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米FRB、インフレ率2%超えを一時的に容認:識者はこうみる

[27日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は27日、世界的に雇用と物価の下方リスクが高まっている中で、米国の完全雇用を復活させ、物価を健全な水準に戻すための積極的な新戦略を発表した。インフレ率が「一時的に」2%を上回ることを容認し、長期的に平均2%の目標達成を目指すほか、雇用最大の確保を図る。

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は27日、世界的に雇用と物価の下方リスクが高まっている中で、米国の完全雇用を復活させ、物価を健全な水準に戻すための積極的な新戦略を発表した。インフレ率が「一時的に」2%を上回ることを容認し、長期的に平均2%の目標達成を目指すほか、雇用最大の確保を図る。ワシントンのFRB本部で昨年3月撮影(2020年 ロイター/Leah Millis)

市場関係者のコメントは以下の通り。

●米経済に好影響、当面はドル堅調

<バークレイズ証券チーフ為替ストラテジスト 門田真一郎氏>

パウエルFRB議長が新たな要素として提示したのは、1)堅調な労働市場はインフレを引き起こすことなく持続させることが可能、2)長期的なインフレ目標達成には長期の期待インフレ率をつなぎ止めることが重要なため、一定期間で平均2%の達成を目指す柔軟な平均インフレ目標を導入する、だった。

平均インフレ目標の定量的な平均値算出方法は提示されなかったが、コアPCEデフレーターの過去5年平均が1.6%にとどまっていることに鑑みれば、2.5%程度のインフレを一定期間、容認する政策だと考えられる。

今回の政策変更がドル相場に与える影響は両面的だ。低金利政策の一段の長期化見通しは短期金利の重しとなって売り圧力となるが、長期的には米経済にポジティブな影響を与えるため、長期金利の上昇を通じて買い要因にもなる。

前者は市場ですでにある程度織り込まれていたため、発表後は後者が表面化する形でドル高が進んだ。最近の米経済指標の良好ぶりを考慮しても、ドルは当面サポートされやすい。テクニカル的には対円で107─108円付近が当面の上値めどとなるだろう。ただ、大統領選などの不透明要因には留意したい。

●ポジティブ、保険・輸出関連に追い風

<みずほ証券・エクイティ調査部 チーフエコノミスト 小林俊介氏>

全体として景気・物価をオーバーシュートさせることを目的に、金融緩和を当面持続させることを従来以上に強くコミットする格好となった。米国の金融市場には「5年債金利の低下と、5年先5年物金利の上昇」の要因になるとみられ、調達コストが低下し、運用金利が上昇するため、為替にはドル買い圧力となりそうだ。

日本株に対してはポジティブ。セクター別では、保険や輸出関連への追い風となるだろう。保険は運用金利の上昇、輸出関連も為替のドル高/円安がそれぞれ好感されそうだ。

先週あたりからバリュー株や景気敏感株のリバーサルが起きている。新型コロナ第2波の収束、ジャクソンホールと米国の追加財政への期待、新型コロナワクチンの実現可能性などが背景とみられるが、これらのカタリストはだいぶ織り込まれてしまった。それを踏まえると、9月中旬頃からは再びグロース株やディフェンシブ株を中心としたモメンタム相場に戻る可能性がある。

●金融緩和の「泥沼化」、手段手詰まりに

<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

米連邦準備理事会(FRB)は27日、「長期的に平均で2%のインフレ率の達成を目指す」とし、インフレ率が持続的に2%を下回り続けた後のしばらくの間(for some time)、2%を緩やかに(moderately)超えるインフレ率の達成を目指す金融政策運営が適切との見解を示した。

6月10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示されたメンバーによるインフレ見通しでは、2022年末に前年比プラス1.7%が予想されている。

今回の指針変更を踏まえれば、インフレ見通しは2%に未達であるため、2023年、2024年といった時限までゼロ金利政策が担保されることになる。

これは金融緩和の「泥沼化」とも言える。3年後の米国は、日銀と同様に追加緩和手段の面で「手詰まり感」にさいなまれることになるだろう。

金融政策の枠組み変更の背景に関しては、新型コロナによって悪化した中低所得層の雇用の改善を目指すという建付けになっている。

しかし、FRBは2014年頃から景気回復局面でもインフレ率が伸びないことに気付き、新たな指針を模索し始めており、足元の労働市場の悪化は変更のきっかけを作ったに過ぎない。

