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アングル:ウクライナの戦禍がアフリカ翻弄、パーム油高騰が生活直撃

[アビジャン(コートジボワール) 27日 ロイター] - アフリカのコートジボワールはウクライナから遠く離れている。しかし、実質的首都のアビジャンでジェネバ・ベレムさんが営むフライドビーンケーキ(豆を使った揚げ物)の屋台は、パーム油の価格高騰という形で戦禍に翻弄されている。

 4月27日、アビジャンでジェネバ・ベレムさんが営むフライドビーンケーキ(豆を使った揚げ物)の屋台は、パーム油の価格高騰という形で戦禍に翻弄されている。写真はアビジャンの屋台。4月12日撮影(2022年 ロイター/Luc Gnago)

「もう売るのをやめたいと思うくらい。だって油の値段がこんなに上がったら儲けが無くなってしまう」。鍋の中の揚げ物をかき回しながらベレムさんは語った。

ロシアもウクライナも、熱帯の産物であるパーム油の生産国ではない。しかしロシアによるウクライナ侵攻は、複雑に絡み合った現在の世界経済にドミノ倒しのように影響を広げている。

戦争を一因としてパーム油の価格は過去最高値に跳ね上がった。パーム油はナイジェリアのジョロフライス(ピラフ)からコートジボワールのバナナフライまで、アフリカの食卓には欠かせない食材だ。

パーム油の輸出国インドネシアはこのほど、国内のパーム油価格の高騰を抑えるために輸出禁止に乗り出した。

「こんな状況に直面したのは初めてだ」と語るのは、農産物コンサルタント会社、LMCインターナショナルの創設者、ジェームズ・フライ氏。「衝撃をまともに食らうのは、大国の最貧困層やアフリカ諸国だろう」と言う。

実際、アフリカのサブサハラ(サハラ砂漠以南)では、家計支出に占める食費の割合が既に40%に達している。この割合は世界のどの地域よりも高く、先進国の17%に比べると倍以上だ。

燃料を含む幅広い価格が急上昇し、新型コロナウイルスのパンデミックによってアフリカで数千万人が極度の貧困に追いやられているところに、パーム油の価格高騰が加わったことで、多くの人々は厳しい選択を迫られるだろう。

ケニアの首都ナイロビで美容業界コンサルタントとして働くルーシー・カマンジャさんは、パーム油を使った調理油の価格が90%も上がったため、果物や生活必需品代を削らざるを得なくなった。

「本当に心配。食品価格が2倍ぐらいに上がってしまい、これからどうなってしまうのか」とカマンジャさん。「どうやって食いつないでいけばよいか」と嘆いた。

<ひまわり油も>

ロシアのウクライナ侵攻以前から、インフレは世界的な懸念事項だった。国連食糧農業機関(FAO)によると、昨年の食品コモディティ価格の上昇率は23%強と、過去10年余りで最も高かった。

3月のFAOの世界食料価格指数(食肉、乳製品、穀物、砂糖、油)は前月比12.6%も上昇し、指数公表が始まった1990年以来の最高を記録した。

中でも食用油は大きな打撃を被った。

アルゼンチンの大豆油輸出とカナダの菜種油生産は、干ばつによって壊滅的な影響を受けた。インドネシアの悪天候と、新型コロナ対策としてのマレーシアの入国制限措置は、パーム油生産を圧迫し、大農場で人手不足を招いた。

LMCのフライ氏は「唯一の光明がひまわり油だった」と話す。

ところがロシアが2月、ウクライナに侵攻すると、黒海地域からのひまわり油の出荷が滞り、世界の供給の大部分が消えた。この地域は世界のひまわり油生産の60%、輸出の4分の3以上を占める。

泣き面に蜂だったのは、やはり戦争の影響による原油価格の高騰だ。バイオ燃料の需要が増え、植物油の供給がさらに圧迫されたからだ。

「表現のしようもないほど悪い状況だ。最悪の事態に近い」とフライ氏は語る。

パーム油の世界指標であるマレーシア産パーム原油価格は、年初から50%近く上昇している。

<農家には恩恵も>

多くの貧しい国々では、パーム油は経済性の観点からも好んで使われてきた。長年の間、主な植物油の中で最も安かったからだ。

しかし世界銀行のデータを見ると、最近は他の植物油、特に大豆油やひまわり油並みの価格に近づいている。

3月には一時、インドの4つの主要な食用油の中でパーム油が最も高くなった。アフリカで中心的に使われるパーム油が、最も安い食用油だと安心して言える時代が終わりを告げるのかもしれない。

ただ、パーム油価格の高騰はアフリカにチャンスをもたらす面もある。

アフリカでは約20カ国がアブラヤシを育てており、農地面積は計600万ヘクタール近くに及ぶ。農業セクターにおける雇用の主な担い手でもあり、価格上昇は所得アップにつながるはずだ。

アビジャン郊外でパーム油の精製所を営むシルベイン・ンチョさんは、過去1年間に売上高が20%前後増えた。「パーム油価格の上昇で潤っているのは私たちだけではない。恩恵の一部は農民にも向かう」とンチョさんは語った。

コートジボワールの街、アディアケ近くで農場を営むジェローム・カンガさんは3年前の生産開始時、価格の安さにがっかりした。だが「12月以降、特に2月と3月に入ってから面白くなってきた。ざっと20%ぐらい(収入が)増えた」という。

<客から苦情>

しかしパーム油の上昇で追い風を受ける人の数は、困窮する人の数に比べれば取るに足りない。

アフリカ諸国のパーム油消費量は生産量を大幅に上回る。世界市場を支配しているのは東南アジアだ。

ナイジェリアのラゴスで小さな食品店を経営するアン・オバニーさんは、レッドパーム油の仕入れ値がこの1カ月だけで約20%も上がったと話す。「まるでうちが値段をつり上げているみたいに皆から苦情を言われる。うちは仕入れ値に沿って売っているだけなのに」

(Ange Aboa記者 Joe Bavier記者)

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