東日本大震災の復興財源として発行した国債を日銀が引き受ける構想が政府・与党内で急浮上したのに対し、野田佳彦財務相ら閣僚が相次ぎ火消しに動いている。しかし、従来からデフレ脱却には日銀の行動が必要と主張する声が少なくない与党内には、依然として「日銀頼み」の雰囲気もくすぶる。そうした中、財政規律の崩れを懸念する債券市場では長期金利が2週間ぶりの水準に上昇。早くも懸念がじわりと広がり始めている。
この日午前の記者会見では、閣僚が相次ぎ日銀の国債引き受け構想に否定的な見解を示した。野田財務相は「政府として具体的に検討している事実はない」ときっぱり否定したうえで、昨日午後に一部報道機関が国債引き受けを検討と伝えた後に長期金利が上昇したとして「よくよく慎重になってもらいたい」と苦言を呈した。
以前から日銀の国債引き受けを強く否定してきた与謝野馨担当相も「そういうことはあり得ない」とした上で「絶対そういうことはさせない」と断言。担当相は前日夜もテレビ番組の収録で、日銀の国債引き受けは「お金を印刷するのと一緒」で「大インフレの引き金になる」と指摘。「マネープリンティングオペレーションはやってはいけない」と強く否定していた。
政府部内でも、突然浮上した日銀の国債引き受け構想に困惑や否定的な声が相次いでいる。ある政府幹部は31日夜、政府が方針を決めたとする報道に対して「聞いていない。『政府』の誰が言ってるのか」と不快感を示したほか、別の政府高官も引き受け構想が決定事項として表に出てくることは「ない」と断じた。
しかし、民主党内には従来から、デフレ脱却のためには日銀法を改正してでも政府と同調させ、国債引き受けや追加緩和など「機動的な金融政策」で経済を下支えすることが必要だと主張する声が少なくない。ある民主党議員は「国債の直接引き受けは今後の話」としながら、「市場の実勢は依然として株安・円高の水準にある。日銀は当面、国債、リスク性資産ともに買い入れを拡大して包括緩和の強化で非常時対応にあたるべきだ」と主張する。
政府与党内で激しい応酬が繰り広げられる中、東京円債市場では10年債長期国債利回り(長期金利)が1日、一時1.270%と3月16日以来約2週間ぶり水準へ上昇した。市場では株価の底堅い動きに加え、日銀の国債引き受けに対する懸念を指摘する声も上がっているという。第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は同構想について「ファイナンスをどうするかという問題ではない。財政規律の崩壊の問題だととらえてほしい」と話している。
(東京 1日 ロイター)
(ロイターニュース 基太村真司 伊藤純夫 吉川裕子 中川泉)