前日は指針の変更を受けて、米長期金利が上昇しドルが買われているが、今回の内容を市場が徐々に消化するにつれ、金利低下、ドル売りの方向に調整していくだろう。

●超緩和政策の解除、当面ないとの観測確認

<OANDAのシニア市場アナリスト、エドワード・モヤ氏>

インフレ率が一時的に2%を上回ることを容認するというパウエルFRB議長のコメントを受けて、株価は上昇し、金もプラスに転じた。この異例な水準の緩和が近く解除されることはないという市場の観測を確認し、リスク資産は好感している。

一方、他の主要中銀全てが刺激策の解除を始め、引き締めの兆候が示される中、FRBの動きは遅行している。金利格差はドルにとって有利でなく、ドルへの長期的に弱気な見通しとなる。

●流動性供給の継続確認

<BMOグローバル・アセット・マネジメント(シカゴ)のマネジングディレクター、エルネスト・ラモス氏>

最近の市場は全てFRBがもたらす流動性への期待で動いており、この日は特にそれが顕著に表れた。パウエル議長は引き続き市場に流動性を供給すると確認し、これが株高を誘った。

市場がパウエル氏の発言に注目しているのは、相場がファンダメンタルズではなくFRBの言動によって動いているからに他ならない。こうした現象は過去にも見られるが、通常はうまく行った試しがない。

流動性主体の市場では、人々はファンダメンタルズや成長の根本的な柱に基づいて株を買ったりしない。したがって流動性が奪われるか、あるいは奪われると予想されれば、バブルのように相場は崩壊するだろう。

●2%超のインフレ許容は市場に有益

<ウィルミントン・トラストのチーフエコノミスト、ルーク・ティリー氏>

個人的な見解だが、インフレ率が目標を下回る期間が続いた後、一定期間目標を上回って推移することを許容するという考えは、2012年から常にあった。そのため、今回の発表ではFRBの長期目標や運用方針が大幅に変更されたわけではなく、対話手法が大きく変化したとみている。

インフレ率は非常に長期にわたり低すぎる水準で推移していたため、2%超のインフレ率許容は市場に有益だ。インフレ率が上昇し始めると債券市場を中心に利上げ懸念が広がりやすいが、2%超のインフレ率が許容されたことでFRBのインフレ率に対する非常にタカ派的な姿勢が示され、そういう状況に反する形になった。

●物価押し上げ策明示なし、成功に疑問

<コーナーストーン・マクロ(ワシントン)のパートナー兼グローバルポリシーリサーチ責任者、ロベルト・ペルリ氏>

具体的にどのように物価を押し上げていくのか、方法が明示されていない。長期目標に関する声明には、あらゆる手段を行使するとの記述があるだけだ。

FRBが利用する手段は古い手段にとどまる公算が大きく、こうした古い手段はこれまでのところ物価押し上げにあまり効果がなかった。今回も成功すると言えるだろうか。

●平均インフレ期間や政策手段明確にせず

<クワドラティック・キャピタル・マネジメントの最高投資責任者、ナンシー・デイビス氏>

平均インフレ率の期間を明確にしなかったことは注目に値する。インフレ期待が過度に上昇すればFRBには行動する用意があり、インフレが中期的にオーバーシュートする余地を与えている。

実際に講じる政策手段の詳細も明確にしていない。マイナス金利やイールドカーブ・コントロールを導入するのか、追加の債券購入を実施するのか、何ら言及はなかった。

2%超のインフレ許容は金利上昇の可能性を低下させ、短期的にはプラスの効果があるだろう。この戦略の影響を巡り、市場では消化にしばらく時間がかかる可能性があるが、2%超のインフレ許容への意欲が強いほど長期債は圧迫され、インフレ期待は上昇するだろう。

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