March 3, 2020 / 6:49 PM / a month ago

FRBが0.5%緊急利下げ、新型肺炎リスクで:識者はこうみる

[3日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は3日、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を50ベーシスポイント(bp)引き下げ、1.00─1.25%にすると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大による影響から米経済を守る。

米連邦準備理事会(FRB)は3日、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を50ベーシスポイント(bp)引き下げ、1.00─1.25%にすると発表した。写真はパウエル議長(2020年 ロイター/KEVIN LAMARQUE)

FRBは声明で「米経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は引き続き力強い。新型コロナウイルスは経済活動に対するリスクとして台頭しつつある。こうしたリスクを踏まえ、さらに、最大雇用と物価安定の目標を達成するために、連邦公開市場委員会(FOMC)はきょう、 FF金利の誘導目標を引き下げることを決定した」とした。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●満額回答だが本質的な解決にならず

<大和総研 シニアエコノミスト 小林俊介氏>

FRBは市場の期待に満額回答しており、オーバーナイトの米国株安の直接の要因ではないだろう。株安となったのは、金融緩和が金融市場の「痛み止め」にはなっても、新型コロナウイルスの感染拡大の本質的な解決策にならないということが嫌気されたからだ。秋の米大統領選に向けて大きな山場となるスーパーチューズデーを迎え、民主党候補が不透明なことも株価を不安定にさせた。

新型ウイルスの感染者が広がる中、有効な手立てがない。失った需要を利下げによって取り戻せるかといえばそうでもない。日本株も苦しい状況が続くだろう。

●懸念払拭は困難、日銀はETF目標引き上げか

<シティグループ証券 チーフエコノミスト 村嶋帰一氏>

米利下げは早く、幅が大きかった。FRBは、米経済のファンダメンタルズは依然強いが新型コロナウイルスによる下振れリスクへの保険をかけたと、その理由を説明している。しかし、実態はもっと悪いのではないかと勘繰りたくなる緊急利下げだった。

3日の米株が大きく下げたのは、そういう不安もあったのではないか。これまでの株価水準が高かった反動もあるが、そうした不安に加え、新型ウイルスに対して金融緩和がどこまで有効な処方箋となるのか疑問視されている。

実際、利下げの効果はあまり大きくないだろう。長期金利低下による住宅市場への効果などは期待できるが、市場が懸念している「未知のウイルス」への対策にはならない。米国で感染者が増えれば、市場心理は一気に悪化するだろう。

また、利下げが効果を発揮したとしても、利下げ余地が小さくなっていることへの警戒感は強まる。市場はあと1回程度の利下げを織り込んでいるが、0.5%幅であれば0.5─0.75%に下がる。景気後退局面への備えがほとんどなくなってしまう。

FRBはマイナス金利政策には懐疑的であり、日銀のようなイールドカーブ・コントロール政策を採用する可能性もあるとみている。

日銀は、きょうか3月18─19日の金融政策決定会合でETF(上場投資信託)の買い入れ目標額を現在の6兆円から引き上げる可能性があると予想している。

マイナス金利の深掘りは金融機関の負担が大きい。特に地域金融機関にとっては、中国経済減速の悪影響を受けているところであり、マイナス金利の深掘りはダブルパンチとなりかねない。以前よりも深掘りのハードルは上がったとみている。

●米国は金利面での「弾切れ」視野に

<みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>

米国は3日に行われたG7財務相・中央銀行総裁による緊急の電話会議の直後に、0.5%ポイントの緊急利下げを全員一致で決定したとするFOMCの声明を発表した。

3月17、18日に開催予定の定例FOMCを待たず、大幅利下げに踏み切ったのは、新型肺炎の感染者が米国も含め世界に広がりをみせていること、米国株が急落したこと、トランプ米大統領からの執拗な利下げ圧力、G7の議長国としてのプレッシャーなど複合的な要因があるとみている。

いずれにせよ、「株が下がると利下げする」というFRBの行動パターンが再確認され、市場では「株価にフレンドリーな金融政策が続く」との見通しが定着していくだろう。

利下げはまた、金利面でのドルの優位性を奪い、ドル高が修正されるリスクをはらんでいる。今回大幅利下げが行われたことで、米国が早々に金利面での「弾切れ」(ゼロ金利制約)に対峙する可能性が高まっている。

