June 24, 2011 / 2:26 AM / 8 years ago

〔ロイターサミット〕重み増す海外M&A戦略、停滞気味の国内でも業界再編の可能性

 [東京 24日 ロイター] ロイターが20日から3日間開いた「ロイター日本再生サミット」では、震災からの復興を急ぐ日本企業にとって、M&A(企業の合併・買収)展開が一段と重要になっている状況が鮮明になった。災害リスク分散のため、海外におけるM&Aや生産増強の動きはさらに拡大しそうだ。一方、国内では全体として拡大ペースは鈍いものの、業界再編をにらんだ戦略的M&Aが浮上する可能性も少なくない。

 <海外M&Aに根強いニーズ>

 「多くの日本企業が海外M&Aの機会のチャンスをうかがっている。日本企業の経営はまだグローバル化していないのが課題だろう。なぜなら競争相手はグローバルな企業だからだ」。M&A助言会社、リンカーン・インターナショナルの会長、宮川圭治氏はロイターサミットでこう語り、大きな動きが予想される業種として食品、医薬、エネルギー、ITサービス、化学の5セクターを挙げた。

 日本企業の間では、国内の少子高齢化と市場縮小を背景に、震災前から海外M&Aを探る動きは高まっていた。同じく同サミットに参加したモリソン・フォースター弁護士事務所のケン・シーゲル弁護士によれば、震災の前と後で海外M&Aの加速スピードは「驚くほどは変わっていない」という。

 日本から海外に向かうM&Aマネーは、米国、英国、ブラジル、マレーシアなど幅広い国や地域に広がっており、業種をみてもヘルスケア、素材、金融、ハイテクなど広範におよぶ。長引く円高で日本企業は想定より安く買収ができる。また、欧米のプライベート・エクイティ・ファンドが保有する企業を売却し投資回収(エグジット)する時期にあるため、日本企業は買い手になりやすい、という環境もある。

 その意味で、大きなトレンドに変化はないとしても、M&Aの増勢が続くという点で業界関係者の見方は一致する。震災の直接的な影響について言えば、東京電力(9501.T)の原子力発電所の事故による電力不足への懸念などが、製造業に一段の海外シフトを促すきっかけにもなっている。

 

 サミット登壇者の一人、三井住友フィナンシャルグループ(8316.T)の宮田孝一社長は、日本のメーカーの間では、有事に備え「生産を他の拠点に代替できるよう顧客の要請を受けている会社が出ている」と指摘。海外で工場を建設するか、生産ラインを持つ企業を買収するか、などが選択肢になっているという。

 

 ローソン(2651.T)の新浪剛史社長も、欧米アジアの人口の増加している地域に参入する方針を表明。「欧米にはいずれ出たい。人口の増えているところとして米国にはいずれ行きたい」と発言。また「中国に加えて、インドネシア、インド、ベトナムあたりが最重要」とも話し、アジア展開を優先する考えも示した。

 <流れに逆行する国内M&A市場>

 一方、国内企業同士のM&Aは、海外M&Aと比較すると、伸びのペースが鈍い。それには、日本市場特有の事情がある。

 

 「日本の市場は(M&A)活性化の流れから逆行してしまった」と語るのは、独立系M&Aブティック、クロスポイント・アドバイザーズの柴田優・共同パートナー。かつて、村上ファンドなど経営陣に増配や再編を要求する「モノ言う株主」が世間の耳目を集めた時期があった。その当時、多くの上場企業がそうした株主を恐れ、買収防衛策を講じ、それが現在にも至っている。投資家にとって日本株を買うインセンティブが失われる一方、日本の企業側も「何かやらなければというプレッシャーが減り、企業価値を高めるということを誰も語らなくなってしまった」と柴田氏は言う。

  

 それだけでなく、国内市場の変化がM&Aの必要性を減らしている状況もある。業界再編が予想される業種の1つ、コンビニの最大手、セブン&アイ・ホールディングス(3382.T)の村田紀敏社長は、サミットでの発言の中で、コンビニの成長は「顧客のロイヤリティを高められるかにかかっており、1店1店の売上の力がすべて。そういう意味で国内再編はあまり興味ない」と話した。

 積水ハウス(1928.T)の和田勇会長兼CEOは、住宅メーカーのM&Aは、1足す1は2にならず、買収先の企業がすでに建てた家を負の遺産として抱えることになるため「マイナスの効果しかない」と指摘。和田会長は、中国やシンガポールなど、新たな商圏でのビジネス拡大に経営資源を投入する方針だが、「買収されそうな会社には優秀な社員はいないし、よその会社を買収するより人材は自前で採用し育てるほうがいい」と、国内でのM&Aには距離を置いている。

 トムソン・ロイターによると、今年1月─6月22日の日本企業のM&A全体の金額は6兆1091億円、前年同期比50%の大幅増。3月の震災直後、日本企業のM&Aは急減したが、5月に急回復しており、全体としてみれば、M&Aが経営ツールとして浸透した証(あかし)ともいえる。

  

 このうち、海外企業のM&Aは2兆9348億円、同77%の増加で、過去最高のペースで拡大。一方、国内企業同士のM&Aは2兆4451億円と、同20%の増加だが、これは野村ホールディングス(8604.T)が5月に公表した野村土地建物(東京都中央区)の完全子会社の案件が、対象企業の有利子負債の大きさから1件だけ8886億円と突出して大きかったため。これを除くと、日本企業の国内M&Aの金額は同23%減の1兆5565億円にとどまり、日本企業によるM&Aの「内外格差」が統計上もはっきりと現れている。

 <国内M&A探る動きも>

 ただ、水面下で国内M&Aを模索する経営者もいる。三井住友FGの宮田社長は、震災後の動きとして、生産拠点が東北にある企業と、生産拠点が西日本に重点的にある大企業の統合なども、今後出てくると展望した。

  

 ローソンの新浪社長は、昨年発表となった新日本製鉄(5401.T)と住友金属工業5405.Tの経営統合という大型再編について「大きなインパクトとして受け止められている」と話し、震災後は「(自身も)スピーディにもっとやらないといけないと思った」と、成長に向けた施策を急ぐ構えだ。

 

 新浪氏は「セグメントを超えたM&Aは非常に重要で(調剤など)ヘルスケアに張っていくことは重要」と発言。コンビニ業界にとどまらず「クロスセクターの再編」も視野に入れ、足元の経営基盤を強化する姿勢を見せた。

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