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コラム

コラム:EV用電池に賭けたインドネシア、前途に暗雲も

[香港 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] - インドネシアは、電気自動車(EV)ブームの流れに乗ろうとしている。LG化学や現代自動車グループなどの企業は、地元の天然資源を容易に確保できるインドネシアで電池工場を設立する。EV業界の世界的サプライチェーン(供給網)に割り込もうとするインドネシアの努力が実を結んだ形だ。

8月11日、インドネシアはEV用電池の原料となるニッケル埋蔵量が世界全体の4分の1を占め、政府は国内向け供給を確保するためニッケルの未加工鉱石の輸出を禁じている。写真は同国スラウェシ島にある製錬所でニッケルを加工する作業員。2014年1月撮影(2021年 ロイター/Yusuf Ahmad)

だが、自動車メーカーは最終消費者に近い場所での生産を望んでおり、しかも東南アジアでは、依然としてガソリン車が主流を占めている。

インドネシアはEV用電池の原料となるニッケル埋蔵量が世界全体の4分の1を占め、政府は国内向け供給を確保するためニッケルの未加工鉱石の輸出を禁じている。

ニッケルは一般的に他の原材料に比べて埋蔵量は豊富だが、需要が全世界で急速に高まっており、政策担当者は電池メーカーが在庫の確保を望むだろうとそろばんを弾く。国際エネルギー機関(IEA)によると、2020年の世界のEV登録台数は前年比41%増加した。

インドネシア政府の取り組みは、関心の的だ。7月には韓国の現代自動車とLG化学傘下のLGエナジー・ソリューション(LGES)が11億ドルを投じて、インドネシアに電池工場を設立すると発表した。

当局者の話では、中国の電池メーカー、CATL(寧徳時代新能源科技)や米EV大手のテスラもインドネシアへの投資を検討。さらにインドネシア国営企業も投資を進めている。

ただ、インドネシアはEVの最終消費地から遠く離れている。国内のドライバーは価格の高さ、走行距離への不安、充電インフラの不足などからEVの購入に消極的で、EVの国内シェアは1%にも満たない。一方、電池は輸送に手間がかかり、コストも高く、需要のある中国などへの販売は難しい。

LGは準備の整った買い手と組むことで、この問題を気の利いた方法でとりあえず解決して見せた。パートナーの現代自動車は年内にインドネシアで初めてで唯一のEV工場を開設する。他の企業は辛抱せざるを得ない。

インドネシア政府は、いずれ全ての自動車を電動化する方針。だが、税制上の優遇措置があっても、期限が2050年というのは、移行に長期間かかるということを認めたかたちだ。

7月にはCATLがニッケルを全く使わない電池技術を開発したと発表した。インドネシアが資源のバリューチェーンをはい上がるには、一層の努力が必要かもしれない。

●背景となるニュース

*韓国の現代自動車とLG化学のバッテリー子会社、LGエナジー・ソリューション(LGES)は7月29日、インドネシアに合弁会社を設立し、EV用の電池工場を建設すると発表した。投資総額は11億ドルで、折半出資とする。工場は2021年第4・四半期に着工し、23年上半期までに完成する予定。

*インドネシアの国営企業省は3月、国営企業4社が電池メーカーのインドネシア・バッテリー・コーポレーション(IBC)を設立すると発表した。IBCは生産能力を2030年までに最大140ギガワット時とする目標を掲げている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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