October 25, 2018 / 9:34 AM / 23 days ago

インタビュー:デッド・ガバナンスに戻れず、今後はエクイティ=革新投資機構社長

[東京 25日 ロイター] - 政府系ファンドの産業革新機構を改組した産業革新投資機構(JIC)の田中正明社長は、ロイターとのインタビューで、これまで日本の産業界は銀行融資に基づき金融機関が企業経営を監督する「デッド・ガバナンス」の時代が長く続いてきたが、今後は、エクイティ資金を出す株主がその役割を担う必要があるとの考えを示した。

田中社長は、JICでエンゲージメント・ファンドを組成し、投資先企業の経営改善の提案を積極的に行う意向を示した。「本来、会社のガバナンスはエクイティの仕事だ。日本は戦後、擬似エクイティとして銀行がローンを出したが、ようやく本来の姿に戻ってきた」と述べた。

JICは政府の資金約2兆円を投じ、今年度中にエンゲージメントのほか、ベンチャーファンド、未公開企業などに投資するPEファンド、海外企業に投資するファンドを立ち上げる。

主なやり取りは以下の通り。

――JICの役割は何か。

「1つは最終受益者である国民、民間資金の背後にいる受給者に報いること。2つ目は日本の産業競争力を強化し、将来の産業をつくり出すことだ。3つ目はその果実を長期的に収益として取り込み最大化していく。それがわれわれに与えられたミッションだ」

「今後の日本の金融にとって、投資事業が確立し成長することが重要だ。それにより産業が育成されること。その役割を投資事業が果たしていくための流れを作っていく」

――海外のソブリンウエルスファンド(SWF)とは異なるのか。

「SWFとは似ているが、違う。国の金を預かり、それを運用して中長期的に利益を最大化していくのは同じだろう。われわれはそれに加えて、日本の将来の産業を作るというミッションがある。海外のSWFにはそういう機能はない。ハイブリッドだと考えている」

「産業競争力強化と中長期的な収益は、両立しないと指摘されることもあるが、たとえば米国のグーグルはベンチャー・キャピタル(VC)が資金を出した。VCは新しい産業を作りながら、一方で大きなリターンも得ており、両方実現している。2つの目的は、決して二律背反するものではない。JICはそういう役割を果たすファンドを作る」

――どのようなファンドを作っていくのか

「JIC自身は、グローバルな投資のプラットフォームになりたい。自分たちが直接投資するのではなく、ファンドを組成し、そのファンドが投資する。カテゴリーはVC、PEファンド、海外投資、エンゲージメントの4分野だ」

「われわれ自身が出資するほか、海外からの資金も呼び込む。実際、海外投資家からの反応がとても強い。機関投資家のほかにSWF、PEファンドなどもある。PEファンドとは共同投資をぜひやりたい」

――すでに外資系PEファンドも日本で投資をしている。民業圧迫にならないか。

「日本企業には、外資系ファンドに対するアレルギーもある。JICは政府の資金なので日本企業に安心感を持ってもらえるとも思うし、外資系ファンドも共同投資をするメリットが得られるのではないか。国内で活動するPEファンドは規模も小さい。一緒に投資することになれば、彼らの投資機会も増えるだろう。われわれは先導役。民間がやってることを取りに行くことは絶対にしない。我々も学べる機会だ」

――エンゲージメントファンドとは何を目指すのか。

「上場企業に5%程度を出資し、株主として企業価値向上のためにエンゲージメント(提案・対話)をしていく。事業構成を再構築するような提案もして、事業を売却する場合はJICのPEファンドが受け皿にもなる。この回転がうまくいえば、産業の新陳代謝や競争力の強化につながっていくだろう。コーポレート・ガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードで日本企業のガバナンスは前に進んだ。それを実務で前進させたい」

――原発事業など、再編が必要な業界は多い。

「どの産業界とは決めていない。日本の産業界を引っ張っている自動車業界も変化に直面している。半導体や医療も変わってきている。あくまで主役は産業界で、その産業が変化するときに、金融として、エクイティ供給者として伴走できる体制を作ることが重要だ」

「(原発事業の中で)廃炉事業は重要だ。廃炉の技術を維持し、確立させることは必要で、成長産業でもある。何らかの投資事業の投資機会があれば検討したい」

――日本は従来、銀行融資によるデッド・ガバナンスが幅を利かせてきた。

「ターニングポイントは20年前だったと思っている。いわゆる『失われた20年』の間に、銀行と企業の関係は大きく変わった。銀行は苦しいときに貸し渋り、貸しはがしを実行し、企業側は資金繰りに苦しんだ。自分たちを守ってくれるのは銀行ではないと分かった。銀行側も回収可能性がないと貸せないことに気が付いた。今や上場企業のうち6割が事実上の無借金経営だ。もうデッド・ガバナンスの時代に戻れない」

「エクイティは、返さなくてもいい。その資金で事業を育て、トップラインを伸ばす。その代わり、株主としてガバナンスを効かせてもらう。本来は会社のガバナンスはエクイティの仕事だ。日本は戦後、擬似エクイティとして銀行がローンを出したが、ようやく本来の姿に戻ってきた」

*このインタビューは、24日に行いました。

布施太郎 編集:田巻一彦

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