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インタビュー:ドル120円超の可能性、介入・金利調整は効果少ない=渡辺元財務官

[東京 17日 ロイター] - 元財務官の渡辺博史・国際通貨研究所理事長は17日、ロイターのインタビューで、ドル/円相場は今後120円を超える可能性があるが、その後も大きく円安が進む可能性は少なく、130円、140円となることはないと語った。円高誘導のための為替介入や日銀の金利調整はあまり効果がなく、政策対応はなくても落ち着いていくとの見方を示した。米利上げについては、世界経済の減速でペースが緩やかになる可能性を指摘した。

 3月17日、元財務官の渡辺博史・国際通貨研究所理事長は、ドル/円相場は今後120円を超える可能性があるが、その後も大きく円安が進む可能性は少なく、130円、140円となることはないと語った。写真は2013年4月、都内で撮影(2022年 ロイター/Toru Hanai)

渡辺氏は、ドル/円のレンジについて「昨年は113円程度が中央値だったが、いまは5円程度円安に動いている」とし、「一度120円はつけるだろう」との見通しを示した。

その上で「原油先物価格もバレル120ドル超えまで上昇したが、ロシア産原油の世界シェアなどを市場が冷静に考慮しはじめると100ドルまで落ち着いた。(市場の)オーバーシュート(急激な動き)は長続きしない」と指摘。為替市場も「ドルが120円を超えてどんどん円安が進み、130円、140円になることはない」と述べた。

円安進行の背景にある米利上げに関し、16日の連邦公開市場操作委員会(FOMC)で年7回の利上げの可能性が示されているが、「経済は生き物なので中央銀行が7回利上げすると言う必要はない」と指摘、新興国など世界経済に対する米国利上げの影響などを考慮し、柔軟に調整するとの見通しを示した。

<介入、金利調整より経常収支安定化策>

政府・与党の政策については、相対的に大企業よりも中小企業の声が大きくなっており、「円安で困るという声が政治家に届くようになってきた」との認識を示した。

渡辺氏は、ウクライナ情勢を念頭に「何が起こるかわからないときにわざわざ(金融緩和の)方向を変える必要ないというのが日銀の判断」と説明。「いまでもトータルでは円安の方が日本の産業には意味があると言っているが、石油の値段が本当に上がってきても、言い続けることができるかどうかが日銀の最後の正念場」との見解を示した。

ただ、円高誘導の為替介入は「効果が2-3日しか持たず意味がない」とし、日銀が長期金利目標を引き上げることで日米金利差を縮小させることについては「為替にインパクトがあるほど政策をいじるのは難しい」と指摘。「何もしない方がよい」と語った。

同時に「経常収支の赤字が増え続けるのは良いことでない」と述べ、「モノづくりで、途上国よりも温暖化ガスの排出量が少ない点などで世界をリードすべき」と強調、産業競争力強化で経常収支の安定化を図ることが望ましいとの考えを示した。

日銀の政策運営に関しては、新型コロナからの回復で景気刺激とともに物価上昇への対応が必要となっているため「世界の中央銀行が迷っている」との認識を示した上で、残りの任期が1年を切った黒田東彦総裁について「彼の論理で良い」と語った。

(竹本能文、木原麗花 編集:石田仁志)

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