March 17, 2019 / 12:31 AM / 2 months ago

焦点:「卒業したけど仕事がない」、就職難に悩むインドの若手技術者

[チンチワド(インド) 12日 ロイター] - サントシュ・グーラブさん(27)はインド西部の中堅大学で電気工学を専攻し、昨年テクノロジーの学位を得て卒業。産業オートメーションの分野で就職先を探すつもりだった。

3月12日、サントシュ・グーラブさんはインド西部の中堅大学で電気工学を専攻し、昨年テクノロジーの学位を得て卒業。産業オートメーションの分野で就職先を探すつもりだった。写真は2月、インド西部チンチワドで開催された採用フェアに参加した求職者。黒板に専攻と休職期間が書かれている(2019年 ロイター/Danish Siddiqui)

卒業から6カ月たった今、グーラブさんはインド西部プネーの町の雑然とした商店で、家庭用ミキサーや扇風機などの家電を修理する仕事をしている。運が良ければ、スクラップ業者から壊れたLED照明を手に入れ、修理して売ることができる日もある。1カ月の稼ぎは約50ドル(約5500円)で、ほかの2人とシェアしている自宅の家賃を払うのがやっとだ。

「まだ学費ローンの返済も始められていない」と、グーラブさん。大学の学費として、4000ドル近い借り入れがあるという。

グーラブさんは、コンピューターコーディングから土木工学まで、インドの教育システムが毎年世に送り出している多数のエンジニアの1人だ。その多くが多額のローンを抱え、専門分野での就職が難しい状況に置かれている。

モディ首相は2014年の就任直後に、「インドで製造を」を旗印に製造業を強化し、大規模な雇用を創出する公約を鳴り物入りで打ち出した。だが、グーラブさんのようなエンジニアの存在は、その公約達成が困難な実態を浮き彫りにしている。

「来たまえ、電気から電子工学までインドで製造しよう、と世界に呼びかけよう」。モディ首相は、就任後初の独立記念日の演説でこう訴え、2022年までに1億の新規雇用を創出すると約束していた。

<ブームならず>

それから4年。雇用創出プログラムがどの程度の成果を上げているかは明らかではなく、製造業の成長も、土地や労働制度の改革が伴わなかったことが一因で、ゆるやかなものとなっている。

シンクタンクのインド経済モニタリングセンター(CMIE)がまとめたデータによると、インドの失業率は先月7.2%と、2018年2月の5.9%から上昇している。この数字は、政府統計より新しいもので、多くのエコノミストが信頼できるとみている。

世帯調査をベースにしたこのデータによると、2月の求職者数は3120万人だったと、CMIEマネジングディレクターのマヘーシュ・ビアス氏は言う。工学・技術系専攻者の内訳は調べていない。

インドの人口は半数以上が25歳未満の若者で、4─5月にかけて行われる総選挙では、若年失業者の票がモディ氏の再選確率を引き下げるとの指摘も出ている。

産業でオートメーションが進んだことや、大量の若者が労働市場に放出されていること、さらには、インドに製造拠点を構えたい企業がいまだに規制のハードルに直面していることなどのすべてが、失業者にとって大きな問題を生んでいる。

中国が過去40年で謳歌(おうか)した製造業ブームは、インドには届かない。企業がテクノロジーでイノベーションを起こし、生産性を上げるためには、もはや安い労働力に頼るだけでは不足で、高スキルの労働者や強いインフラを必要としている。

雇用主側は、高スキルの工学・技術系専攻者の不足を訴えることが多いと、スキル評価会社アスパイアリング・マインズの共同創業者ワルン・アガワル氏は話す。同社の調査では、インドが世に送り出すエンジニアの8割以上が、雇用で求められるレベルに達していないという。

「基本的なコードも書けない人が多い。教育システムから変わる必要がある」と、アガワル氏は話す。

<英語が話せない>

前出のグーラブさんは、西部チンチワドの町で最近大学が開催した就職フェアに参加し、申し込みの長い行列に並んだ。ほとんどがマーケティングや財務部門の求人だったが、申込者にはエンジニアも多数いた。

求職者の多くが地方出身者で、その地域の言葉で教育を受けているため、英語に堪能ではない場合がほとんどだ。企業側は、インドの教育システムはこの問題に取り組む必要があると訴える。

アンクシュ・カルワデさん(22)は、130キロ離れた町からこの就職フェアに参加した。父親は農夫で、大学進学の費用は出してもらえなかった。そこで、より安く、短期間で卒業できるエンジニアのコースを受講した。

「英語の映画を見たり新聞を読んだりして努力しているが、企業は大卒者を求めている。英語力も必要だが、自分にはない」と、カルワデさんはため息をつく。

ガヤトリさん(24)は、両親からの求めで4カ月前にエンジニアリングの修士号を取得した。本当は、インドの伝統音楽を学び続けたかったのだと言う。

「父は私がエンジニアになることを希望したので、その通りにした。でも今、仕事がない」と彼女は話す。就職フェアの参加企業の1つから、月給約140ドルのカスタマーサービスの仕事のオファーがあった。

「信じられますか。コールセンターで座って仕事するためにこの学位を取ったわけじゃない」

それでも、若いエンジニア層は多くの可能性を秘めている。

家電製品の修理は、グーラブさんが卒業後に思い描いていた仕事ではない。「コールセンターの仕事ならあったけれど、やりたいことではなかった」と、彼は言う。だが、彼の父親は来年退職予定で、家族にお金が必要になるため、近く再検討しなければならなくなるかもしれない。

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グーラブさんは、現時点では修理の仕事を続けるつもりだが、恥ずかしくて友人たちには話せていないという。店内での写真撮影も拒否した。

「もしここで働いているところを見られたら、スキルがないと思われてしまうだろう。でも自分にはスキルがあるし、この分野に情熱を持っている」

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

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