December 3, 2010 / 4:31 AM / 9 years ago

COLUMN-〔インサイト〕コモディティ価格、動きの裏に見え隠れする中国の政策=アストマックス 江守氏

 <中国政府による価格統制>

 

 11月の投資市場は、米国金融当局による追加量的緩和(QE2)による効果への期待感から株価やコモディティが大きく上昇した。しかし、その後は欧州のソブリンリスクや信用問題、さらに中国の利上げ懸念やヘッジファンドの解約期日などの悪材料が重なり、短期間で急伸した相場に対して投資家が手仕舞い売りを進めたことで、株価やコモディティはその水準を急速に切り下げることとなった。

 このような複合的な材料が重なったことが、11月の投資市場の混乱の原因と言えるが、その背景には中国の政策が見え隠れする。中国のインフレ率は2年ぶりの高水準となり、10月の食品価格は10.1%上昇したことで、同国政府は将来のインフレについて強い懸念を持っているとされている。そのため、同国政府はインフレ抑制のため価格統制の方針を打ち出し、今年2度目となる利上げを実施する可能性が指摘されている。

 同国政府はコモディティ価格の投機的な上昇がインフレにつながっているとの認識を持っており、投機抑制に向けた先物取引コストの引き上げを開始している。中国・大連商品取引所では、大豆、大豆ミール、大豆油、パーム油、コーンなどの先物取引の取引証拠金率が11月29日から10%に引き上げられ、1日の制限値幅(上限、下限)も6%に引き上げられた。

 

 同取引所が証拠金率、制限値幅を引き上げるのは、それまでの過去10日間で2回目である。また、大連市場と同様の対策は非鉄金属や天然ゴム、綿花などを対象に上海、鄭州の商品先物取引所でも導入されている。証拠金引き上げなどの政策導入後の価格動向を見ると、上海市場では銅やゴム相場が急落しており、これを受けて同国政府は市場鎮静化を目指す政府の取り組みが効果を挙げたと自画自賛している。

 

 <価格支配力の脅威>

 

 しかし、一方でこのような人為的な価格抑制策は持続しないとの見方も根強い。中国国家発展改革委員会(発改委)は、投機筋が市場から退出し、国際相場が下落したことから天然ゴムや白糖、綿花、銅など国内価格の下げが加速していると指摘し、それまでの価格水準はファンダメンタルズから乖離(かいり)していたとの認識を示しているが、中国のコモディティ需要が堅調であることが、主要コモディティ相場の上昇および高止まりの背景にあることを忘れてはならない。

 そう考えると、市場関係者が同国政府による価格統制の効果が一時的なものに止まると指摘するのも納得がいく。しかし、その一方で中国政府の強い姿勢を楽観視することはリスクを伴う可能性も指摘しておく必要がある。

 振り返ると、コモディティ相場は原油バブルの崩壊やリーマンショックを経て急落したが、2009年の初めに急速に値を戻し始めた。当時は高値から大幅な下落となっていたが、投資資金流出のあとの純粋な需給面から判断できるフェアバリューと比較すると、決して割安とはいえない状況だった。しかし、その状況で突如市場に出てきたのが中国政府である。

 同国政府は当時のコモディティの価格水準を独自に分析し、最終的に割安と判断したうえで備蓄在庫用にコモディティを大量に買い漁った。これをきっかけにコモディティ価格は強い反発基調に転じたことは記憶に新しいところである。その後に発表されたデータでも、同国政府が非鉄金属やゴムなどの備蓄在庫を実際に積み増していたことが明らかになっており、結果としてこれらの現物の買い上げが相場の反転をもたらしたと市場では認識されている。

 中国政府のこのような強い姿勢はグローバルに取引されるコモディティ相場のトレンドをも変える力があると言えなくもない。そのため、中国の堅調な需要がコモディティ相場を高止まりさせているという事実を考慮した場合でも、今回の価格抑制策に本腰を入れることでこれまでの急騰相場が一気に弱気相場に傾く可能性をすべて否定することはできない。

  

 <現物市場を絡めた手口>

 

 中国政府が手をつけたのは先物市場だけではない。同様のことが現物市場にも見られるのである。10月の同国の主要コモディティ輸入動向を見ると、軒並み輸入量が前月比で急減している。銅は前月比25.8%減少し、原油は同29.6%減、天然ゴムは同15.8%減、大豆は同19.6%減となるなど、それまでの増加傾向から一変している。この大きな変化の背景には中国政府の政策があることは明白であろう。

 つまり、価格統制のための政策として、先物市場の取引証拠金率の引き上げに止まらず、現物市場での介入により、結果として価格が引き下げられる政策を同時に実行したということである。実際に同国政府は、亜鉛やアルミ、鉛、天然ゴム、大豆などのコモディティに関して、備蓄在庫から現物を市場に放出しており、これにより需給の逼迫(ひっぱく)感を抑えることで価格の下落を促す政策を実行している。

 備蓄の積み上げが価格の押し上げにつながるのと同様に、備蓄放出は価格急騰を沈静化させるには十分すぎる材料である。この結果、例えば銅の場合では、内外価格差が年初来で最大水準にまで拡大している。この結果、中国で現物を買い、海外の取引所指定倉庫に持ち込めば利益を得ることが出来るが、価格差の縮小には裁定取引が拡大することが不可欠となる。

 

 中国のコモディティ市場でのプレゼンスはすでに十分に高まっているが、このような政策により価格が実際に影響を受けていることを理解しておく必要がある。中国政府の本当の意図は、前述の政策を実行に移すことで一定の価格下落を演出し、下げ止まったところで必要な備蓄量を買い戻すことであろう。繰り返しになるが、中国には堅調な需要があり、輸入が必要な状況にあるため、いずれは買う必要がある。

 今後も同国政府は様々な手法を用いて同国にメリットがあるような政策を打ち出すものと思われる。一方で、意図的な価格操作が実際に行われている可能性があることを先進国側がいつまで放置するのか、人民元の操作も含め、今後は大きな課題となってこよう。

 

 (3日 東京)

  

 江守 哲 アストマックス 運用部 ファンドマネージャー

  

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