August 12, 2010 / 3:06 AM / in 9 years

〔円15年ぶり高値〕市場は為替介入より追加金融緩和を予想、時間かかれば一段の株安も

 [東京 12日 ロイター] 円が15年ぶりの高値をつけるなか、日経平均は年初来安値に接近し「政策催促相場」的な様相を見せ始めた。金融マーケット参加者からは国際的な摩擦を起こしやすい為替介入よりも日銀による金融緩和を予想する声が出始めている。ただ景気認識を据え置き、追加緩和見送りを決めたばかりの日銀が早期に対応するとの予想も少なく、米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和に踏み切り米金利が低下すれば円高がさらに進行し、一段の株安になるとの見方が出ている。

 各マーケット参加者の見方は以下の通り。

 

  ●相次ぐ世界景気の減速見通しが円高誘発

  <バークレイズ銀行東京支店 チーフFXストラテジスト 山本雅文氏>

 

 前日から世界中で景気減速の広がりを示すニュースが相次いでいる。米FOMC景気認識の下方修正に加え、1)日本の機械受注が予想を大幅に下回った、2)中国で固定資産投資や新規融資額、これまで堅調だった小売売上高も予想を下回った、3)英中銀が四半期インフレ報告で成長率予想を大幅に引き下げた、4)6月米貿易赤字が予想を上回り、第2・四半期GDPが下方修正となる可能性が高まったこと――などだ。

 世界的に株価や商品相場が総じて下落する中、欧米中長期金利も大きく低下し、為替市場では豪ドルなどの資源国通貨、スウェーデンクローナや新興国通貨など株価に対する感応度の高い通貨が下落した。円とドルがその他通貨に対して上昇する「リスク回避型」の動きとなった。

 ドル/円も米中長期金利が大きく低下する中で、欧州市場で15年ぶり安値を更新した。現在は85円台へ反発しているが、米10年債利回りが低下を続ける中、上昇力は弱い。このまま日本やアジア市場でも株の下落が続くようなら、クロス円を中心に円高圧力が強まり、ドル/円の下押し圧力となるだろう。

 日経平均が9000円台を割り込んで一段の下落となるようなら、通貨当局の警戒感も強まるはずだ。実弾介入には結びつかなくても、口先介入のトーンは強まるだろう。来週にかけてドルは83円半ばへの下落があり得ると見ている。過去の推移から算出すると、米10年債利回りが現在の水準から30bp程度低下して2.5%台を割り込んだ水準とも整合する。

 

  ●日銀は資産買い入れでバランスシート拡大を

  <住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏>

 

 ドル安/円高が進んでいるが、ピッチが遅くその分反転へのエネルギーがたまりにくい。ドルは、いったんは80円を割れないと達成感が出ないのではないか。

 当局の対応として考えられるのは、日銀による追加緩和だ。民主党の代表選を控えて政府が介入などに動きにくくなっており、今きちんと意思決定できるのは日銀しかない。国債やリスク資産の買い入れでバランスシートを拡大することが必要だ。9月の米雇用統計を確認したあと、9月6─7日の金融政策決定会合で追加策を決める可能性がある。

 ドル/円は短期的には円高見通しが強いが、長期的に円高を見込む参加者はいない。投機筋のポジション調整を促す意味で、日銀の対応は効果があるとみている。

 

  ●米景況感への疑念高まる、リスクは依然円高方向

  <JPモルガン・チェース銀行 シニアFXストラテジスト 棚瀬順哉氏>

 

 前日からきょうにかけては、株価が下落する中でドルと円が上昇するリスク回避の際の典型的な値動きだった。米指標でも明らかになっていたが、FRBが景気をかなり悲観的に見ていることが明確になり、米景況感の悪化懸念が裏付けられた形だ。

 米株は調整があってもおかしくなかった。7月から8月初旬にかけての上昇が顕著だったためだ。当時から米指標は弱含みだったが、米企業決算が強かったこと、欧州のストレステストで財政問題への懸念が後退したことで、センチメントが改善して調整が表面化するのを打ち消していた。それが一巡した現在は、米景気の弱さだけが残り、そのタイミングでFRBが景気認識を後退させたということだろう。中国景気の減速懸念や欧州景気の先行き不安など、全般的に世界経済に対する不透明感は高まっており、投資家のリスク回避姿勢が強まっている。

 当面は米指標の行方に注目している。ドルは株と金利の動きによって反応が異なるため見通すのが難しいが、指標の弱含みが続けば株価の下落と金利低下が続き、リスク回避的に円が上昇する展開が続くだろう。向こう1カ月でドル/円は史上最安値の79円が視野に入ると見ている。

