July 27, 2018 / 5:18 AM / 4 months ago

アングル:ドル調達のベーシス4年ぶり低水準、日本の投資家が欧州債にシフト

[東京 27日 ロイター] - ドル/円スワップ取引で、ドル調達に関わるストレスを示す「ベーシス」が、2014年4月以来の水準まで低下してきた。日本人投資家が資金を米国から欧州債券などにシフトさせていることが大きな要因だ。ベーシスは低下したものの、ドル調達コスト自体は依然高いうえに、トランプリスクや逆イールドカーブへの警戒感も強く、本格的な米債回帰への機運は当面高まりそうもない。

 7月27日、ドル/円スワップ取引で、ドル調達に関わるストレスを示す「ベーシス」が、2014年4月以来の水準まで低下してきた。写真は日本円紙幣と米ドル紙幣。2013年2月撮影(2018年 ロイター/Shohei Miyano)

<欧州債投資が急増>

日米金利差からの乖離幅を示すドル/円スワップのベーシスは、2016年6月末と昨年末に100ベーシスポイント(bp)に迫った。アベノミクスの超金融緩和による金利低下で、国内運用難が深刻化し、日本勢が対米証券投資を活発化させ、ドル資金需要が高まったためだ。

しかし、現在のベーシスは8.9bpまで縮小し、投資家はほぼストレスフリーでドル調達を行える環境となっている。

その大きな要因は、日本人投資家の資金シフトだ。日銀によると、日本人投資家は米国証券(株・中長期債)を2015年に19.6兆円、16年に17.9兆円と大幅に買い越した。

しかし、17年には一転2.6兆円の売り越しとなり、今年上半期にはさらに5.1兆円の米国証券を売り越している。

米証券売却資金の受け皿となっているのが欧州諸国。日本人投資家のEU(欧州連合)証券投資は上半期に6.7兆円と大幅な買い越しとなった。フランス証券の2.2兆円を筆頭に、英国、オランダ、スペインには8000億円規模のジャパン・マネーが向かった。

日本勢が米債を敬遠する一方で、海外ファンド勢は米債先物を大幅に売り越している。

「これらが巻き戻されたら、一気に逆イールドに振れる可能性がある。投資家は自己防衛として、まともなスプレッドを確保できる債券に資金をシフトさせている」と、マーケットストラテジィインスティチュート代表、亀井幸一郎氏はみる。

米商品先物取引委員会(CFTC)によると、ヘッジファンドその他の投機筋は、2年から30年までの全年限にわたって米国債利回りの上昇を見込み、特に5年債と30年債については、先物の売りを過去最大に膨らませている。

米国債市場では、2年債US2YT=RRと10年債US10YT=RRの利回り格差(長短スプレッド)が今月、24.7bpと11年ぶりの低水準まで縮小。一方、ドイツ国債の長短スプレッドは約100bpと相対的に大きく、円投/ユーロ転のスワップコストも安い。

<ドル調達コストは高止まり>

ベーシスが低下したとはいえ、為替スワップの値決めに使用される米短期金利は、7回に及ぶ利上げで上昇。足元でベーシス込みのドル調達コストは、2.4―2.5%で高止まりしている。

他方、運用先の米長期金利は低迷している。10米国債利回りは2.97%と調達コストを差し引くと十分な利ザヤをまだ確保できない水準だ。

「LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の上昇を受け、ドル調達コストが高止まりする一方で、10年米国債利回りが3%を超えて上昇していくイメージは描けない。投資家は、資金を欧州債券などに分散していくしかないだろう」と三菱UFJリサーチ&コンサルティング、主席研究員の廉了氏は話す。

<「トランプリスク」に警戒>

米債投資にまつわるリスクは、イールドカーブだけではない。「トランプ米大統領の発言、行動が大きなリスク」(国内投信)だと国内投資家は警戒する。

大規模な税制改革や、2月に議会が承認した歳出拡大を手当てするため米国債の発行は拡大を続けている。追加減税が実施される可能性もあり、米国債の重荷となりかねない。

さらに他国との摩擦が、海外の米国債需要に不透明感を強めている。

トランプ大統領が不公正な貿易を行っているとみなす中国などに輸入関税を課す方針を打ち出したため、米国の貿易相手国の一部が報復として米国債を売るとの観測が浮上してきた。

米財務省によると、ロシアは米国債の保有を3月の961億ドルから5月に149億ドルまで圧縮した。米国による対ロシアへの金融制裁強化を懸念し防衛に動いたとみられている。ロシア中銀のナビウリナ総裁は、外貨準備を多様化する政策の一環だと説明する。

また、トランプ大統領は米連邦準備理事会(FRB)を批判。19日に「利上げをするたびに、FRBは追加利上げを望んでおり、そうした状況を喜ばしいとは思わない」とし、20日には「金融引き締めは、これまでわれわれが成し遂げてきたことを全て台無しにする」とした。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券、シニア投資ストラテジスト・服部隆夫氏は、「利上げを中断すれば、金融政策の中立性が奪われたと疑われかねず、そうなれば、FRBの信認そのものが崩れることになる。FRBは意地でも利上げを続けるだろう」とみている。

森佳子 編集:伊賀大記

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