February 9, 2015 / 4:42 AM / 5 years ago

インタビュー:ユーロ圏、衝突繰り返し発展=みずほR&C理事長

[東京 9日 ロイター] - みずほ証券リサーチ&コンサルティングの吉國眞一理事長は、ユーロ危機の本源は、ゲルマン系諸国とラテン系諸国という文化圏を異にする諸国間の路線対立にあるとしたうえで、ユーロ圏は繰り返し危機を迎えながらも、その対応を通じて、統合が新たなステージに発展するとの見方を示した。

 2月6日、みずほ証券リサーチ&コンサルティングの吉國眞一理事長は、ユーロ圏は繰り返し危機を迎えながらも、その対応を通じて、統合が新たなステージに発展するとの見方を示した。ベルリンで2日撮影(2015年 ロイター/Fabrizio Bensch)

6日に行ったロイターとのインタビューで述べた。

<激突するドイツとギリシャ>

ユーロ圏では、ギリシャとドイツの対立の構図が鮮明になり、金融市場では、ギリシャのユーロ離脱リスクの高まりが再び意識されている。

ドイツのショイブレ財務相とギリシャのバルファキス財務相は5日に会談したが、債務再交渉や緊縮政策の見直しめぐり、意見のすれ違いが目立った。ショイブレ財務相が「合意しないことで合意した」と述べると、バルファキス財務相が「合意しないことを合意しなかった」と切り返す場面もあった。

ギリシャの新政権は、ユーロ圏から受けた金融支援に伴う債務を、同国の国内総生産(GDP)に連動した利率の債務に切り替える成長連動債を発案している。吉國理事長は、このようなリスク・シェアリングは、単なる左派的な発想ではないとし「バルファキス財務相は、左派ではあるが、自由主義者の側面も持っているようだ」との見方を示した。

ギリシャは11日に開かれるユーロ圏財務相会合で、債務や改革に関する新たな包括的計画を提示する予定。

一方、緊縮財政政策を永遠に終わらせると表明するギリシャのチプラス首相は、極左でありながら、実は現実的な人物であるとの見方もある。

吉國理事長によれば、ギリシャにとって現実的な路線とは、公務員制度改革や富裕層の税逃れ阻止などを通じた格差是正であるが、他方、財政黒字を計上しているドイツは、あまりにも厳格な態度をあらためることが肝心だと指摘する。

欧州では、フランスのミッテラン大領領が率いた社会党政権やドイツのシュレーダー前首相が首班となった中道左派政権のように、左派でありながら、厳しい改革を実施してきた例もある。 

<危機の裏にゲルマンとラテンの対立>

今回のドイツとギリシャの対立でみられるように、ユーロ危機の本源は、ドイツ、オランダを中心とするゲルマン系諸国と、フランス、イタリアに代表されるラテン系諸国という文化圏を異にする諸国間の路線対立にある、と吉國理事長は分析する。

通貨統合は本来「同床異夢」のプロジェクトだったが、ユーロを導入することで、ラテン系諸国はドイツ流の厳格な規律に従わざるを得なくなり、この同床異夢が解消されるはずだった。

しかし、ユーロ導入後にユーロ圏全体に対する信頼が高まり、金利が低下したことで、ラテン系諸国では財政規律(ディシプリン)が大幅に後退した。 

そのてん末として2010年以降のユーロ危機が発生したが、危機を契機に、新財政協定が結ばれ、欧州安定機構(EMS)も創設され、ユーロ圏を横断する金融規制が進むなど、統合は新たなステージに進んでいる。

ユーロは「シシュポスの神話」のごとく、山頂に岩を運び上げた瞬間に岩が転がり落ちてしまうことを繰り返しているが「岩の落下点はそのたびに、起点より高い位置に移動している」と吉國理事長はみている。

今後もそうなる保証はないものの、ギリシャが現実路線を踏襲するならば、ユーロ圏の統合は強まるとし、同氏は「慎重な楽観主義」の考え方を表明した。

<重要な政治の機能>

金融界では、ユーロ導入前と導入後の持続可能性の判断にあたって「最適通貨圏」の理論がしばしば活用されてきた。

同理論は、ある地域が単一通貨を導入することができるかどうかを経済的に判断するための考え方で、その基準として、域内諸国間の産業構造の類似性、経済の開放度、域内貿易依存度の高さ、生産要素価格の伸縮性、生産要素の移動性の高さなどがある。

しかし欧州統合は、経済のみならず、政治や安全保障上の問題でもあり、ギリシャ問題を最適通貨圏論で十分に説明することは困難であると、吉國氏はみている。

「ユーロ圏では、政治がまず先にある。欧州の政治家の強い意志が基盤にあり」、政治指導者と官僚が「危機を乗り越える処方せんを書く能力があると確信している」と言う。

欧州統合の父として知られるジャン・モネは「統合欧州は、繰り返し到来する危機への対応の集積として形成されるものである」と述べている。

<ECBの量的緩和は気付け薬>

米国、日本に次いで欧州中央銀行(ECB)が導入した量的緩和について、量的緩和は、経済成長が潜在成長率から下ブレている時に、それを潜在成長率まで押し上げることで「気付け薬」のような一時的な効果を発揮すると吉國氏は述べた。

この「気付け薬」が効果を発揮し、金融緩和で時間稼ぎをする間に、思い切った構造改革を実施し、より強い経済へ歩み出せればよいが、金融緩和がかえって構造改革のディシプリンを弱めることにつながる場合もあると、吉國理事長は指摘した。

森佳子 編集:田巻一彦

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