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焦点:物価2%突破も金融緩和は継続か、景気「コロナ前」水準遠く

[東京 20日 ロイター] - 注目されていた物価指数の伸びが2%を超え、日銀が「物価安定の目標」とする水準を上回った。ただ、金融市場では、早期の金融緩和政策の修正の思惑は高まっていない。日銀の黒田東彦総裁は、金融緩和の継続でコロナ禍からの景気回復をサポートしていくとの方針を重ねて示している。経済がコロナ前の水準を回復するのは2023年1―3月期との予測もあり、黒田総裁の任期中は政策の修正はないとの見方が強い。

 5月20日、注目されていた物価指数の伸びが2%を超え、日銀が「物価安定の目標」とする水準を上回った。都内で1月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

<政策修正思惑、高まらず>

20日発表された4月全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)が前年同月比プラス2.1%となり、日銀が政策目標とする総合指数も2%を上回った。

コアCPIの伸び率は15年3月以来の伸び率となった。消費増税の影響を除けば、資源高局面にあった08年9月以来の伸び率だ。しかし、市場の反応は薄かった。「日銀が事前に説明を尽くし、思惑をつぶしてきたことで、急に政策修正の思惑が高まるようなことにはなりにくい」(国内証券)との指摘が出ている。

日銀の黒田総裁をはじめとする幹部は、4月以降2%に迫る可能性があるものの、コストプッシュ型のインフレは持続しないとの見方を繰り返し強調してきた。

4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、コアCPIについて「携帯電話通信料下落の影響が剥落する22年度には、エネルギー価格の大幅な上昇の影響により、いったん2%程度まで上昇率を高めるが、その後はエネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していく」と明記。4月のコアCPIはこのシナリオに沿ったものとなった。

物価上昇が持続的なものとなるかは、賃金と中長期の予想インフレ率の動向がカギになる。雨宮正佳副総裁は17日の衆院・財務金融委員会で「単に物価だけが上がればいいということではない」と指摘、「企業収益や雇用・賃金が増加するもとで、物価も緩やかに上昇していく好循環の形成を目指している」と述べた。

賃金を巡っては、日銀内で、物価2%が安定的に持続するには3%程度の賃金上昇が必要だとの声が出ている。しかし、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介上席主任エコノミストは「3%の賃金上昇の実現は困難だ」と話す。22年は2%強程度、定期昇給を除いたベア(基本給)はゼロ%台半ば程度にとどまるとみている。

4月のコアCPIでは、生鮮食品を除く食料がプラス2.6%となり、指数の押し上げ役の1つとなった。176品目中、127品目が上昇。上昇品目は3月の112品目を上回り、原材料高の価格転嫁が広がっていることが示された。

購入頻度の多い品目の値上がりが人々の期待インフレ率に影響し、短期の期待インフレ率は高まっている。ただ、UBS証券は17日付リポートで「インフレ期待は着実に上昇しているが、上昇への期待は主に一時的なもので、中長期なものでない。(08年の)金融危機前と同様、インフレ期待が高まっているとは言え、インフレの動きが変わるほど長くは続かないだろう」と指摘している。

<GDP「コロナ前の水準」、高いハードル>

黒田総裁は物価上昇率が2%付近で高止まりすると見込まれる中でも「強力な金融緩和により、新型コロナ感染症の影響からの景気回復を支えることが必要だ」と繰り返し述べてきた。

13日には内外情勢調査会で講演し、「日本のGDPは、既にコロナ前の水準を回復した米国やユーロ圏と異なり、コロナ前の水準をなお2%強下回っている」と述べた。講演資料では米国、ユーロ圏、日本の実質GDPの推移が掲載され、19年平均を100としたときに米国が22年1―3月期GDP時点で103.7、ユーロ圏が100.5とされた。日本は18日発表の22年1―3月期実質GDP1次速報を反映すると97.3にとどまる。

日銀では、「コロナ前の水準」は消費増税の影響で景気が下押された19年10―12月期ではなく、19年平均で考えるのがふさわしいとの指摘が出ている。このため、コロナ前の水準回復という時のハードルが上がることになる。

みずほR&Tの酒井氏は、日本のGDPが100を上回るのは23年1―3月期と予測。先行き経済・物価情勢に大きな変化がなければ、黒田総裁の任期が満了となる23年4月まで日銀は金融緩和を続ける可能性が高いことが示唆される。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニア・マーケットエコノミストは「政策金利のフォワードガイダンスの修正ぐらいはあっても、黒田総裁の任期中は長期金利の水準が上がるような政策の修正や変更はないとみている」という。

<政府・日銀で連携のあり方議論を>

携帯電話通信料の大幅値下げに伴うコアCPIへの下押し圧力は4月、8月、10月の3回にわたって剥落する。みずほR&Tでは4―6月にプラス2.2%、7―9月にプラス2.3%、10―12月にプラス2.4%で推移すると予想。上昇率のピークは10月でプラス2.5%とみている。

大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「3四半期連続の2%台となれば、もはやデフレではない」と指摘。7月の参院選後に物価に対する考え方を政府と日銀で再度議論して、政策連携のあり方について検討すべきだとする。

「政府の言うことが変わらないと、日銀は変わらない」と岩下氏は話している。

(和田崇彦 編集 橋本浩)

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