April 22, 2015 / 3:32 AM / 5 years ago

IoT革命:欧米とは対立より協調を=富士通・永嶋氏

[東京 22日 ロイター] - 社会の人、モノ、情報を様々なネットワークでつなぐIoT(インターネット・オブ・シングス)は、新たな産業革命の起爆剤にもなると期待されている。富士通(6702.T)は、生産活動のあらゆるデータをIoTでつなげ、人とロボットなどの機械が協調生産する次世代モノづくりの環境構築に向けた取り組みを始めた。

 4月22日、富士通の永嶋寿人氏と高鹿初子氏は、ロイターとのインタビューで、IoTで先行している欧米勢との対立するのではなく、その流れに相乗りすることが日本にとって得策であると指摘。2012年6月撮影(2015年 ロイター/Yuriko Nakao)

IoT活用に向けて、日本企業はどういう対応を取るべきか。同社ものづくりビジネスセンター長の永嶋寿人氏と、同センターのマネージングコンサルタント、高鹿初子氏は、ロイターとのインタビューで、先行している欧米勢との対立するのではなく、その流れに相乗りすることが日本にとって得策であると指摘する一方、世界に誇る日本の製造業の効率化戦略をIoTによってさらに進化させるべきだとの考えを示した。

両氏の発言要旨は以下の通り。

──米独が製造業の強化に向けた取り組みを始めている。

「米国のインダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)は生産現場だけでなく、広い範囲でIoTを使っていく印象を受ける。提唱したゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N)は航空会社に燃料消費が少ない航路を提案するなど、製品が使われる領域でもIoTを使っている」(永嶋氏)

「これに対して、ドイツのインダストリー4.0は、われわれと同様、生産プロセスでIoTを使って効率化を進めようとしているようだ。モノづくりは規格から調達に至る『設計・開発プロセス』と、調達から出荷までの『生産プロセス』、出荷から再び企画に至る『フィールド・プロセス』の三角形で表されるが、米国はフィールド・プロセス、ドイツと日本は生産プロセスに軸足があるイメージだ」(同)

──ドイツが進めているインダストリー4.0をどうみるか。

「政府が莫大なお金を出し、産学官で強化に向けて取り組んでいる。先月、メルケル首相が日本や中国などを訪れ、ドイツの技術を買ってほしいとトップセールスをした。標準化をとると声高に叫んでいる。ただ、何かが出てきているかというと、まだ目新しいものが出てきている状況でもないと感じる」(高鹿氏)

──富士通として、IoTをどう活用・提供していくのか。

「富士通の島根工場のパソコン製造ラインは、ユーザーと直接つながって工場が機動的に動くところまではいかないが、ユーザーごとのカスタマイズができるようになっている。プリント基板に情報が入っていて、どの部品をつけるのかということが自動的にわかるようになって、極端なことを言えば、ラインには1台ずつ違う仕様のパソコンが流れてきている」(永嶋氏)

「これまで日本の工場は、お金をかけないで知恵を使ってさまざまな効率化をしてきた。まさに乾いた雑巾を絞るようなことをやってきたわけで、トヨタ生産方式(TPS)はこれがベースになっている。ただ、これをもう一歩進めるにはICT(情報通信技術)やIoTをもっと使うことも考えないといけない」(同)

「工場のラインをつなぐコントローラーの下にはさまざまなメーカーのロボットや自動機、センサーがある。メーカーごとに個別仕様・非互換のロボットなどをインテグレーションして、工場全体として効率化するにはノウハウが必要で、モノづくりによっても千差万別だ。機器メーカーと連携することで、効率化を支援するソリューションを提供していく」(同)

─製造現場へのIoT導入に課題はないか。

「工場の稼働状況はあまり知られたくないが、IoTではそうした情報も扱う。稼働状況を明かしても、もっと利益を得られる、メリットがあるということになれば広がっていくだろうが、そのメリットがまだ具体的に提示できていない領域が多い」(永嶋氏)

「あと、実はIoT以前の話として企業風土・文化の問題も大きい。例えば納期を守れない理由にはいろいろあるが、わかっていても直せないところがある。社長の危機感と現場の問題意識にギャップがあり、モノづくりは人がやっている、本質的な問題はそこにあるとあらためて感じることも多い」(同)

──IoTの未来をどうみるか。

「例えばコマツ(6301.T)の『コムトラックス』システムは建設機械の情報を遠隔で確認できるようになり、サービスが広がった。冷蔵庫や電子レンジがインターネットにつながれば、家電メーカーと食品メーカーとがつながったり、冷蔵庫と近くのスーパーの情報とがつながったり、エコシステム(企業連携)が広がっていくはずだ」(永嶋氏)

「マッサージチェアを例にとると、座ると疲れているだとか、血圧だとかいろいろなものが出て、それに応じてプログラムに自動的に反映されたり、使い方によって次の製品開発につながったり、そういった『回す』ところでいろいろな情報が使われてくることになるだろう」(高鹿氏)

──セキュリティやプライバシーの問題が心配だ。

「個人情報については、富士通の研究所の中でもいろいろな取り組みをしており、個人情報をマスクした形でIoTで情報を吸い上げて利用できるような仕掛けなども考えている」(高鹿氏)

──国の取り組みをどうみるか。

「国にもリードをしてもらいたいが、国が全部できるわけでもない。民間企業が課題や方向性を共有し、国にサポートしてもらいながらオールジャパンでやっていくことが必要だ。日本は業種ごとに多くの企業がいて、コンセンサスを得るのは難しいが、ドイツや米国がやっている以上やらなければいけない」(永嶋氏)

──標準化の争いで敗れれば、国の競争力も低下する。

「海外に行った途端にそのルールでは取引できない、仕様が違うと言われて排斥されてしまうリスクを気にしている企業も多い。例えばデータ交換のやり方など、標準化の行方によっては直さないと仲間に入れてもらえなくなるリスクもある」(高鹿氏)

「現場レベルでの工夫はたくさんあり、日々改善もしている。これが日本のモノづくりを支えているわけだが、これを海外にもっていけないような標準化や、工夫が全部オープンになるホワイトボックスになってしまうようなことは避けないといけない。日本の強さを隠しながら、一方で海外の標準化の流れにも乗り遅れないようにやっていくさじ加減は難しい」(永嶋氏)

「ドイツのインダストリー4.0とケンカしなくてもいい。これからはグローバルでモノづくりが広がっていく。勝ち負けではなく、相乗りすることも必要だと思う。日本の強みが担保できるのであれば、いいものは使わせてもらえばいい」(同)

    *インタビューは16日に行いました。

志田義寧 編集:北松克朗

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