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自民党の新総裁に岸田氏、市場関係者はこうみる

[東京 29日 ロイター] - 自民党の岸田文雄前政調会長が新総裁に選ばれたことを、市場関係者は冷静に受け止めている。金融や財政政策が大きく変わるとの見方は少ない一方で、菅義偉首相に比べて海外への発信力を期待する声が聞かれた。

 9月29日 自民党の岸田文雄前政調会長が新総裁に選ばれたことを、市場関係者は冷静に受け止めている。写真は総裁選で勝利した岸田氏(右)と現首相の菅義偉氏。9月29日、東京で撮影(2021年 代表撮影)

識者の見方は以下のとおり。

●株価に中立、衆院選に向けては「買い」か

<ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏>

岸田文雄前政調会長が勝利した結果それ自体は、株価に対し、ほぼニュートラルだろう。菅義偉政権よりは国民との対話力などが期待されるが、変革力が期待された河野太郎行革担当相の陣営に対して組閣で配慮するとは見込みにくいため、自民党は大きくは変わりそうにない。変化を好む外国人投資家にとってプラス材料になりにくい。

一方、マイナス材料にもならないだろう。緊急事態宣言解除で経済再開への期待があるほか、これから始まる決算シーズンでは良好な企業業績も期待される。日経平均で3万円前後は割高ともいえず、急いで売る必要もない。

衆院選では、消去法として自民党が選ばれる構図に変化はなさそうだ。岸田氏なら失策は見込みにくく、大敗しそうにない。大型の経済対策を公言しているため、衆院選に向けては「選挙は買い」のスタンスでいいだろう。アベノミクス継続を主張した高市早苗前総務相が議員票で河野氏を上回った。官房長官などの要職の目もあるかもしれない。そうなれば、株式相場でも期待がつながりそうだ。

ただ、番狂わせもあるかもしれない。総裁選の決選投票では、世論をより反映するとされる党員票と、議員票とで、真逆の結果となった。自民党議員は、世論と逆の体制を選んだとの解釈もできそうだ。

●短期的な金融政策や財政政策は変わらず

<りそなホールディングス エコノミスト 村上太志氏>

市場では岸田文雄前政調会長の勝利が大方予想されていた。短期的な金融政策や財政政策については、大きく変わることはないとみている。

決選投票が決まった時に、日経平均株価は下げ幅を拡大した。その時点で市場は岸田氏の勝利を見込んでいたようだ。河野太郎行革担当相は改革イメージがあったほか、高市早苗前総務相はサナエノミクスという財政拡張型の路線があり、非常にわかりやすい買い材料があった。一方、岸田氏は良くも悪くもニュートラルな印象で、株高の材料はない。今までと変わらないとの見方から、菅政権退陣決定後の日経平均株価の上昇分は一部剥落するのではないか。

目先では金融政策も変わらないとみられ、債券市場への影響は乏しいだろう。長期的な視点でみれば、日銀への介入が緩和するとみている。黒田日銀総裁退任後の人事動向によって、マイナス金利政策の出口が意識されれば、債券市場への影響がでてくる。

今後は高市氏がどの要職に就くかは注目だが、岸田氏と政策路線は異なるところがあることから、財務相や経済産業相のポストに就く可能性は低いとみている。

●英語での海外発信力に期待

<マネックスグループ 社長 松本大氏>

岸田文雄氏は英語を話す。年齢も60代(64歳)と、菅義偉首相(72歳)から若返る。今回の総裁選の結果は日本市場にはポジティブ、いいきっかけになると思う。

安倍晋三元首相の時代には自ら海外行脚に出かけて大手機関投資家のトップとも積極的に話をしたりしてきたが、残念なことに菅首相はそういうことを一切してこなかった。

新内閣の顔ぶれは分からないが、岸田氏が首相になれば、海外投資家に対して英語での発信力も期待できるだろう。

日本はこの20年間、本当に色々なことが遅れてしまった。

新政権に対しては、遅すぎるということはないので、足の引っ張り合いなどをせず、ダイバーシティ(多様性)や適材適所を実現し、規制緩和にしっかり取り組むことを期待したい。

●ドルの小幅な上下動、期末要因が主因

<FXcoin 取締役 上田眞理人氏>

自民党総裁選の投票結果を受け、ドルは小幅なレンジで上下動した。

自民党総裁選が29日午後に行われ、1回目の投票では誰も過半数に届かず、河野太郎行革担当相と岸田文雄前政調会長による決選投票に持ち越され、決選投票では岸田氏が勝利した。

ドル/円が小幅に変動した理由が、総裁選の結果であるとは言い難い。

今週は9月期末の週。週初からポジション調整の売買が交錯している。輸出企業にとっては、ドルを年初来高値付近で売れる絶好のチャンスでもある。

事業計画の前提となっている想定為替レート(全企業、全産業)は、2021年度は106.71円(日銀短観2021年6月調査)。

岸田氏に期待するのは、安倍晋三前首相・麻生太郎財務相・二階俊博自民幹事長といった長老を遠ざけ、独自の政治信念に基づいて行動するということだ。このままでは誰が総裁になっても、長老が幅を利かせる政治から脱することができない。

ドル/円はドル金利の動きに揺さぶられている。米国の経済が上向いているのは確かなので、ドルが110円を割り込むようなイメージはない。112円台に目を向けながら、111円台をこなしていくと予想する。

●物足りなかった政策論争

<シティグループ証券 チーフエコノミスト 村嶋帰一氏>

自民党新総裁に選出された岸田文雄氏の政策は4候補の中で最もオーソドックスであり、自民党の王道とも言える。良く言えば、安定感があり政策の予測可能性が最も高い。その点ではマーケットにも安心感を与えるだろう。ただ、それは従来路線の踏襲に過ぎず、新しい政策は期待しにくいということにもなる。

今回、4候補からは改革という言葉がほとんど聞かれなかった。新型コロナ対策が最優先という現在の状況では仕方がないとも言えるが、財政や金融などマクロ政策の論戦も物足りなかった。その意味では、誰が新首相になっても当面の政策は大きな違いがなかったのかもしれない。

ただ、新政権で若い世代の4候補が中心になって自民党に新しい風を吹かせてくれるのではないかという期待もある。まずは幹事長などの人事に注目したい。

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