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アングル:リモート化で稼ぐ投資銀行、対面営業の良さ喪失の不安も

[ニューヨーク 29日 ロイター] - 米シティグループのグローバルM&A共同責任者ケアリー・コックマン氏が、印刷関連サービス企業インナーワーキングスの身売り手続きを開始したのは、まさに新型コロナウイルスの感染防止対策としてロックダウン(都市封鎖)が始まった3月だった。

 ロイターが30人弱の投資銀行関係者に取材したところ、パンデミックに伴う業務形態の変化は、ワクチンがうまく普及した後でも残るとの意見だった。ただ同時に彼らは、「デジタル営業」では自分たちがこれまで培ってきた競争力が失われ、特に若手が経験不足に陥る事態を懸念も示している。写真は3月、ワシントン州ショアラインで撮影(2020年 ロイター/Brian Snyder)

そこでコックマン氏がアドバイザーとして直面したのは、30年に及ぶバンカー人生で駆使してきた方法を全面的に見直さなければならないという現実だった。何しろインナーワーキングスの現場に赴いて、有望な買い手候補や資金提供する銀行関係者のためにさまざまな調査を行うことができない。同社の工場の見学はiPad経由のバーチャル方式に切り替わり、各種交渉はリモートで実施された。

こうした努力は報われ、7月までにコックマン氏はインナーワーキングスを1億7700万ドルで売却する話をまとめ上げた。3月のロックダウン開始時に取引されていた株価水準に匹敵し、身売り発表前日の時価総額に127%のプレミアムが乗ったものだ。

この案件を含め、シティの投資銀行部門は第2・四半期と第3・四半期の収入がともに前年比で25%増加。株高や低金利を背景に、企業が積極的にM&Aや増資に乗り出したことが分かる。

業務のリモート化も増収に貢献した形だが、コックマン氏や同僚らは、パンデミックが収束すれば業界として外回りを再開し、顧客と直接接するスタイルに戻るだろうと予想する。「われわれは新規事業を手に入れつつあるものの、現段階で既存の、そして信頼を築いた(顧客との)関係にはなかなか代わり得えない」(同氏)という。

ロイターが30人弱の投資銀行関係者に取材したところ、パンデミックに伴う業務形態の変化、例えばリモート式の資産査定やオフィス出社人数の縮小などは、ワクチンがうまく普及した後でも残るとの意見だった。

ただ同時に彼らは、「デジタル営業」では自分たちがこれまで培ってきた競争力が失われ、特に若手が経験不足に陥る事態を懸念も示している。

モルガン・スタンレーのグローバルM&A責任者ロバート・キンドラー氏は「業務をリモートでこなせる柔軟性は良しとする。だが社会が安全になれば、若手は上司と一緒にオフィスで仕事をして、出張する必要がある。それが彼らにとって学びの方法になる」と指摘した。

リモート業務には負の側面もある。1日18時間もずっとビデオ会議への出席を強いられた上に、ほんの一休みの間までいつでも連絡できると期待される、と一部のバンカーはこぼす。またデジタル機器を通じた取引先とのドライなやり取りだけでは、ビジネス獲得競争に後れを取るのではないかと心配でたまらず、会食やゴルフでもっと親しくなりたいと焦るバンカーも多い。

パンデミック中に顧客との面談を行ったケースもある。例えばクレディ・スイスの顧客助言グループ責任者デービッド・ワー氏は、「責任あるやり方」で担当者と顧客が直接会うのを認めたと明かした。同グループは設立されたばかりで、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のザイリンクス買収といった大型M&Aに助言する花形バンカーが結集している。

ワー氏は「バーチャル方式で行うM&Aについて次第に慣れてきていると思うが、対面でやりたいとの願いはなお強い。特に協議上の難問があったり、企業文化の統合が求められたりする案件の場合はそうなる」と話した。

(David French記者、Matt Scuffham記者、Krystal Hu記者、Imani Moise記者)

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