April 10, 2019 / 11:04 PM / 13 days ago

コラム:IMFの政策提言、「カサンドラの悲劇」になるか

[ロンドン 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ギリシャ神話に登場するトロイの王女カサンドラを襲った悲劇が示す通り、せっかく適切な助言をしてもだれも従わなければ全く役に立たない。

4月9日、ギリシャ神話に登場するトロイの王女カサンドラを襲った悲劇が示す通り、せっかく適切な助言をしてもだれも従わなければ全く役に立たない。ワシントンのIMF本部で8日撮影(2019年 ロイター/Yuri Gripas)

国際通貨基金(IMF)にとってもそれが問題かもしれない。IMFが最新の世界経済見通しに盛り込んだ景気浮揚の処方箋は理に適っているが、いずれも実行が困難か無視されるのがほぼ確実だからだ。

IMFは9日公表の世界経済見通しで2019年の成長率予測を1月時点の見通しの3.5%から3.3%に引き下げた。昨年実績は3.6%だった。成長鈍化の3分の2余りを先進国が占め、特にドイツとイタリアが足を引っ張った。そしてこれは万事が順調にいった場合の数字になる。

IMFの予測は、中国がかじ取りの難しい景気刺激策をうまく進め、金融市場のセンチメントが維持され、ユーロ圏の成長を下押ししている最近の悪材料の一部が消えて、アルゼンチンやトルコなど一部新興国で経済が安定するとの想定に基づいている。これらの条件が全てそろっても、米中貿易摩擦が再燃するかもしれない。あるいは英国が合意なく欧州連合(EU)を離脱したり、イタリアで債券利回りが長期間急騰して国内銀行への圧力が高まるなど、欧州で問題が噴出する恐れもある。

だからIMFの主任エコノミストのギータ・ゴピナート氏が政策ミスを避けることが不可欠だ、と訴えたのは不思議ではない。報告書には優れた提言も十分にちりばめられている。IMFは中国に対して、ブレーキを強く踏みすぎずに借り入れによる投資の抑制を一段と進めるよう求め、成長が急激に鈍れば財政による景気刺激が必要かもしれないと付け加えた。

米国については、利上げに対して忍耐強いアプローチを採っているパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長を称賛する一方、公的債務が過去最高水準に積み上がったことを受けてトランプ政権に歳入の対GDP比引き上げに注力するよう注文を付けた。また内需を刺激する余地のある国の1つとしてドイツを名指しした。

中国の例が分かりやすいが、こうしたアドバイスのいくつかは遂行するのが厄介だ。また、他の提言も、ドイツや米国などのように政府の優先課題と相いれないため、恐らく目を向けてもらえそうにない。トランプ大統領は来年の選挙を控え、米経済が好調を保つことを望むだろう。ドイツのメルケル政権は財政規律を非常に重視しており、財政出動に動く公算は乏しい。

政治的な思惑は常に、経済的な合理性や成長にとって最良の方策に優先される、ということは英国のEU離脱を巡る交渉で証明済みだ。カサンドラと同じく、IMFはアドバイスが受け入れられなくても自分が正しいということだけで満足するしかないだろう。

●背景となるニュース

*国際通貨基金(IMF)は9日発表した世界経済見通しで、2019年の成長率見通しを3.3%とし、1月時点の見通しの3.5%から0.2%ポイント引き下げた。昨年10月時点では3.7%と予想していた。[nL3N21R3EG]

*IMFの主任エコノミスト、ギータ・ゴピナート氏は9日のブログに「世界経済は妥当なペースで成長を続けており、景気後退は基本シナリオではないが、下振れリスクは多い。こうしたリスクを勘案すると、代償の大きい政策ミスを避けることが不可欠だ」と書き込んだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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