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米FRB、11月に量的緩和縮小開始:識者はこうみる

[3日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は2─3日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、11月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始し、2022年に完了させると決定した。市場の見方は以下の通り。

●ドル高継続でも115円抜けには米金利以外の材料必要=モルガン・スタンレーMUFG 杉崎氏

  <モルガン・スタンレーMUFG証券 エクゼクティブディレクター 杉崎弘一氏>

米連邦公開市場委員会(FOMC)ではこれまで一過性であると断言していたインフレの見通しについて「主に一時的と予想される」へと表現を弱めた。また、「パンデミックと経済の再開に関連する需給の不均衡が、一部のセクターで大幅な価格上昇の原因となっている」という一文も付け加えられ、インフレが一過性ではないとの懸念が一段階強まっていることが確認できた。

米連邦準備理事会(FRB)は引き続き、労働市場のボトルネックが解消されるにつれて、インフレが低下していくとみている。完全雇用に達していない労働市場の進展をみながら、今後の利上げパスを判断していくのだろう。

市場のプライシングで見ると、2022年に2回以上の利上げ、そこから一気に6回の利上げをし打ち止めというような織り込み方をしている。現時点でのFRBのトーンを踏まえると、完全雇用に達するのは22年後半になるという見方から、22年に1回利上げに踏み切り、ゆっくりと利上げを継続していくとみている。初回の利上げについては市場対比でみると遅くなるものの、ターミナルレート(利上げサイクルの最終到達点)は高くなるというのが、今のFRBの見方に沿った利上げパスなのではないか。

FOMCを受けてイールドカーブの形状はベアスティープとなった。7―10年ゾーンまでツイストスティープしていくのが、フェアなバリュエーションだとみている。足元の経済の強さや市場の織り込んでいるプライシングに対してFRBがハト派的だったことを市場が織り込み直すのであれば、イールドカーブはより高い成長を見込む形状になる。

強い経済が認識されており実質金利も上昇していくことから、今後もドル高基調は続いていく。また、ドルは徐々に資産性の側面を持つようになり、リスクセンチメントの改善ともに、ドル/円は上昇していく。ただ、115円を抜けるには米金利の上昇以外の大きな材料が必要となり、時間がかかるとみている。

●サプライズなし、金融政策への警戒感和らぐ=三井住友DSAM 市川氏

<三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩氏>

今回の会合でテーパリング開始が正式決定されたこと自体は十分想定されており、サプライズではない。焦点となったのは物価と利上げ時期についてのFOMCの見方で、足元の物価上昇については声明で「一時的」との文言を残し、利上げについてはパウエル議長が現時点での利上げは尚早との認識を示した。いずれも従来どおりの認識と違いはなく、市場に安心感が広がった。

米国株は、好調な企業業績を支えに、引き続き上昇余地があり、日本株の下支えにもなりそうだ。供給制約を背景にしたインフレ懸念はくすぶるが、コロナ禍による一時的とみられる労働者不足が解消に向かえば和らいでくる。今年の春先には、急激に高まったインフレ圧力を背景として金融緩和の早期正常化への警戒感で相場が不安定になったが、供給制約を「一時的」とみるFRBのスタンスは市場でも共有されてきている。金融政策を手掛かりとする市場の混乱は、今後も大きくはならないだろう。

テーパリング中も債券の購入は続くし、来年半ばにテーパリングが終了しても、その後もFRBのバランスシートの規模は高止まりとなる。テーパリング後の利上げ判断は、その時点の物価の落ち着きや雇用の回復の程度によるが、FF金利先物はすでに来年2回の利上げを織り込んでいる。テーパリングが進む過程でFOMCのスタンスがややタカ派になったとしても、過度に警戒する必要はなさそうだ。

●サプライズ少なく工夫され、市場は都合よく解釈=大和証 末廣氏

<大和証券 シニアエコノミスト 末廣徹氏>

FRB(米連邦準備理事会)は市場の想定通り、11月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始を決定したが、パウエル議長の会見も含めて、全体的にサプライズが少なくなるよう工夫されていた印象だ。

声明文では、インフレ率高止まりについて「一時的」という認識を残しつつ断定は避けて不確実性の高まりを認めた一方、パウエル議長は「今はテーパリングのとき」で「利上げは時期尚早」として、利上げのタイミングは言及しなかった。

米連邦準備理事会(FRB)は2─3日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、11月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始し、2022年に完了させると決定した。2020年1月撮影(2021年 ロイター/Yuri Gripas)

このため、マーケットは都合良く解釈しやすかった。

とはいえ、FRBにとっては引き続き、市場とのコミュニケーションが難しい局面が続く。

テーパリングを決定したが、早期利上げは回避したいFRBのスタンスは変わっていない。いつまで「忍耐強く」いられるかが焦点だが、早ければ12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)でドットチャートが引き上がり、FRBが早期利上げを受け入れる可能性もある。

