July 27, 2011 / 11:23 PM / 9 years ago

インタビュー:原発賠償法案成立で東電<9501.T>以外の電力会社の株主・利用者による訴訟の可能性=福井・政策研究院大教授

 [東京 28日 ロイター] 「原子力損害賠償支援機構法案」の撤廃と東電(9501.T)の法的整理を求める「公正な社会を考える民間フォーラム」の呼びかけ人のひとりである政策研究大学院大学の福井秀夫教授(行政法)は、28日までにロイターの取材に応じ、同法案が成立すれば、東電の株主や取引銀行は責任を問われず、賠償負担が電気料金の値上げという形で国民に回るとし、東電以外の電気事業者の株主や利用者による訴訟が引き起こされる可能性が高い、との見方を示した。

 

 福井教授は、一般の企業であれば原発事故のような重大な問題で巨額の損害賠償責任を負い、債務超過となれば会社更生法手続きによる破たん処理に進むが、「支援機構の今のスキームが発足して運用されるということ自体が、債務超過の可能性を限りなくゼロにする」もので、東電の関係者の負担軽減を優先し、ほかの電力会社の利用者や納税者に負担を強要する不当な内容とみる。

 

 <法案成立は東電の世論形成力の強さ反映>

 

 原発事故の賠償制度を定めた「原子力損害の賠償に関する法律(原陪法)」に従えば、「債務超過になるなら通常は資産で賄えない分は当然債権カットとなり、少なくとも株式は100%減資で無価値になり、担保付社債権者や一般債権者は、優先順位に応じて債権を圧縮され、債権放棄を求められる。ただし賠償権者は足りない分については国からの援助で全額面倒みてもらう、というのが大原則」と指摘。

 にも関わらず今回その方式が取られないのは、「後ろめたいことを前提としているから」。具体的には、「国・財政当局は国債発行や増税を避け、料金負担者に押し付けたい。メガバンクは債権放棄に至りたくない。電力監督部局や他の電力会社は、破たん処理後に東電資産を有効利用してゆく過程で、電力自由化の議論に飛び火するのを避けたいため、なんとか護送船団方式でごまかしたい」ため、と説明する。

 また「官僚も個人ベースでは法的整理に賛同する。マスコミも広告で東電に支配されており、それだけ東電の世論形成力が強い」ため、原発賠償法案が成立する見通しとなった、とみる。 

 

 <東電債デフォルト、金融不安招かない>

 

 一方、東電の巨額の一般担保付社債残高の中で多くのシェアを銀行が占め、銀行の一般貸付残高も巨額であるため、東電を会社更生法で破たん処理し、東電債などがデフォルト(債務不履行)となると金融不安を招くからこれを保護すべき、との議論については、「理由がない。本当に銀行の信用創造機能に影響が及ぶかは疑問だが、仮に一部銀行の経営不安などが生じるとしても、その銀行だけに資本注入すればよい。公的資金の強制注入ができる。風邪をひきそうと訴えた人に入院治療費の全額を前払いし、その後病気になったかどうか問わないようなもの」と述べた。

 東電債がデフォルトとなっても、「他の社債の格付けには何の関係もない。東電債がデフォルトすると他の電力会社の社債が発行しにくくなるという珍説奇説があるが、他電力が原発事故リスクを理由に発行しにくかったり金利が上がるのは、むしろ社債市場の健全な機能が働いている証拠で歓迎すべき」との見方だ。

 

 今回の支援機構スキームでは、東電以外の他の電力会社が負担金を拠出するが、「そのこと自体が違法。地域独占で負担をすべて料金に転嫁できる電気事業者が、自己に責任のない事故処理費用を負担したら、必ず、原価に上乗せするなら不当な料金上昇をもたらし、利潤を圧縮するなら株価を下げる。法令に基づく強制なら、憲法に基づく補償を国に要求すべき。任意に協力するなら、料金負担者は事業者に対して負担増分の債務不存在の確認訴訟を、また株主に与えた損害の賠償を求めて株主代表訴訟を、それぞれ提起できる」と説明した。

  

 (ロイターニュース 竹本能文)

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