December 4, 2018 / 9:00 PM / 11 days ago

日米株価が下落、米景気と貿易摩擦への警戒で:識者はこうみる

[5日 ロイター] - 前日の米国株式市場が急反落し、主要指数が3%超下落して取引を終えたことで、日経平均も5日、2万2000円を割り込み、一時は300円を超える下げとなった。米国債利回りが逆イールド(長短逆転)となったことで景気への懸念が広がったほか、貿易摩擦を巡る不安も再燃した。

 12月4日、東京市場では、日経平均が続落。2万2000円を割り込み、一時は300円を超える下げとなった。前日の米国株式市場が急反落し、主要指数が3%超下落して取引を終えたことで、リスク回避ムードが高まった。ニューヨーク証券取引所で撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)

市場関係者のコメントは以下の通り。

●不況予想する市場心理、景気減速につながりかねず

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア投資ストラテジスト 服部隆夫氏>

2年―10年米国債利回りの格差は7ベーシスポイント(bp)台まで低下した。

戦後、米国では9回逆イールドが発生しているが、発生後6カ月─2年で景気後退に突入したとの分析結果がある。

ただ、足元ではまだ逆イールドにはなっておらず、米国経済は10―12月期も2%台後半の成長を遂げるとみられ、現状ではリセッションが予測できる状況ではない。

世界経済をみれば、米国の保護主義を背景に企業経営者のマインドが慎重化し、グローバルに設備投資が鈍化している。

こうした中で、金融市場が米国債のイールド形状を「不況の前触れ」と捉えていることによって、経営者心理が一段と冷え込む可能性があり、米経済や世界経済に減速圧力がかかるリスクがある。

実質インフレスワップでみた日米金利差は、11月初旬の106bpから足元では71bpまで低下してきている。こうした日米金利差の縮小は円高要因となり得る。

10―12月期の米10年国債利回りの予想値の下限は2.8%と想定している。

金融政策面では、パウエル議長とクラリダ副議長の最近の講演内容から、米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを従来の想定より落とすことを検討しているもようだ。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で公表されるフェデラルファンド(FF)金利のドットチャートに加え、潜在成長率を示す長期の経済成長率、潜在失業率にも注目したい。

●再びボラティリティー上昇へ、仕掛け的な売り警戒

<フェアラインパートナーズ代表 堀川秀樹氏>

米国では長短金利の逆転を景気減速のシグナルと位置づける投資家が多い。今週末には米雇用統計の発表も控えている。再び米VIX指数は20に乗せており、もうひと波乱がありそうだ。米国景気の減速を織り込む相場になれば、日経平均はPER(株価収益率)が12倍台だから大丈夫、との見方が信頼に値するかどうか微妙になる。

先週末に日経平均オプションは(プレミアムが非常に低い)ディープ・アウトのプット(売る権利)が買い戻されるなど、おかしな雰囲気があった。週明けはボラティリティーが一気に低下したが、それでも油断できない状況が続いていた。

来週は国内はSQ(特別清算指数)週となる。さらに日本株にはソフトバンク(9434.T)上場に伴う換金売りなど特殊な需給要因があり、仕掛け的な売りが見込まれるため、2万円プットが買いの対象となりやすい。

サンタクロース・ラリーがあるとしたらSQ通過後の9営業日だろう。日経平均は年末まで2万0500円から2万3000円程度のレンジで推移するとみている。ただ、米国株については大きなピークを付けた印象もある。米金利が上昇しにくい状況であることも考えると、年が明けてからドル/円は円高方向に振れるのではないか。国内の企業業績の来期以降の減益シナリオを織り込む相場となりそうだ。

●過剰反応、米景気後退入りの見方は行き過ぎ

<ソニーフィナンシャルホールディングス シニアエコノミスト 渡辺浩志氏>

景気後退のシグナルとみられている長短金利の逆転(逆イールド)が米国で発生し、市場のセンチメントが急速に冷え込んできた。今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げはあるにせよ、来年の利上げ回数の見通しが引き下げられるのではないかとの見方も強まっており、米長期金利は低下している。

ただ、米長期金利の低下の要因をみると、先行きに対する不透明感もあるが、欧州景気の減速を織り込んだ欧州勢が米国債を買いにきているという側面もある。中には米国が景気後退に入るのではないかと言い始めている人もいるが、米国の経済指標は依然として強く、われわれは景気の減速はあっても後退はしないとみている。今の大幅な株安は過剰反応ではないか。日経平均の年末までのレンジは2万1500─2万3000円とみている。

先週末の米中首脳会談で、米国による対中関税の引き上げが留保されることになったが、米中の問題は技術覇権をかけた長い戦いで、すぐに解決できるような話ではない。この先も投資家心理を圧迫し続けそうだが、保護主義による米国経済の減速はインフラ投資など財政政策などで補われることになるだろう。