だが利上げのハードルは高い。長期・超長期金利が低い中で利上げを開始すれば「最終到達点」が低くなるリスクがあるため、FRBは来年の春まではハト派姿勢を維持すると予想する。つまり大方の市場予想に反して22年中の利上げ開始は回避される、個人的には開始は23年後半になるとみている。

日本市場へのインプリケーションとしては、既に衆院選という政治イベントをこなして経済対策のとりまとめを待つ中、債券市場も株式市場も、海外要因に影響されやすい状況となりそうだ。

債券市場は、米国だけではなく、RBA(豪中銀)やBOE(英中銀)の金融政策の方向性も含めたグローバルな金利動向の影響を受けるだろう。

一方で株式市場は、マクロ経済への強いショックがあっても、FRBが容易に緩和にも引き締めにも動けず助けてくれないという意味で、ダウンサイドリスクが大きい状況が続くとみる。

●円高・円安材料が混在、今後はFRB高官発言に注目

<楽天証券 FXディーリング部 荒地 潤氏>

米連邦公開市場委員会(FOMC)は市場予想通りの結果となり、大きなサプライズはなかった。ただ、マーケットでは早期利上げ開始への期待があったものの、利上げについてパウエル議長の姿勢は予想以上に弱気と受け止められ、ドルは下落した。

一方、米連邦準備理事会(FRB)のハト派的な姿勢が確認されたことで株式市場は堅調に推移し、リスクオンムードでクロス円では円安傾向が強まった。その結果、ドル/円相場は円高材料、円安材料が混在し、もみあいとなっている。

マーケットの関心は利上げのタイミングに移っている。FRBはインフレは一時的との見解を変えず、緩和縮小と利上げは別物だと示している。今後はFRBメンバーの発言機会が続くが、その中でタカ派の意見が優勢なのか、そうでないのか、ということを市場は見極めにいくのではないか。

次の重要イベントは今週末の米雇用統計だ。雇用統計から人手不足感が改めて意識されると、労働者不足でモノの値段は上がりやすくなるとの想起につながる。そうなると「インフレは一時的」との見方が変わり、利上げへの期待が再び高まる可能性もあるとみている。

●予想通り、必要に応じた利上げへ準備

<ステート・ストリートのグローバルマクロストラテジスト、マービン・ロー氏>

完全に予想通りだった。市場が2022年7月の利上げを織り込んでいるのは少し早いと思うが、現在から来年半ばまでの間にインフレが一過性であるという兆候が表れるかどうか次第だろう。それは現在の供給不足がどの程度続くかに大きく左右される。

インフレ率は依然として誰の予想よりもはるかに高く、中央銀行が実際にコントロールできない要因によって生じている。FRBの観点からすると、明らかに現時点では利上げを見込んでいないものの、必要になれば利上げを行うための準備を整えている。

短期金利は上昇し、長期金利はかなり安定している。それは利上げが必要になればFRBは行動するという見方がすでに織り込まれているからだ。

●緩和縮小は来年半ばに完了、下期に2回利上げ

<CIBCエコノミクス(トロント)のシニアエコノミスト、カサリン・ジャッジ氏>

FRBは予想通りにテーパリング(量的緩和の縮小)着手を発表した。発表された縮小ペースに基づくと、テーパリングは2022年半ばには完了するとみられる。これにより、同年下半期に2回の利上げが実施されるとのわれわれの予想に道が開かれる。

ただ、経済見通しの変化に応じてFRBは縮小ペースを調整する可能性もある。

●来年6月にかけテーパリング加速も

<ジェフェリーズの短期金融市場エコノミスト、トーマス・シモンズ氏>

ほぼ予想通りだった。インフレ圧力が少なくとももう少し続く可能性があるとの認識を強めたが、最終的にはインフレ高進は一過性との見方を変えなかった。「一過性」という文言を維持したことが重要で、この文言が消えればFRBがタカ派スタンスを強めたことを示唆したが、そうしなかった。

テーパリング(量的緩和の縮小)については、議事要旨や最近の講演などでかなり周知されていた。月額100億ドルの削減ペースはほぼコンセンサスだ。また、FRBは削減ペースを調整する可能性を示したため、来年6月までに経済に何かしらのショックがない限り、削減ペースが加速する可能性がある。インフレ高進が続けば、あるいは労働市場がより迅速に改善し、利上げ時期が近いと判断するなら、削減ペースを調整し、利上げの議論が始まる前にテーパリングを確実に終了させるだろう。

●11月開始はややタカ派的、早期完了目指す

<RBCウエルス・マネジメント(ミネアポリス)のシニアポートフォリオストラテジスト、トム・ガレットソン氏>

11月のテーパリング(量的緩和の縮小)開始は、明らかにややタカ派的だった。早期に着手し、可能な限り早期に完了させたいように見受けられる。

インフレについては、一過性のものとの見方を維持しただけでなく、経済の一部の部門における供給と需要を巡る要因におおむね起因するとの見方を新たに付け加えた。

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