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米雇用統計:識者はこうみる
2016年10月7日 / 16:41 / 1年後

米雇用統計:識者はこうみる

[7日 ロイター] - 米労働省が発表した9月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数の伸びが15万6000人と、8月の16万7000人(改定後)から鈍化した。市場予想の17万5000人も下回った。失業率は5.0%にやや上昇した。連邦準備理事会(FRB)が利上げに慎重な姿勢を強める可能性がある。

 10月7日、9月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数の伸びが15万6000人だった。写真はワシントンの就職フェア会場で1月撮影(2016年 ロイター/Gary Cameron)

市場関係者のコメントは以下の通り。

●ドル/円は米大統領選通過まで方向感欠く

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏>

ドル/円相場にとって、米雇用統計や米大統領選候補者討論会といった先週末からのイベントはいずれも決め手を欠く内容だった。大統領選挙を通過するまで方向感は出にくく、100─105円のレンジでもみ合う展開が想定される。

米雇用統計は、非農業部門雇用者数、失業率、時給といった、注目3指標がすべて市場予想を下回った。今回の統計で市場は11月の利上げはないと再確認した一方、年内の利上げ期待を完全に消滅させるほどの弱さでもなかった。

米大統領選挙候補者のテレビ討論会も、2回連続でトランプ氏が劣勢となったようだが、クリントン氏の勝利が決定的に確実になったわけでもない。

期せずして、ロシアのプーチン大統領が石油輸出国機構(OPEC)の減産合意に加わる意向を示したことが、市場にとって最も重要な材料になった。減産合意はロシアなど有力な非加盟国の参加がないと効かない。プーチン大統領の前向きな発言で、原油価格が50ドル台を維持できる雰囲気になってきた。

これによって、一時的には円の安定感は増す可能性がある。ただ、資源国通貨が上昇することで、円もドルも売られる。ドル/円が一方向にどんどん動く様子ではない。目先のドル/円は100円を割ると底堅い印象がある一方、105円を抜けていくほどの上値の軽さも感じられない。次の雇用統計や11月米連邦公開市場委員会(FOMC)、大統領選挙を見極めた上で、方向感が出てくる流れだろう。

●ドル/円は週末にかけて緩やか上昇も

<ソニーフィナンシャルホールディングス 金融市場調査部長 尾河眞樹氏>

先週末からの一連のイベントは、総じてドル/円の支えになりそうだ。今週のレンジは103.00―104.80円とみている。

米雇用統計は、市場予想を下回ったことでいったん102円後半まで下落したが、平均時給や労働参加率に改善がみられており、悪い内容ではないとの受け止めが広がった。

市場の織り込みでは、11月の利上げの思惑は後退したものの、もともと期待されていなかったため相場には影響しない。一方、12月利上げの思惑は着実に高まってきている。今週は米小売売上高も底堅い内容とみられている。

雇用関連指標の推移は6月以降、去年に似た動きとなっている。先行き10─11月がよほど悪い内容にならなければ、昨年同様12月に利上げされる確率は高いだろう。今週に予定されるイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長講演に向けても、利上げに前向きな発言への思惑が出るのではないか。

米大統領選挙の討論会では、トランプ氏の劣勢は変わらなかった。米共和党の要人たちも半ばさじを投げており、情勢は厳しそうだ。メキシコペソは米大統領選の動向に敏感な反応を示してきたが、足元では堅調に推移している。これもドル/円の支援材料になるだろう。

●外部環境の改善でリスクオフムード後退

<ソシエテ・ジェネラル証券 ディレクター 杉原龍馬氏>

前週の4連騰から雰囲気は変わりはじめ、日経平均はようやく約1カ月ぶりとなる節目1万7000円回復となった。産油国による石油生産抑制に向けた動きや、クリントン氏優勢との見方が広がっている米大統領選、米雇用統計は予想を下回ったものの力強さを保っている米経済状況など、外部環境の改善を受けてリスクオフムードが後退している。円高圧力の緩和も日本株の上昇を支援している。

