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インタビュー:人民元がアジアで支配的になるには20年かかる=榊原英資氏

[東京 30日 ロイター] - 青山学院大学教授の榊原英資元財務官は、中国の人民元の国際化が今後進むとしながらも、アジアで支配的な通貨になるには20年はかかるとの見方を示した。

 4月30日、青山学院大学教授の榊原英資元財務官は、中国の人民元の国際化が今後進むとしながらも、アジアで支配的な通貨になるには20年はかかるとの見方を示した。写真は、人民元紙幣、2011年1月撮影(2015年 ロイター/Carlos Barria)

金融規制や中央銀行の独立性確保が必要だと述べた。一方、日本の円の相対的な地位が低下したとしても、人民元が国際通貨になれば売買は自由になるので、日本企業にとって実務上のデメリットは小さいとも話した。ロイターのインタビューで語った。

主な内容は以下の通り。  

──国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に人民元を採用することをめぐる議論が活発化している。採用される可能性をどう見るか。

「自由に取引できる通貨でないと難しいだろう。ただ、GDPで言えば中国はもう世界でナンバー2となったし、いずれ米国を抜く可能性もある。これらのバランスをどう取るかがポイントだろう」

──仮に人民元がSDRに採用された場合、日本企業や金融界になんらかの影響は出るのか。

「象徴的な出来事にすぎず、そのことによる影響は、ほとんどないだろう」

──人民元の国際化が進むことで、日本円のあり方への影響はあるか。

「中国はすでにGDPで日本を上回っている上、その通貨である人民元がアジアの共通通貨になると、中国の力は強大になる。円は相対的な地位が低下するだろう」

「ただ、そのことによって被るデメリットは限定的だろう。アジアでの人民元の利用がある程度ドルから替わっても、国際通貨なら売買の自由は確保される理屈なので、日本企業は実務上の心配はないはずだ」

「そもそも円は、取引が自由な割には国際通貨になっていない。例えば東南アジアに行って円が使えるかといえば使えない。欧州でのユーロのように、アジアでの主要通貨になっているわけではない」

「アジアで最も使用されている通貨はドルのため、人民元にシェアを奪われれば、米国にとって何らかのデメリットが生じるおそれはある」

──仮に人民元が先行き、欧州でのユーロのようにアジア域内で使われるようになるとすれば、どのような時間軸で捉えればいいか。

「元がアジアで支配的になるとしても、随分先の話だろう。3─4年や5─6年という話でなく、20─30年スパンの話だ」

「国際通貨にするためには、国内の金融規制が撤廃されないといけない。また人民銀行は政府からの独立性が確保されないといけない。先進国と同じように非常に透明な金融政策にする必要がある」

「政府の意図でどうにでも変動するような通貨は危う過ぎる。自由な市場が必要だが、国有銀行を含めて自由化するにはおそらく20年ぐらいはかかるだろう。本格的に自由化されるかどうかもわからないため、本当に元が国際通貨になるかは、現時点では不透明といえる」

──中国が打ち出したAIIB構想の動きをどのように捉えているか。

「中国が主導して地域の国際金融機関をつくろうという動きが出るのは、何も不思議ではない。アジアにおける国際金融機関といえばアジア開発銀行(ADB)で、歴代総裁や主要な幹部ポストは日本が人材を送っている。シェアも日米が16%程度ずつで、主導権を握っている。中国のシェアは3番目だが、日米の半分以下で当然、思い通りに行かないとの思いを持っているだろうし、ならば自分でつくろうということになる」

──日本は米国とともに創設メンバーとしてに参加を見送った。この判断をどう見るか。

「現時点では、AIIBが本格的な国際金融機関になっていくかどうか、シェアと意思決定の面で不透明と言わざるを得ない。最初から入る必要はなく、本格的な国際金融機関になった時に入ればいいというのが日本政府の判断だろうし、それでいいのではないか」

「他の国際金融機関を見れば、シェアは最も大きい国で12─16%程度だが、AIIBでは中国のシェアを半分までとしており、中国一国の支配力が強まりやすい」

「本格的な国際金融機関では、例えばIMFや世界銀行ならワシントンDC、ADBならマニラに常設の理事会があり、そこで意思決定している。ただ、AIIBでは、理事会こそ設けるようだが常設ではなさそうだ。本格的な理事会として機能するかどうかわからず、総裁の独裁になる可能性もある」

「純粋に中国の機関になるなら二国間援助と変わらず、中国としても国際金融機関を設けるメリットはあるため、そういう方向に向かう可能性はある。ただ、中国が完全に支配する機関になるようなら、日本は入る必要はない」

──創設メンバーにならないことによるデメリットはないか。

「ほかの国際的な金融機関を見ても、創設メンバーが特別な権利をもっているということは通常はない。シェアで権利は概ね決まる。参加する時期が後でも、シェア相応の権利がある。国際的な金融機関なら、創設メンバーだから優遇する、というようなことはないだろうし、あってはいけない」

「組織の中に入って注文をつけるストラテジーはもちろんある。欧州はそれを選んだ。日米のように、外にいるのももうひとつのストラテジーだ。外にいれば参加を促されるのだから、こういう条件が満たされれば入る、という交渉になる」

「中国としても、GDPで世界ナンバー1とナンバー3の国が入らないとなると、国際金融機関としては、ちょっと具合が悪い。中国は入ってくれと言い続けるだろうから、本格的な国際的な金融機関になるかどうかしっかり見極めればいい」

*インタビューは24日に行いました。

平田紀之

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