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米FRB、現行ペースの債券購入継続を明言:識者はこうみる

[10日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は9─10日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0─0.25%に据え置くことを決定した。ただ異例の経済支援を継続すると改めて表明。国内総生産(GDP)は今年6.5%縮小するとしたほか、失業率は年末時点で9.3%になるとの見通しを示した。

米連邦準備理事会(FRB)は9─10日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0─0.25%に据え置くことを決定した。3月撮影(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)

市場関係者のコメントは以下の通り。

●着実に「日銀化」の道を歩むFRB

<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は10日、連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、中小企業向けの「メインストリート融資制度(MSLP)」について、企業が利用するのに遅過ぎることはないと述べた。

これに先立つ8日、FRBはMSLPの条件を緩和し、融資の最低額引き下げや融資期間の延長を決め、より多くの企業が利用できるようにしている。

こうした措置や議長の発言は、大規模な量的緩和を通じて供給されたマネーが、家計や企業など向かってほしい場所に十分に回らず、または回ったとしても、設備投資など生産性向上につながる投資に結び付いていないことの裏返しだろう。

緩和マネーが、主にリスク資産を目指して流れる現象は、外為市場でも観察される。

ドル指数は現在3カ月ぶりの安値圏まで低下しているが、ドル安の背景には、ブラジルレアルなどの通貨や新興国の債券市場に向かってマネーが流れ込んでいることがある。

FRBは、緩和マネーが株や新興国通貨などのリスク資産に偏在し、無防備なリスクテークが行われているという認識を持ち、ジレンマに陥っているはずだ。

こうしたジレンマの先には、緩和の強化やイールドカーブ・コントロール(YCC)、そしてマイナス金利が待ち構えていることは、日銀で既に実証済みである。

FRBは日銀と同じわだちを踏むことになるだろう。

今回、パウエル議長はYCCについて議論があったことは認めたが、具体的な決定はなかった。短期金融市場でドルLIBORの低下が続いていることから判断して、今のところ、レポ取引や資産買い入れプログラムを通じて、アンカー役の短期金利の制御はできているので、YCCを急ぐ理由はない。

次回以降のFOMCでもその必要性が議論される予定で、カードは温存された。

●操作目標5年なら長期金利低下、ドル105円も

<シティグループ証券チーフFXストラテジスト 高島修氏>

パウエルFRB議長は、まだ結論が出ていないとしながらも、YCC(イールドカーブ・コントロール)の議論が進んでいることを示唆した。米市場では、9月に3─5年金利をターゲットに導入、との見方が強まっている。

日銀は10年、豪中銀は3年と金利の操作目標が中銀によって異なっているが、FRBが5年をターゲットとした場合、米長期金利はもう幾分の低下余地があるとみている。

市場では対ユーロを中心にドルが続落した。リスク選好姿勢の回復が小休止する中、ドル安は対円にも波及し始めた。当面の下値目途は5月安値の106円前後。今後数週間では105.20円前後への下振れも警戒すべきだろう。

NY連銀は、当面の資産買い入れは米国債800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)400億ドルで、月間1200億ドル程度になると説明している。日本円換算で年間155兆円ほどとなり、経済規模比ではおおむね、日米の量的緩和は拮抗している。

●米金利は当面小幅レンジ、ボラ低下は円債サポート

<アセットマネジメントOne 運用本部 ファンドマネージャー 吉野剛仁氏>

今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定はおおむね市場予想と一致した内容だった。米連邦準備理事会(FRB)が2022年末まで金利を据え置くことを明確に示したこともあり、量的緩和(QE)やドル資金供給オペの段階的な縮小を市場に織り込ませるタイミングまで、今後FOMC自体がリスクイベントになりづらいとみている。

国債買い入れや3月以降に設定されたファシリティ―により、過度な金利上昇は抑制されているものの、政策としては打つべき手をすべて出しており、現状はその効果を見極めるフェーズにきている。FRBによる利下げや国債購入のさらなる加速は現状では考えにくいことから、金利を低下させるドライバーにもなりにくい。当面、金利は上昇もしなければ、大きく低下もしないだろう。

円債市場にとってはサポート材料だ。市場のボラティリティーが低下するともに、ベア・スティープ化もいったん落ち着く。ただ、それが継続するかどうかは、国債が増発される7月以降の消化状況によるだろう。

●YCCは現時点では尚早、年内に導入

<TDセキュリティーズ(ニューヨーク)の世界金利戦略部門責任者、プリヤ・ミスラ氏>

おおむね予想通りだった。具体的なフォワードガイダンスを発するのは時期尚早と考えていたが、実際、フォワードガイダンスに関する言及は特に何もなかった。

量的緩和(QE)については、ペースの変更は決定しなかった。これについては柔軟性はまだ極めて高い。

一部ではイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)への期待が出ていたが、今回は何もなかった。これも時期尚早だと考えている。YCCは新しい政策手段で、不確実性は極めて高い。ただ年内には導入に踏み切ると予想している。

●ゼロ金利3年程度継続、当面は支援維持

<トゥルーイスト/サントラスト・アドバイザリーサービシズ(アトランタ)の米国マクロストラテジスト、マイケル・スコーデレス氏>

金利見通しで、2022年まで金利を据え置く姿勢が示された。当局者の金利見通しを示す「ドットプロット」では、2人が22年の利上げを見込んでいる。ただそれでも、ゼロ金利政策は少なくとも3年程度は継続される計算になる。

前週5日に発表された5月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比250万9000人増加した。

これを受け、最悪期は脱したため、追加的な財政支援策はもうないとの見方が台頭した。FRBの金融政策についても、それほど長くゼロ金利政策は必要ないとの見方も出た。

これは正しくない。経済はそれほど速いペースで完全に回復はしない。株式市場の観点からすれば、景気支援の「パンチボウル」が片付けられることはない。

●YCCの完全な意味合いを考察中か

<ノースイースト・インベスターズ・トラスト(ボストン)の会長兼ポートフォリオマネジャー、ブルース・モンラッド氏>

金利などに関しては予想通りだった。イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)については選択肢として残しながらも、それ以上踏み込まなかった。おそらくその完全な意味合いを考察しているのだろう。通常、連邦準備理事会(FRB)の仕事は経済予測であり、その点で多くの仕事をこなしているが、YYCやフォワードガイダンスの一部は将来のことであり、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)とも関係するので、自らに縛りをかけたいのかもしれない。

FRBは長期的な中立金利の見通しも据え置いた。低金利を維持しつつ、それが将来的には効果を発揮し、金利が中立水準に到達するというメッセージだろう。

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