 日本の円売り介入の可能性は低いと考えている。G7が一貫して中国による為替操作を批判する中、その一員である日本が介入を実施するのは困難なことに加え、欧米経済が低迷する中では、米国もユーロ圏も通貨安志向を強めているため、ドルやユーロに対する円売り介入の合意を取りつけることが以前に比べて難しくなっている可能性もある。日本が外為特会にすでに巨額の含み損を抱えていることも、一段の為替リスクを取ることに当局が躊躇(ちゅうちょ)する十分な根拠になる。

 日銀が追加金融緩和に踏みきる可能性は排除できない。しかし、日米の短期金利差がほとんどゼロに近い状況では、緩和が円相場に与える影響は限定的だ。過去に日本が量的緩和で当座預金を積み上げた際もドル/円は下げ止まらなかった。

 

  ●日経平均9000円割れも、日銀政策変更は秋以降か

  <三菱UFJ投信 戦略運用部副部長 宮崎 高志氏>

 日銀の腰は重いだろう。景気認識を変えずに円高だけをターゲットに政策変更することは考えにくい。急激に円高が進行しない限りは為替介入も国際的にも理解されないのではないか。米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和に踏み切り米金利が低下すれば円高がさらに進行する可能性もある。日本の輸出企業は設備投資に動けず、業績下方修正のリスクも高まるため日経平均.N225は9000円割れもありうる。

 政策が出るとすれば秋以降だろう。9月14日の民主党代表選挙を終えて政治が落ち着けば、日銀へのプレッシャーが強まるとみられるためだ。政策が打ち出されれば円安方向への転換が期待できる。ただマーケット全般的にリスク回避方向に動いているため、昨年12月のような株価のリバウンドは難しいかもしれない。

 

  ●日銀政策変更あるとすれば秋以降

  <大和住銀投信投資顧問 上席参事 小川耕一氏>

 今の日銀の姿勢をみていると、よほどのことがない限り円高に対応した施策を出してくる気配はない。仮に政策変更(追加の緩和政策)があるとすれば、それは1)グローバルに株価が急落あるいは日経平均9000円割れ、TOPIX800ポイント割れとなる、2)ドル/円で83円台が近づく、3)10─12月期の国内GDPマイナス転落の観測が拡大する、4)みんなの党などによる日銀改革議論が盛り上がるなど、いずれかの事項が起きた場合と考えている。タイミングとしては、民主党代表選挙の9月14日が終わった秋以降か。

 急激に円高に振れた方が日銀の政策誘発を催促するという点では効果があるが、じわじわと円高が進行しているのが現状。投機筋などは日銀が当面、何もしないと見込んで徐々に円高を進行させているという印象だ。ドル/円が一服するとユーロ/円で円高となり、循環的な円高が定着しつつあることが気がかりだ。

 

  ●急ピッチでドル80円に接近なら為替介入ありうる

  <みずほ総研 シニアエコノミスト 武内浩二氏>

 効果は一時的かもしれないが為替介入しか円高を止める手段はないのではないか。諸外国からの批判というプレシャーはかかるとしても、円独歩高となり、ドル/円が急ピッチで80円に接近すればスムージングオペなどの形で為替介入はありうる。このような状況になる以前に、日銀は円安に誘導するようなオペが必要だった。9日と10日に開かれた金融政策決定会合でそうした手段を講ずるべきだったのではないか。

 日経平均は足元9100円台に下落しており、為替相場によっては9000円を割り込む可能性もあるだろう。

 

  ●日銀による非伝統的な政策が必要

  <日興コーディアル証券 国際市場分析部ストラテジスト 橘田憲和氏>

 9月の民主党代表選を控えて政治的な空白期に入っていることを考えれば、日銀の機動的な対応は不可欠だろう。まずは潤沢な流動性供給が必要だ。バランスシートの拡大を伴う非伝統的な政策が望まれる。一方で政府による為替介入も視野に入れるべきだろう。

 企業は為替の前提を円高に修正しているが、85円を超える円高では業績悪化は避けられず、株価下落で割安感が出ても買いにくい。日経平均は下値のメドとして9000円が意識されるが、これを割り込むと8800円程度まで下げが加速する可能性もある。

 

  ●円高による円債アウトパフォーム再開せず

  <バークレイズキャピタル証券 森田長太郎チーフストラテジスト>

 

 米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定内容自体は想定の範囲内だったが、連邦準備理事会(FRB)が「出口政策」を停止したという事実が、市場の米国経済ひいては世界経済への減速懸念を強める結果となったようだ。FOMCの結果発表直後の米国株は、むしろ小幅反発したが、その後、東京市場、欧州市場へと株安の連鎖が広がる形となり、1日明けた米国市場でももう一段の下落を見ることとなった。

 ただ、日本の市場参加者が懸念していた「FRBの金融緩和対、日銀の政策維持」という図式を描いてのドル安円高のシナリオは、ある意味で裏切られる形となっている。むしろ、世界経済減速を懸念したリスク回避行動によってドル高の動きが発

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below