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〔焦点〕海外投資家も証券税制を注視、優遇廃止なら日本株売りリスクも

 江本 恵美記者

 [東京 6日 ロイター] 証券税制の優遇措置について政府税調が撤廃の方針を示していることを受け、日本の上場株式の4分の1超を保有する海外の機関投資家の日本市場への資金流入に影響を与えると指摘する声が市場関係者の中で浮上している。安倍政権の金融・経済政策に対し「直接金融の発展・改革の推進」という小泉政権の政策から、転換するとのメッセージを海外に発信することになり、海外勢の失望感を招いて日本株売りにつながりかねないと危ぐする声も出ている。

 証券税制の見直し論は、日本の投資家だけでなく、海外の機関投資家にも無縁ではない。

 財務省主税局によると、株式を売却した際に発生する譲渡益にかかる税金は、世界的に居住地国で課税するのが一般的。このため日本株を売却して利益を得ても通常は日本で課税されることはないが、配当課税は別だ。

 現在、日本に居住する投資家には配当課税10%が課せられているが、海外の投資家(非居住者外国法人および個人)には国税の7%が課せられている。政府税調の方針通り、07年末を期限とする証券税制の優遇措置が廃止の方向となり、配当課税が10%から20%に上がれば、海外の投資家に対しても税率は上がる。租税条約のある国に居住する投資家の場合、配当課税は現行の7%から10%に、租税条約がない国の場合は15%になる。

 米国、英国、中国、インドなどは日本と租税条約があるが、カナダ、ドイツなどは租税条約がない。ヘッジファンドの多くが拠点を置くオランダなども日本と租税条約がないため、これらの投資家にとって配当にかかる課税比率は7%から15%へと倍以上に上がることになる。

 <日本株の4分の1超は海外の投資家が保有>

 東京証券取引所によると、2006年3月末時点で日本の上場株式(東証、大証、名証、札証、福証に上場する全企業)の26.7%(時価総額ベース)は海外の投資家が保有している。これは過去最高の水準だ。

 こうした海外マネーが日本株を保有する割合は、04年3月末時点に21.8%、05年3月末時点では23.7%と年々増え、日本株の市場における海外の投資家の重要度は増している。

 ヘッジファンド関係者はすでに、証券税制の優遇措置が廃止されるとの政府税調の方針に懸念を表明し始めた。あるファンド関係者は、優遇税制の廃止が最終的に決まれば「配当利回りの高い銘柄に投資しているファンドは目先、ポジションを見直すことになるだろう」と話す。別のファンド関係者は、ヘッジファンドの多くが日本国内の投資家の動向に注目していると指摘し、「日本の投資家が07年末に向けて利益確定の売りに急ぐという地合いを察知する前に、ショートポジション(売り持ち)を作りに動くだろう」とみる。

 <安倍政権の経済政策を疑問視>

 短期的な動きだけではなく、日本の市場運営や金融経済をめぐる政策をみるうえで重要な課題だとの指摘も出ている。クレディ・スイス証券・ストラテジストの市川眞一氏は、海外機関投資家にとって今回の優遇措置の廃止論が、安倍政権の海外投資家に発信するメッセージとして重要だとみている。

 市川氏は、現時点で「日本の証券税制の変更を気にしている海外の投資家はほんの一部で、関心は依然として企業業績の方にあるようだが、長期的な視点でみると証券税制の方向性は、安倍政権が日本経済や株式市場についてどう考えているかを見極める重要な課題になる」と語る。

 また、市川氏は、日本企業の業績が過去最高ペースで好調でも、日本人の賃金上昇や個人消費の拡大につながらない悪循環について重大なポイントが隠れていると指摘。そこには、増え続ける外国人投資家という「厳しい株主の目を意識し、企業が賃金(コスト)を抑制する代わりに株主還元を重視する傾向がある」という。

 かつては企業業績が改善すれば賃金も上がり一般国民の生活は潤ったが、現状は「企業業績がいいかから賃金が上がるのではなく、賃金を抑えているから企業業績が上がる構図になっている」とし、個人がもっと身近に投資信託などを通じて株式投資を増やさなければ、企業の業績拡大がもたらす株価上昇の恩恵は、幅広い日本人は受けられず、海外の機関投資家に流出するいっぽうになると危ぐする。

 もっとも「税制の変更だけで日本株の投資を減らす機関投資家は少なく、日本企業が企業価値を高める努力を続ければ海外からのマネーは入り続けるため、上場企業の自助努力の方が重要」(大手証券)との見方もある。

 ただ、野村証券・ストラテジストの岩澤誠一郎氏は、海外の投資家が日本株に投資するか否かを判断をするうえで重要なのは「(政策が)株式市場にフレンドリー(友好的)な方向を向いているか否かだ」と指摘。小泉政権の時は、直接金融の発達を後押しする政策を打ち出し、株式相場にはポジティブと受け止められていた。しかし、国策だったはずの「貯蓄から投資への流れ」を阻害しかねない優遇税措置の廃止論が現実味を帯びれば、安倍内閣の政策は「ネガティブな政策」と受け取られると語る。

 さらに優遇措置が導入されてから「確かに日本株の相場は回復したが、日本人の投資に対する関心はまだ緒に就いたばかり」と述べ、優遇措置を導入した「本来の目的が何をもって達成されたと言えるか十分な検証が必要だ」と慎重な対応を求めている。

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(ロイター日本語ニュース 江本 恵美 03-5473-3741 ロイターメッセージング:emi.emoto.reuters.com@reuters.net

 Eメール  emi.emoto@reuters.com 編集:田巻 一彦)

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