結局のところ、ウイルスの感染拡大に対し、利下げは無力である。各国の保健当局・研究所・製薬会社などがウイルス対策の「最前線」に立っているわけで、金融緩和は市場心理の不安定化や株価急落への手当てにしかならない。

米10年債利回りUS10YT=RRが1%を下回ったことで、住宅市場などへの刺激効果はあるものの、新型ウイルスがもたらしている新たな危機とは、まったく次元が異なるように思う。

●見事な対応、定例会合で追加利下げも

<ロングボウ・アセットマネジメント(オクラホマ州)のジェイク・ダラーハイド最高経営責任者(CEO)>

FRBが緊急利下げに踏み切ったのは見事な対応で、連帯感の表れと言える。ただ、今後予想される個人消費の落ち込みは懸念材料だ。これまでのブル相場は消費者がけん引してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大でiPhoneやルイヴィトンなどブランド品、さらには外食への支出が減る恐れもある。今回の利下げはもっぱら市場心理の下支えを狙ったものだ。

今月17―18日のFOMC定例会合でも追加利下げがあり得ると考える。

●他の中銀も追随の可能性

<ハイ・フリークエンシー・エコノミクス(HFE)の首席エコノミスト、カール・B・ウェインバーグ氏と首席米国エコノミストのルベラ・ファルーキ氏>

FRBの利下げは想定されていたが、きょう実施されるとは予想されていなかった。パウエルFRB議長にとっては、この日行われた主要7カ国(G7)の財務相と中央銀行総裁の電話会議に出席した際に利下げの可能性を念頭に置いていたのだろう。

FRBの行動は他の中銀が今後FRBに追随し、緊急利下げもしくは他の政策行動に踏み切る可能性を示唆している。これが協調的な世界の金融緩和の始まりであれば、同日中もしくは再び株安となれば、他の中銀による利下げにつながることが考えられる。

HFEは利下げについて、新型ウイルス流行が招いた供給ショックを解消させる建設的な措置とは確信していない。しかし、市場では期待が台頭しており、FRBによる大幅利下げは市場の信頼感を大きく変化させた。これはG7共同声明では実現できなかったものだ。「状況を注視し、適切に行動する」以上の意味を持つ措置と言える。

●「利下げはワクチンでない」と反応ならボラティリティー高止まり

<トールバッケン・キャピタルアドバイザーズ(ニューヨーク)の最高経営責任者(CEO)、マイケル・パーブズ氏>

今回の緊急利下げがどのようなインパクトをもたらすのかはまだ分からない。発表直後は市場の支援要因となった。

ただ大きな疑問がある。どのような条件で緊急利下げが決定されたのか。新型コロナウイルスを巡る状況が4月に改善した場合、FRBは利上げに動くのか。それとも「下りはエレベーター、上りは階段」となるのか。それとも「上りの階段」というものはそもそも存在しないのか。利下げのロジックはよく理解できない。

市場が50ベーシスポイント(bp)の利下げでは納得せず、株式市場が「利下げはワクチンではない」といった反応を示した場合、ボラティリティーは高止まりすると予想している。

当面は高利回りクレジットスプレッドのほか、(不安心理の度合いを示す)ボラティリティー指数(VIX)を注視したい。

●株価の反応限定的、週末に追加利下げも

<ノルデア・アセット・マネジメントのシニアマクロストラテジスト、セバスチャン・ゲリー氏>

FRBは緊急利下げを発表したが、S&P総合500種の反応は限定的だった。市場が事前に利下げを積極的に織り込んでいたことを示しており、週末にも追加利下げが発表される可能性がある。

利下げは通常、金融情勢を引き締める一環として行われるが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大を巡る経済的懸念を回避することが主目的だ。

労働市場ではすでに緩和拡大を示す緩やかな兆候が見られていた。欧州中央銀行(ECB)が利下げに踏み切る可能性は低いが、米連邦準備理事会(FRB)のように、一時的なショックに対処するために銀行規制を微調整し始めるだろう。中銀はもともと、金融システムにおける安定剤であり、FRBがその道を示したことで、他の中銀も追随するだろう。ただ、金融政策では限られたことしかできない。

株式市場の落ち着いた反応は「うわさで買って事実で売れ」という格言通りの動きを示唆している。今後2週間は引き続き市場のボラティリティーが高まるだろう。

*内容を追加しました

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