July 15, 2014 / 6:52 AM / 5 years ago

インタビュー:イラク情勢で東京原油市場に投機=石油情報センター

[東京 15日 ロイター] - 石油情報センター(東京都中央区)の事務局長、浜林郁郎氏はロイターとのインタビューで、ドバイ原油を主に扱う東京の原油市場で投機マネーの流入が顕著に表れていると述べた。イラク問題に関する報道が東京において過熱し、欧米に比べ敏感に反応する投資家が多かったという。

 7月15日、石油情報センターの事務局長、浜林郁郎氏は、イラク情勢で東京原油市場に投機マネーの流入が顕著に表れていると述べた。イラクのクルド人自治区で14日撮影(2014年 ロイター)

7月に入り原油価格はいったん落ち着きを取り戻しているが、イラク分断の可能性もあり、長期的な懸念は続くとの見解を示した。

主な一問一答は以下の通り。

──6月中旬にかけて原油価格が大幅に上昇した。

「きっかけは6月10日にイラクのスンニ派武装組織『イラクとシリアのイスラム国(ISIS)』が北部のモスルを陥落して、首都バグダッドに向けて南下し始めたことだ。イラクの原油生産に影響が出るとの不安が高まり、その1週間後ぐらいに原油価格が高値を付けた」

──特にドバイ原油の上昇が顕著だ。

「今回のイラク問題を受けて、最も敏感に反応したのは東京市場だ。米WTIとドバイ原油との差でみると、5月下旬に2─3ドル程度だったものが、6月中旬には5ドル以上に拡大した。東京でのイラク情勢に関する報道がやや過熱気味だったこともあり、投機マネーがドバイ原油を押し上げたとみている」

「加えてファンダメンタルズで言えばドバイ原油は(WTIや北海ブレントに比べて)中東情勢の影響を受けやすい。ペルシャ湾がインド洋につながっているので、中東情勢がアジア市場に影響を与える度合いは大きくなる」

──7月に入って原油価格の上昇が落ち着き始めた。

「ISISの活動がバグダッドよりやや北側のイラク中部にとどまり、クルド族が支配している北部や、イラク最大の産油地区である南部にISISの影響が出ていないためだ。ISISはバグダッドを乗り越えないと南部に到達せず、短期的には石油の生産にそれほど大きく影響しないとの見方が広がっている」

「また反政府勢力の影響で、原油の生産量が半分程度に落ちていたリビアが、足元で回復しつつあることも原油価格の下落に寄与している」

──このまま原油価格は軟化するのか。

「イラク情勢に関し、短期的には影響は乏しいとみているが、長期的にはイラク中部をスンニ派を中心とする過激派が押さえ、北部をクルド族、南部を現政権であるシーア派が占めるというように3つに分断される可能性はある。そうするとしこりが残り、石油市場を含めて長期的な影響を出し続けるだろう」

──今後のイラク情勢の動向をどう見るか。

「米国の出方次第だ。イラク戦争後、イラクの復興は米国主導で行われており、米国企業もかなりの資金を投じている。そのため、イラクがこのまま誰かに取られると、米国にとっては打撃が大きい。米企業の保護を考えると米国がマリキ現政権の復活に手を貸す可能性はある。スンニ派の過激派よりはマリキ政権に手を貸す方がましとの見方もある」

「ただシーア派のマリキ政権に手を貸すとスンニ派を弾圧することになるので、スンニ派の代表であるサウジアラビアとの関係性がキーとなる。ガザ地区への空爆があったイスラエルも目が離せない。中東情勢を総合的に踏まえて米国がどう判断するかで今後のストーリーが変わってくる」

──夏場にかけて需給が引き締まるとの見方もある。

「米国の在庫は足元で低水準となっており、需給は引き締まっている。米景気の回復で原油の売れ行きが好調なうえ、7月4日を過ぎてから夏休みのドライブシーズン入りしたためだ」

「ただトレンドとしては米国の需給は緩む方向にある。シェールオイルの開発が進み、生産量がかなり増えているためだ。それに伴って中東からの原油輸入は減少している。今回のイラク問題でもWTIが真っ先に下がり始めたのは、シェールオイルの生産増加で米国の需給が緩んでいる表れとみる向きもある」

──米金融政策変更の影響は。

「米国の金融政策はテーパリングから利上げの方向にあるが、基本的には米景気が回復すれば給料が上がり、近場で済まそうと思っていた夏休みを車を使って遠出するという形でガソリン消費の堅調さにつながる可能性が高い。シェールオイルなどを追い風に米経済が活況を呈してきているので、原油需要が低下している日欧に対し、先進国の中で米国が唯一、原油需要が前年比プラスになるとみられている」

──投機マネーが巻き戻されるのでは。

「過剰流動性の低下による影響も限定的だ。過去10年の投資収益でみると原油が一番パフォーマンスが良かった。米債券の10倍だ。リーマン・ショックにより、あらゆる投資先がふるいにかけられ、それ以来、資金が入らない商品もあるようだが、原油はそれを乗り越えて一番良いリターンを生み出した。その意味で原油に対する信仰心みたいなものが残っているといえ、QE3が終了し引き締めが見えても原油への投機マネーがすべて無くなるということはない」

──今後の原油価格の動向をどうみるか。

「シェールオイルは2020年くらいに生産のピークを打つとみられており、その後は再び原油市場がタイトになっていくだろう。短期的にみてもシェールオイルのコストが60─70ドル程度といわれているので、原油価格が同水準を下回ることはなく、どこかで必ず底を打つ。会社が倒産したら資産価値がゼロになる株に比べれば、資金を置いておく投資先として原油はまだ安定的という感覚がある」

「米エネルギー省が想定しているように年末のターゲットは90ドル前後だろう。半面、イラク情勢が急激に悪化すれば、1バレル120ドル程度まで上昇する可能性はある」

──日本経済への影響は。

「石油価格の上昇による国内企業への影響は、産業によってむらがある。例えば運送業で言えば、トラック用の軽油を使わざるを得ないので、コストがかなり上がっている。それに対して、競争激化などから荷主へ価格転嫁できないので、苦しい状況が続いているようだ。クリーニング屋や銭湯など石油を使うが、適正な価格転嫁が出来ない業種が厳しい」

「日本においては原油に為替を掛け合わせるので、一概に原油価格の下落が効いてくるとは限らない。一説には年末に日経平均1万8000円、1ドル110円との見方もあり、せっかく原油価格が90ドルになっても、1ドル110円になれば、値下がり分は相殺されてしまう」

「ただ、基本的には軽薄短小の流れがあり、エネルギー消費をなるべく抑えたような産業が増えている。昔に比べてエネルギーコストの上昇による国内経済への影響は限定的だ」

*インタビューは14日に行いました。

(インタビュアー:杉山容俊)

杉山容俊

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