経済指標があらためて見直される」(国内証券の株式トレーダー)

という。大和総研シニアストラテジストの土屋貴裕氏は「欧州主要銀行のストレステスト

(健全性審査)の結果は気になるものの、最大の懸念材料であるギリシャ問題が事実上先

送りされたため、7月いっぱいは緊張感が緩みやすい」とみている。

 一部で報道された菅内閣の新成長戦略について、ITCインベストメント・パートナー

ズ、シニアポートフォリオマネージャーの山田拓也氏は「法人税引き下げなどは評価でき

る。主要国に比べ高い日本の税率というハンデがなくなるという意味でだがポジティブだ。

経済成長で税収を高めようという方向は株式市場として歓迎できる」と述べている。

 <上海株しっかり、ユーロも下げ止まり>

 ドル/円JPY=は91円前半でこう着。さえない米国株先物や日経平均をにらんでクロ

ス円が売られたことで、ドル/円にも一時売り圧力がかかったが、下値も限られた。ユー

ロ/円JUERJPY=の下げを受けてユーロ/ドルEUR=は軟調で、1.23ドルを割り込ん

で海外安値に迫った。しかし、休み明けで取引が再開された中国株がしっかりとなったこ

とを受けてクロス円が下げ渋るとユーロ/ドルも底堅くなった。16日海外時間に、スペ

イン救済に関する報道が出たが、スペインリスクでユーロを売ったというより株価に反応

したという。

 アジア市場ではグローベックス市場の米国株先物や日経平均.N225がさえない。これ

がきょうから取引再開となる上海総合指数.SSECへの懸念につながり、国内勢がユーロ

/円などクロス円に売りを出したことで、ユーロ/ドルも再び1.23ドルを割り込んで

海外安値(1.2255ドル)に迫った。その後、上海総合指数.SSECがしっかりで始

まったことでクロス円が下げ渋り、ユーロ/ドルも1.2259ドルでいったん下げ止ま

って切り返した。海外安値の下にはストップロスがあるもようだが、これを狙う動きには

ならなかった。 

 ユーロ/ドルは前日から1.23ドルをはさんで上へ向かうのか下に押し戻されるのか

の方向感が定まらない。「ユーロのショートカバーに乗って、ここ数日ロングポジション

もたまってきている。このまま1.25ドルに向かうのか、1.21ドル程度まで調整す

るのか、市場は気迷っている。ただ、これまで押し目なしに上昇しており、1.21ドル

台までの調整があってもおかしくない。いったんロングが整理されれば、新たなレンジ感

を形成することができる」(大手銀行)という。

 <スペイン国債利回り急騰、きょう10・30年債入札>

 16日付エコノミスタの報道に対し、欧州委員会の報道官は「完全に否定する」と述べ

た。また、IMFのストロスカーン専務理事とスペインのサパテロ首相は18日に会談を

予定しているが、スペイン政府報道官は、同国がギリシャ型の救済策を要請する可能性が

あるとの報道とは無関係であると述べた。

 しかし、スペイン国債10年物ES1OYT=TWEB利回りは16日、4.94%とほぼ2年

ぶりの高水準を付け、独連邦債との利回り格差も226bpと、ユーロ導入以来の高水準

に拡大した。スペインにはソブリンリスクのほか金融セクターへの懸念もくすぶっており、

以前ギリシャを追い詰めた資金調達コスト急騰の行方が懸念されている。17日の10年

債と30年債のスペイン国債入札について「入札で資金が順調に集まれば、国債市場の混

乱はいったん落ち着く可能性がある。スペインのソブリン問題は緊縮財政で、金融セクタ

ーの安定はECBの資金供給で対応できる可能性も残っており、ストレステスト結果の公

表も市場の安心感につながる。ギリシャの経験を踏まえて当局が後手にまわらずに対応で

きるかがポイントだ」(大和総研為替ストラテジスト、亀岡裕次氏)という。

 ただ、スペイン国債利回り急騰に対するユーロや株価の反応は限定的で、ユーロ/ドル

は1.2255ドルで下げ渋り、FTSEユーロファースト300種指数.FTEU3やダウ

工業株30種.DJIは上値は重いながらも前日比プラス圏で引けた。「半期末にあたる6

月末をにらんで、ファンドなどが売り込んだユーロなどの買い戻しを先行させている。ス

ペイン救済案も予想されていなかったわけではなく、サプライズ感はない」(国内金融機

関)との声が上がった。

 <スペイン中銀が銀行ストレステストの結果を近く公表>

 スペイン中央銀行は、すべての国内銀行に対し実施したストレステスト(健全性審査)

の結果を公表する方針を示しており、市場では「公表できるくらい内容がいいとの見方も

できる」(国内銀行)と前向きに受け止める声が出ている。「スペイン(の金融セクター)

に火がつけば米国の裏庭である南米に飛び火しかねない」(証券会社)との懸念がくすぶ

る中で、スペイン支援に関する報道では開示に積極的な米国の関与が伝えられた。このた

め米国がストレステストの結果公表を後押しする可能性があるとの見方も出ている。ただ、

結果の公表が個別行ベースとなるのか、業界全体ベースとなるのかについては明らかにな

っていない。

 <円債市場は小動き>

 円債市場では国債先物が小幅反発。長期金利の指標銘柄である10年最長期国債利回り

もやや低下した。「4―6月期の債券積み増しにほぼメドをつけた投資家が増えつつある

のではないか」(外銀)とみられており、この日の取引では、目立ったフローは観測され

なかった。

 財務省が17日発表した6月6日─12日の対外及び対内証券売買契約等の状況(指定

報告機関ベース)によると、対内株式投資は9169億円の資本流出超、対外債券(中長

期債)投資は8103億円の資本流出超、対内債券(中長期債)投資は122億円の資本

流出超だった。対内株式投資の流出超は2005年の統計開始以降で過去2番目の大きさ

だったのは「SQ算出に伴う一時的な売りが出たため」(市場筋)で、海外勢の間で相場

観に変化があったとは言えなそう。債券投資に大きな変化もみられず、方向感に乏しい状

況が続いている。参加者からは「依然として銀行部門の米国債買いが顕著だが、それ以外

は主だった動きはないのでは」(外資系金融機関)との声も聞かれた。

 ロイター短観は消化難だった。日興コーディアル証券・チーフ債券ストラテジストの野

村真司氏は「緩やかながらも景気回復トレンドが継続していることを反映した結果と言え

るが、現在、景気の方向性と金利の方向性にギャップが生じている」と指摘。「今はカネ

余りで債券にとってネガティブな材料も無視されているが、ファンダメンタルズに回帰す

る動きはいずれ来るだろう」と述べている。

 (ロイター日本語ニュース 田巻 一彦 ;編集 吉瀬邦彦)

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