March 23, 2011 / 7:44 AM / 8 years ago

〔アングル〕東日本大震災で次世代電池に材料懸念、「エコカー戦略」失速も

 [東京 23日 ロイター] 東日本大震災に伴って、電気自動車など次世代自動車(エコカー)の「心臓部」とされるリチウムイオン電池の量産に懸念が出ている。西日本に拠点を構える電池工場は被害を免れたが、東日本に点在する電池材料工場が操業を停止した。復旧作業に入った材料工場もあるが、東京電力(9501.T)の計画停電で安定稼働が不透明な状況だ。材料不足で電池供給に支障が出れば、自動車メーカーのエコカー戦略の遅れにつながる可能性もある。

 

 <エコカー発売は11―12年が集中期>

 

 経済産業省の「次世代自動車戦略2010」によると、政府は、エコカーの新車販売に占める比率を2020年までに最大50%(現行10%程度)にすることを目指す。自動車のモデルチェンジには5年程度を要するとされているため、20年までにはあと1―2回のモデルチェンジのチャンスしか残されていないが、すでに自動車メーカーは相次ぎエコカーを発売する計画を打ち出しており、11―12年に集中期を迎える。

 10年末までに三菱自動車工業(7211.T)が電気自動車(EV)「アイミーブ」、日産自動車(7201.T)がEV「リーフ」を市場投入したのに続き、トヨタ自動車(7203.T)はハイブリッド車(HV)「プリウス」のミニバンタイプの投入を控えており、12年初めまでにプラグイン・ハイブリッド車(PHV)のプリウスの市販化を計画。またトヨタは12年に日米欧で「iQ」ベースのEVを投入するほか、「RAV4」ベースのEVを米テスラ・モーターズ(TSLA.O)と共同開発している。ホンダ(7267.T)は今春から北米でHV「シビック」の新型車を投入するのに続き、12年にはEVとPHVを発売する計画。マツダ(7261.T)も小型車「デミオ」をベースにしたEVを開発し、12年春から日本国内でリース販売を始める予定。

  

 <電池工場の多くは通常稼働>

 

 これらエコカーの動力源になっているのがリチウムイオン電池だ。東日本を襲った大震災で、自動車用電池を生産する日立ビークルエナジー(茨城県ひたちなか市)の本社工場は被災した。11日の地震で稼働を停止して以来、製造設備の点検など復旧作業を進めたことで、稼働再開を28日とする段階までこぎつけた。同工場では米ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)が11年春に発売するHVに電池を供給することになっている。

 

 ソニー(6758.T)も電池製造のソニーエナジー・デバイスの3拠点の生産を一時停止した。自主停電を解除した栃木事業所(下野市)は一部で再開したが、前工程を手掛ける福島県の2拠点(郡山事業所・本宮事業所)は設備点検で依然として操業を停止中だ。ソニーの電池は現時点で自動車メーカーと具体的な取引はないが、自動車用市場に新規参入する意向を表明している。

 

 もっとも、国内のリチウムイオン電池工場の多くは西日本が中心で、東日本大震災の被害を免れた。世界首位の三洋電機6764.Tの加西事業所(兵庫県加西市)、トヨタと提携した米テスラに電池を供給するパナソニック(6752.T)の住之江工場(大阪市)、三菱自やホンダと電池合弁を設立するジーエス・ユアサ コーポレーション(6674.T)の滋賀県・京都府の主力工場など西日本の各拠点のほか、三菱自と共同開発する東芝(6502.T)の柏崎工場(新潟県)も震災の打撃をほとんど受けずに通常稼働している。

 

 <材料工場の稼働が不透明>

 

 ただ、震災後の電池量産にあたっては「自社の工場は無事でも材料調達に懸念がある」(電池メーカー担当者)のが実情だ。調査会社テクノ・システム・リサーチによると、10年の日本勢のリチウムイオン電池の世界シェアは約40%だったが、電池の主要4材料「正極・負極・セパレーター・電解液」ならば、日本の化学メーカーは依然として圧倒的な存在感がある。電池メーカーとしては「電池は材料との摺り合わせの技術で出来ているので簡単に調達先は変えられない」(同)ことから、調達先の被災状況の把握に努めていることを明かす。

 

 正極材メーカーでは、日本化学工業(4092.T)の福島第一工場(郡山市)が地震発生の11日から操業を停止。今週から設備の点検を始めたばかりで再開のめどは立っていない。また負極材でも、世界最大手の日立化成工業(4217.T)が茨城県の山崎事業所の生産を停止。早期再開を目指しているが「電気や水などのインフラが不安定で稼働は少量ずつにならざるを得ない」(広報)状態だという。

 セパレーターでは、東レ東燃機能膜合同会社(東レ(3402.T)・東燃ゼネラル石油5012.Tの折半会社・栃木県那須塩原市)は地震の影響で操業を停止中。設備点検には1カ月程度の時間がかかる上、計画停電の影響を読み切れていないという。電解液では、富山薬品工業(東京都中央区)の大熊工場(福島県双葉郡大熊町)は福島第1原子力発電所の避難区域で立ち入りできず、設備被害の把握できない状況にある。同工場は福島原発から約3キロメートルの近距離にあるため周辺に住んでいた多くの従業員が県内外に避難しているという。

 

 一方で、セパレーター首位の旭化成(3407.T)は工場が宮崎県と滋賀県にあり被災の影響はなく、22日にはリチウムイオン電池の需要増加に対応するため宮崎県の工場の生産能力の増強を発表。同じ電池材料メーカーでも明暗が分かれた。

 

 テクノ・システム・リサーチの山本連三アシスタントディレクターは「東日本にある材料メーカーの工場は、直接の震災被害よりも東電エリアの計画停電で安定稼働が難しい状況にある。この影響がどこまで広がるかを見極める必要がある」と話す。 

 

 <トヨタ・日産で遅れが表面化>

 

 自動車メーカーでは、トヨタが23日、プリウスのミニバンタイプの新型車の発売について、4月下旬の予定を延期する方針を明らかにした。新たな発売時期は未定という。新型車は、5人乗り(2列シート)にはニッケル水素電池、7人乗り(3列シート)にリチウムイオン電池を搭載することになっている。

 

 日産は、EVリーフを製造する追浜工場(神奈川県横須賀市)の操業を停止中。24日には在庫部品で再開する見込みだが、同社のアンディ・パーマー常務執行役は17日のロイターの電話インタビューで、追浜工場で操業を再開してもリーフの供給が遅れる恐れがあることを明らかにした。すでに、予約に生産が追い付かずに納車に支障をきたしていたが、震災の影響でさらに遅れる可能性があるという。

 

 これらのエコカー供給の遅れは、電池に限らず半導体や周辺部材など多くの部品調達が難しくなったことが要因だが、キーパーツ(基幹部品)の電池の量産体制に支障をきたせば、自動車メーカーのエコカー戦略を左右しかねない。このほか、野村総合研究所グローバル戦略コンサルティング部の北川史和部長は「福島第1原発の事故で各国の原子力政策が見直されれば、グリーンな原子力エネルギーで走るとされていたEVそのものの位置づけも問われ始めるのではないか」としており、エコカー戦略に対する政治的な影響を懸念する声も出ている。

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