●投機筋のカーブ平坦化取引、米景気とは無関係

<SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地慎氏>

今回の米国債市場におけるイールドカーブの平坦化は、投機筋による「カーブフラットニング取引」によってもたらされたものだとみている。

ヘッジファンドなどの投機筋は今年、商品取引や米財務省証券先物の売り持ちによって損失がかさんでおり、こうした負けを取り戻す必要に駆られている。

投機筋は、年末で流動性が低下し価格が変動しやすい今の金融市場をリカバリーショットの好機ととらえ、長期債を買って短期債を売却するカーブフラットニング・プレイと株売りを同時進行させているとみられる。

そして、これまでのところ、これらの戦略は奏功している。

市場では米景気腰折れ懸念で株安、米金利低下などという「まことしやか」な解説まで聞かれるが、投機筋の損失挽回と実体経済を混同すべきではない。

米国景気の基調は依然強く、米国の本格的な景気後退は来年になるだろう。

つまり、足元のカーブフラットニングと株売りは、実体経済からは乖離しているため、米長期金利にも米国株にも目先は戻り余地があるとみている。

為替市場では、米長期金利の低下にもかかわらず、ドル指数が高止まりしている。これはドイツをはじめ欧州の景気後退が背景にあるとみられる。対円では、金利差縮小という側面から円高圧力に結びつきそうだ。

●米中関係は単なる休戦、景気後退疑う見方も

<レイモンド・ジェームズ(フロリダ州)の首席エコノミスト、スコット・ブラウン氏>

(今回の米中首脳会談の結果について)多くの人は合意というより休戦と見ていて、単なる休戦のほかに何で合意したのかがあまりはっきりしない。

長短利回りの逆転について、米連邦準備理事会(FRB)が行き過ぎた政策を採ったのか、この先景気が後退するのかと人々が疑っている状況だ。

今年は良好な形で成長したが、ある時点で鈍化し、より持続可能なペースとなるだろう。

●ブレグジット、FRB発言、関税が重し

<ドイツ銀行ウェルス・マネジメントの首席株式トレーダー、デロレス・ルービン氏>

直近の大きな値動きは、その大部分がブレグジット(英国の欧州連合離脱)への反応だ。今日の売りは、関税に関する一連の発言を見て、問題が何も解決されていないことや、なお取り組むべき作業があり、前日に感じた高揚感が実体のあるものではなく大見出しのようなものだったと気付いたことが背景だ。

前週の米連邦準備理事会(FRB)当局者の発言の影響も続いている。多くの人はパウエル議長のコメントが利上げ鈍化を示唆したと受け止めている。今日はニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁が発言したが、来年のFRB政策について読み違いがあるのかもしれない。

ブレグジット、FRBの発言に加え、関税を巡る懸念も再浮上してきた。

●弱気地合いでリスク回避

<インフォーマ・ファイナンシャル・インテリジェンス(ネバダ州)の市場ストラテジスト、ライアン・ノーマン氏>

現時点で弱気の地合いだ。投資家が(米中)協議に関する情報を消化した途端、不透明感や情報不足に関心が向かう。

(利回り曲線を巡る)現在の状況は、投資家が対応する必要のあるさらなるマイナス材料だ。

リスク回避の展開で、貿易動向に敏感とされる銘柄が先に売られている。利回り曲線の平坦化に伴い金融株が売られている。平坦化で銀行の収益力に大きな影響が及ぶからだ。

現時点では、よりディフェンシブな相場展開となっている。

●FOMC前に2、10年債利回り逆転なら来年の利上げペース鈍化

<ナティクシス(ニューヨーク)の米州担当首席エコノミスト、ジョセフ・ラボーニャ氏>

まず成長が鈍化している可能性がある。欧州と日本発の指標が軟調だったことで、過去6─8週間はこれが市場のテーマだった。

次に、米連邦準備理事会(FRB)は金利を中立金利と考えられる水準を超えて引き上げる可能性がある。

この日のニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の発言は、前週のパウエルFRB議長の発言をリセットするようなものだった。一部で考えられているほどFRBはハト派化しない可能性がある。

こうしたFRBの事情に加え、経済が2019年は軟化するとの懸念が出ていることが、この日の相場に大きな重しとなったと考えられる。翌日は(ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領の死去を受けた「国民追悼の日」のため)市場は休場となり、売りを出すなら1日待つのは避けようとの心理も働いたのだろう。

長期的な視点で見れば、利回り曲線は逆転せざるを得ない。逆転は大方の予想よりも早い時期に起こるだろう。今から今月18日までの間に2年債利回りが10年債利回りを上回れば、FRBは来年の利上げを縮小せざるを得ないだろう。

*内容を追加しました。

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