July 10, 2019 / 7:02 PM / 2 months ago

FRB議長が議会証言、利下げへ地ならし:識者はこうみる

[10日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は10日、下院金融サービス委員会で証言し、貿易摩擦や世界経済の減速による米景気拡大への影響に対処するため「必要に応じ行動する」と述べた。今月末に開催する米連邦公開市場委員会(FOMC)で約10年ぶりとなる利下げ実施に向けた下地を整えた格好だ。

市場関係者のコメントは以下の通り。

<三井住友銀行のチーフストラテジスト、宇野大介氏>

パウエル議長は、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの多くが利下げの必要性が高まっていると判断していると述べ、「適切に行動する」として約10年ぶりの利下げに向けての地ならしをした。

年初の連邦市場委員会(FRB)のハト派急旋回の本質は、FRBがトランプ政権の政治圧力に屈したことだ。この本質を市場や一般人に悟られないために、FRBは政策転換を正当化する事由探しに忙しい。一方で、金融市場は見て見ぬふりを決め込んでいるもようだ。

パウエル議長は、足元では11年目となる景気拡大が続いているとした上で、物価の低迷や貿易摩擦で高まる不確実性などの様々なリスク要因を列挙した。

FOMCは5月の議事要旨では金融政策を将来調整する強い論拠はないと言い放っていたが、6月要旨では「かなり弱い設備投資」、「インフレ率のみならず期待インフレ率も弱まる可能性」、「通商問題」、「高水準の連邦債務」、「低所得者層の相対的停滞」などが経済見通しの重しになるのであれば、より緩和的な金融政策を実施する論拠が強まってきたとした。

今回も含めて、金融当局による主張の一貫性や景気と政策判断の整合性の欠如について、金融市場は特に気にとめる様子もない。

ドル/円相場は近視眼的な材料消化に終始してトレンドが出づらく、官製相場となった世界の株式市場では、下がったら値ごろ感からの買いがデフォルト化する有様だ。

米国の利下げが実施されればドル相場は初動ではドル売りに傾くだろうが、どの国も金融緩和指向がある中、ドル売りの程度は限定的なものにとどまるだろう。

政治から独立しているはずの中央銀行の中立性が侵されたケースを目の当たりにつつ、金融市場はその信認を問わない思考回路となっている。金融市場が日替わりメニューに場当たり的な反応を繰り返すものへと構造変化した形跡がうかがえる。

<シティグループ証券のG10金利ストラテジスト、藤木智久氏>

市場の利下げ予想を追認する内容になった。7月は25bpの米利下げがメインシナリオだ。現在、市場が織り込んでいるコンセンサスは年内50bpの利下げ。これを超える大幅な金融緩和の可能性があるのかどうか、7月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)での投票数などから見極めることになる。

<大和証券の金融市場調査部債券調査課チーフ為替ストラテジスト、今泉光雄氏>

速報記事の見出しには「不確実性」との言葉が踊り、一見ハト派的だったものの、議長は上期経済の底堅さなどにも言及した。7月の利下げは確実だろうが、市場が一部織り込んでいる0.5%の下げはないだろう。

<第一生命経済研究所の主任エコノミスト、藤代宏一氏>

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言で、既定通り7月の25ベーシスポイント(bp)利下げが確定的になったとみている。為替は若干円高だが、直近のレンジを突破したわけではない。日米金利差とドル/円の相関はやや長い目でみると疑わしい。日本株への影響としては、目先の円高によるネガティブな面よりも米国株市場でのリスクオン継続の方が大きいだろう。

次の焦点は今月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、追加利下げについてどう示唆するかだ。いったん25ベーシスの利下げを行った後、追加利下げが示唆されれば金融相場的な環境となり、日本株にも追い風となる。

<クレセット・キャピタルマネジメント(シカゴ)の最高投資責任者(CIO)、ジャック・アブリン氏>

フェデラルファンド(FF)金利先物は連邦準備理事会(FRB)が利下げを決定する確率は100%であることを示している。FRBは今月末の会合で利下げを決定する公算が大きい。ただ向こう1年間で1%ポイントの利下げが実施されるかどうかはまだ分からない。

パウエル議長は7月の利下げに向け地合いを整えた。

<ナショナル・セキュリティーズ(ニューヨーク)の首席市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏>

6月の雇用指標は5月より良い内容で、主な懸念事項は労働市場でない。第2・四半期の成長が控えめになる中、米連邦準備理事会(FRB)が1つの指標のみを注視しているわけでない。これらのことからFRBが緩和姿勢を取っているようにも感じられるのは確かだ。

ただ、FRBは現在から月末の会合までに数多くの情報を入手することになる。今週はインフレ指標、向こう数週間中に住宅市場指標、企業決算も出てくる。これらすべてがFRBの次の動きに影響する。

<レノックス・ウエルスアドバイザーズ(ニューヨーク)の最高投資責任者(CIO)、デビッド・カーター氏>

経済は底堅く推移しているように見えるが、利下げ圧力は高まっており、連邦準備理事会(FRB)は難しい立場に置かれている。

国外では経済成長を巡る不確実性が継続しており、通商を巡る懸念も払拭されていない。こうしたことだけでも、保険的な意味合いでの利下げの論拠となる可能性はある。

インフレ率が引き続き抑制されている限り、パウエル議長には利下げ余地がある。市場が25ベーシスポイント(bp)の利下げで満足するのか、50bpの利下げを予期しているのかは分からない。いずれにしても、今月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが決定されると確信している。

大統領が自身の見解を明白に表明している点で、パウエル議長はこれまでみられなかった状況に置かれている。

<インディペンデント・アドバイザー・アライアンスの最高投資責任者、クリス・ザッカレリ氏>

パウエル議長は、「保険」としての利下げが重要であるとの根拠を明確にした。雇用統計は底堅い内容だったが、7月に利下げが実施される公算は増したようにみられる。

企業の設備投資が著しく減速したことに言及した。住宅への投資、製造業活動も第2・四半期に減速したもようだ。つまり、保険としての利下げが必要である根拠が企業の投資環境の悪化にあると論証している。証言の大半は緩和に偏っており、極めてハト派的だ。

FRBの独立性についても強調した。利下げの根拠について大統領が公言しているためではなく、事業環境が悪化しているためであると引き続き明示したい考えだ。

<バークレイズのグローバル物価連動リサーチ部門責任者、マイケル・ポンド氏>

 7月10日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は下院金融サービス委員会で証言し、貿易摩擦や世界経済の減速による米景気拡大への影響に対処するため「必要に応じ行動する」と述べた(2019年 ロイター/ERIN SCOTT)

パウエル議長が議会証言で「不確実性が継続する」と述べた点が注目され、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での25ベーシスポイント(bp)利下げには、今後の経済指標ではなく不確実性のみで十分との見方が広がった。これにより、米国債のイールドカーブはややブルスティープ化し、株価は反発した。オーバーナイトの原油先物高も追い風だ。

議会証言を受け、市場は米連邦準備理事会(FRB)が保険としての利下げに動くとの見方を強めている。経済が悪化している中で利下げすれば、成長鈍化を相殺するためとなるが、経済が堅調な中で利下げすれば、市場は保険としての利下げと捉え、リスク資産の押し上げにつながるだろう。

*内容を追加しました。

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