米国株が商いを伴って堅調に推移しており、このまま安定的に推移すれば日本株も連動してしっかりとした展開となるだろう。ただ国内に独自要因が乏しく、企業決算に対する懸念もあるなかでは、大きなアップサイドは見込みにくい。年末の日経平均は1万7500円程度ではないか。グローバルマクロなどの海外勢が日本株のポジションをさほど保有しておらず、急速な巻き戻しによる売り圧力が強まる懸念は乏しいが、実需買いも少なく、タイトなレンジを上抜けるほどの強さは期待しづらい。

●十分に良い数字、12月利上げの可能性残る=リバーフロント

<リバーフロント・インベストメント・グループのマイケル・ジョーンズ最高投資責任者(CIO)>

十分に良い数字で、12月(利上げ)の可能性が残った。

米経済が第1・四半期のような低迷状態に再び陥るとの懸念が不要となるほど、底堅い内容だった。同時に連邦準備理事会(FRB)に、直ちに行動するよう促すほど、強い内容でもなかった。

●非常に良好、失業率上昇はハト派の論拠に<RBCキャピタルマーケッツ(ニューヨーク)の首席エコノミスト、トム・ポルチェリ氏>

マクロ的な観点でいえば、今回の統計は非常に良好といえる。雇用の伸びは多かれ少なかれ予想の範囲内であり、前回分もある程度上方修正された。賃金は非常に建設的な動きとみられ、消費の継続的かつ揺るぎない伸びを裏付けるものといえる。

一方、失業率が上昇したことは、FRB内のハト派の気を引きそうだ。彼らは昨年12月の利上げ以降、失業率はあまり改善していないと考えており、今回の失業率の上昇はそうした見方と一致する。したがって、ハト派の側からすれば今回の統計は自らの主張の論拠となろう。

●FRBはGDP確認へ、11月利上げ予想せず

<米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)の首席エコノミスト、ダグ・ダンカン氏>

まずまずの内容となった。連邦準備理事会(FRB)が姿勢を変えることはないだろう。12万人の雇用増なら失業率が一定に保たれると、FRBは考えており、今回の数字はそれを上回る。

参加率が急上昇したことで、失業率も上がった。これは実のところ、歓迎すべきことだ。建設分野は1月以来の堅調な水準となった。住宅分野からみて朗報だ。

11月利上げを予想していない。(11月会合後、イエレン議長の)記者会見予定も無い。11月末に公表される第3・四半期の国内総生産(GDP)統計をまず確認したいのではないか。市場関係者の大多数が12月の行動を予想しており、今回の統計はこうした見方を下支えするだろう。

●刺激乏しい、FRBは為替注視か

<UBS(ニューヨーク)のポートフォリオマネジャー、アラン・レヒトシャフェン氏>

今回の統計が連邦準備理事会(FRB)の政策の方向性に確かな影響を及ぼすとは考えられない。熱すぎず、冷たすぎず、あまり刺激のない内容だ。過去分が上方修正され、雇用者数が予想を多少下回り、労働参加率は上昇した。

FRBにとって足元の関心事は英ポンドではないか。為替は間違いなくFRBの決定に影響をおよぼすデータの一つとおもわれる。

●加速見られず、利上げすべきでないこと示す

<フィエラ・キャピタル(ニューヨーク)の首席投資責任者(CIO)、ジョナサン・ルイス氏>

強過ぎもせず、弱過ぎもしない、いわゆる「ゴールディロック」的な雇用統計だった。(労働市場は)やや軟調となった可能性があるが、まずまずの状態にあるとと言えよう。

米連邦準備理事会(FRB)の利上げに関わってくるのは、賃金圧力、および物価圧力が見られているかどうかだが、こうした圧力は見られていない。このため、FRBが金融引き締めに踏み切る理由も、市場でFRBによるより積極的な引き締めが期待される理由もない。

つまり、雇用統計が需要な統計と見なされるなら、(今回の結果で)加速が示されたなかったため、FRBが利上げを行うべきではないとの理由があらためて示されたことになる。

●利上げへの決定打とならず

<アリアンツ(カリフォルニア州)の首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏>

賃金と労働参加率がともに上昇したことは経済にとって好材料だが、雇用者数の伸びが多少鈍化したことで、米連邦準備理事会(FRB)にとって利上げへの決定打とはならなかった。全般的に強弱材料がきっ抗するなか、非伝統的金融政策への長期依存によって生じる副作用をどの程度政策当局者が懸念しているかがきっ抗を破るものとなる。

*内容を追加します。

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