May 29, 2009 / 6:54 AM / 10 years ago

〔焦点〕米銀行への債務株式化の強制求める声広がる

 [ニューヨーク 28日 ロイター] 債務の株式化は、経営不振の企業を再建する伝統的手段だが、銀行は今回の危機の最中、この方法の採用を回避してきた。借り入れコストが上昇し、業務継続が困難になる可能性を懸念しているためだ。

 一部の学者や投資家は、銀行は債務の株式化を試みるべきであり、銀行がこれに消極的な場合には政府が強制すべき、との見解を示している。

 著名ヘッジファンド・マネジャーのデービッド・アインホーン氏は27日、アイラ・ソーン・インベストメント・リサーチ・コンファレンスでのプレゼンテーションで、銀行に積極的な融資を行うための十分な資本保有を確実にさせるには、債務の株式化は最善の手段との見方を示し、学者らがこの数カ月間提唱してきた考え方に賛同した。

 アインホーン氏は、政府が大手銀行を対象に実施した「ストレステスト」(健全性審査)は十分ではなかったとし、「銀行は健全との発表は、銀行への資本注入ほどには有効でない」と付け加えた。

 国際通貨基金(IMF)は4月、米銀行セクターが金融危機以前の水準まで資本を引き上げるには2750億ドルの調達が必要、との見方を示した。1990年代半ばの水準を回復するには5000億ドルを調達する必要がある、とした。

 関係者はこれほどの巨額の資金の調達には、債務の株式化が唯一の実現可能な方法だ、と指摘する。

 

 しかし、債務の株式化を強制するには大きな障害が存在する。規制当局は、社債投資家に対し、株式を受け入れるよう強制する法的根拠を持たない。また、大規模な債務の株式化の強制には、法律制定が必要になる可能性がある。

 オバマ政権は債務の株式化をそれほど追求しておらず、投資家の多くは大規模な債務の株式化が実施される可能性は極めて低いとみている。

 ノーベル経済学賞を受賞した米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授は、債務の株式化を長期間放置すれば、高い代償を支払うことになりかねない、と指摘した。

 主要銀行の大半は、引き続き債務の履行が可能であるが、将来大手行が巨額損失を計上し、かつ政府が介入に踏み切るまで時間を要した際には、多大なリスクが発生する可能性がある。この場合、後片付けにより高いコストを支払うことになる。スティグリッツ氏はロイターに対し、「政府は最後まで待ってはならないという、特別な義務を負っている」と述べた。

 <システム崩壊か>

 リージョンズ・ファイナンシャル(RF.N)などの一部の銀行は、投資家に対し社債と株式の交換を促すことで資本の増強を狙っている。交換は自発的なものであり、比較的安全な証券からリスクの高い証券への引き換えをめぐり、社債保有者を説得するための誘因(インセンティブ)も必要になる。

 調査会社SNLファイナンシャルによると、銀行の未償還の劣後債発行額は2300億ドルを超える。この2300億ドルで、IMFが推定した2750億ドルの不足の大半を埋めることが可能だ。

 一方、債務の株式化の強制に関するうわさを、銀行幹部らは懸念している。社債保有者に株式を受け入れるよう圧力をかければ、すべての銀行社債が高リスクと見なされ、業界全体で借り入れコストが上昇する可能性があるという。

 ある大手銀行の幹部は「債務について一線を越えてしまえば、システムが崩壊すると感じている」と述べた。

 こうした懸念には十分な理由がある。リーマン・ブラザーズ・ホールディングスLEHMQ.PKが2008年秋に経営破たんした際には、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)(AIG.N)からワコビア、ワシントン・ミューチュアルWAMUQ.PKまで多くの金融機関が経営難に見舞われた。

 スティグリッツ氏はこうした懸念を一蹴する。同氏は、ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)に問題が発生しても、他のメーカーの借り入れが困難になった事実はない、と指摘した。

 債務の株式化の提唱が正しくあろうとなかろうと、政府は現時点で社債保有者に株式への交換を強制することはできない。

 フリード・フランクの銀行規制担当弁護士、トム・バータニアン氏によれば、政府が可能であるのは、銀行に増資を促すか、社債保有者を債権者とすべく銀行を管理下に置くかのいずれかだ。同氏は「銀行規制当局者は社債保有者に対する管轄権を一切持っておらず、社債を株式に交換するよう強制することはできない」と述べた。

 先のアインホーン氏は、経営難に陥った銀行持ち株会社の緊張を解くため、整然とした債務の株式交換を容認する方法を検討すべきだ、と述べた。

 一方、米連邦預金保険公社(FDIC)のベアー総裁は今月、規制当局は銀行に対し、困難な状態に陥った際に株式に転換可能な社債を発行するよう促すことが可能だ、と語った。

 オバマ政権は、社債保有者に対する株式との交換の強制を望んでいないことを示唆している。

 しかし、ハーバード・ビジネススクールのデービッド・シャーフスタイン教授は、経済が相当悪化した場合、こうした姿勢が変化する可能性はあるとし、「先のことは誰も分からない」と述べた。

 (Dan Wilchins記者;翻訳 山口 肇: 編集 村山圭一郎)

(hajime.yamaguchi@thomsonreuters.com; 03-6441-1779; ロイターメッセージング:hajime.yamaguchi.reuters.com@reuters.net)

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