April 25, 2019 / 9:00 AM / 23 days ago

コラム:「ゼロサム思考」はなぜ世界成長を脅かすのか

[ワシントン 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ワシントンで今月開かれた世界銀行と国際通貨基金(IMF)の春季会合では、国際協調の必要性が叫ばれたが、実際には勝ち組の数だけ負け組が出るという「ゼロサム思考」が幅を利かせていた。

 4月15日、ワシントンで今月開かれた世界銀行と国際通貨基金(IMF)の春季会合では、国際協調の必要性が叫ばれたが、実際には勝ち組の数だけ負け組が出るという「ゼロサム思考」が幅を利かせていた。ロンドンで2018年撮影(2019年 ロイター/Toby Melville)

グローバル化がほぼすべての人に恩恵をもたらすという「ウィン・ウィン」思考と、最もあからさまに決別したのはトランプ米大統領だ。同会合では、米国と中国および欧州連合(EU)との貿易摩擦が、目下のところ世界経済の足を引っ張る最大のリスクとして繰り返し指摘された。しかし自国の利益を第一にしているのがトランプ米政権だけとは、とても言い難いのが実情だ。

一部の欧州諸国は自国、あるいは地域の巨大企業を創設したがっている。例えばドイツはドイツ銀行(DBKGn.DE)とコメルツ銀行(CBKG.DE)の統合を望んでおり、フランスとドイツは独シーメンス(SIEGn.DE)と仏アルストム(ALSO.PA)の鉄道事業統合を進めようとして、欧州委員会に却下された。

中国は2025年までに米国やドイツに匹敵するハイテク産業を育成する壮大な計画を立てている。しかし1国があるセクターにおいて国家的企業を支援すれば、他国も同様の動きで対抗し、国内事業と雇用を守ろうとするだろう。

これは障壁を壊して資本や雇用をプールできるようにするどころか、壁を高くすることにつながる。

世界の貿易と経済関係の緊密化はこれまで、貧困の緩和や国ごとの格差縮小に役立ってきた。しかし、グローバル化の旗振り役であるIMFですら、それによって特に先進国の中間層において負け組が出たことを認めている。また、米国の現在の通商戦術は一般に非難されているが、中国に国家補助や知的財産面で変更を求める国はほかにも多い。

確かに、世銀・IMF春季会合には国際協調を支持する声があふれていた。しかし具体的な政策の姿となると、世界レベルでも地域レベルでも、一致した意見はずっと少なかった。

その結果、フランスのルメール財務相が記者団に対し、財政収支が黒字の欧州諸国は投資を増やすべきだと訴えた直後、黒字国オランダのフクストラ財務相が別室で、同国が財政規律を厳しく守っていく理由を説明するといった光景が見られた。フランスから支出拡大を最も強く要請されているドイツは、自国の財政政策が既にかなり景気拡張的だと強調。そしてどの国もイタリアに対し、欧州委員会の財政アドバイスを守るよう強いることができていない。

こうした国ごとのばらつきは今に始まった話ではないが、経済成長が力強く、大国の財政・金融政策にもっと余裕があり、各国政府が協調に前向きな局面ではさほど問題にならなかった。

先進諸国の公的債務は、2007年の国内総生産(GDP)対比70%前後から、11年には100%超に拡大し、その後も高止まりしている。一部先進国の政策金利はゼロ前後かマイナスで、深刻な景気後退が訪れれば資産買い入れなどの非伝統的な手段に頼るしかない。そうした手段は、回り道をしながら各国経済に影響を及ぼしている。

先進国の非伝統的金融緩和は諸外国に余波を広げるが、新興国経済が世界全体のGDPの小さな部分しか占めていなかった時代には簡単に無視することができた。しかし先進国経済は現在、世界全体のGDPの60%を占めるにとどまっている。米連邦準備理事会(FRB)が前回の利上げ局面に入った2004年には、この割合が80%だった。このため、米国の政策に対する他国の反応が米国に跳ね返る力は、過去よりも強くなっている可能性がある。

こうした状況では、各国が自国の行動がもたらす幅広い影響にもっと注意を払い、協調を深める必要性が高まるはずだ。

しかし今日の政治家の多くは、自らは自国の利益を追求しながら、他国には世界全体の利益に関心を払うよう期待している。経済成長が弱っている時にはなおさらだ。ゲーム理論によると、こうした行動は通常「ルーズ・ルーズ(共倒れ)」への道をたどるという。

●背景となるニュース

 4月15日、ワシントンで今月開かれた世界銀行と国際通貨基金(IMF)の春季会合では、国際協調の必要性が叫ばれたが、実際には勝ち組の数だけ負け組が出るという「ゼロサム思考」が幅を利かせていた。写真は11日、ラガルドIMF専務理事(2019年 ロイター/James Lawler Duggan)

・米ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は12日、各国が貿易面での対立を克服し、「タイムリーな政策行動」で協調すべきだとの認識で一致した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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