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カジノ関連株に新産業誕生の期待、外資との競争激化に不安も

[東京 15日 ロイター] - 統合型リゾート施設(IR)整備推進法案、いわゆるカジノ法案が成立し、関連株への注目度が高まっている。カジノ施設の建設がいよいよ現実味を帯び、一大産業が誕生するとの期待感は大きい。ただ、日本企業にとって初めての分野も多く、海外企業との競争などに不安感もある。関連銘柄の株価は15日、いったんの材料出尽くしで総じて下落した。

 12月15日、統合型リゾート施設(IR)整備推進法案、いわゆるカジノ法案が成立し、関連株への注目度が高まっている。写真は都内で1月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

<総じて利益確定売りに反落、続伸の「裏銘柄」も>

IR推進法案の成立で、政府は、規制や依存症対策などの具体的な制度設計を盛り込んだ「IR実施法案」を1年以内に国会に提出する作業に入る。名目国内総生産(GDP)を0.2%押し上げるとの試算もあり、関連株に対する投資家の関心は強い。

15日の市場では、同法案の成立でいったんの材料出尽くし感が広がり、遊戯機器を手掛けるセガサミーHD6460.Tや、貨幣処理機大手の日本金銭機械6418.Tなどカジノ関連銘柄は下落した。

ただ、両銘柄は12月に入って年初来高値を更新しており、利益確定売りが主体とみられている。

遊技場向け機器の製造・販売を行うオーイズミ 6428.Tや商業施設建設を行うイチケン1847.Tの株価も軟調だった。

一方、「裏のカジノ関連株」と一部で呼ばれているコメ兵2780.Tは大幅続伸。市場では、カジノができれば賭けに負けた客がブランド品を換金するため需要が増えるとの見方などを材料に、8月26日に付けた年初来安値から約80%急騰しているが、騰勢は衰えない。

<外資との競争に懸念>

いわゆるカジノ都市が出現するのは、2020年以降と想定されている。今後も株価の上昇トレンドは続くのだろうか──。

高木証券・企業調査部長の藤井知明氏は「スロットマシンなど遊戯機を扱う会社は、一度設置してしまえば需要は伸び悩むことから、急騰は一過性となる可能性が高い。カジノ自体の数は膨大にはならないだろうし、個々の企業業績へのインパクトは限られる」と話す。

半面で、ALSOK2331.Tなどの警備会社やゲームセンターの運営手法を熟知しているコナミHD9766.T、カプコン9697.Tなどは継続的な上昇が見込めるという。

ただ、日本ではカジノ運営のノウハウが乏しい。「トランプ次期米大統領の経済政策により、経営ノウハウを持っている外資系企業が参入してくるかもしれない」(日本アジア証券・エクイティストラテジストの清水三津雄氏)との指摘もある。

また、日本経済全体への影響では、カジノ誘致に成功した都市と周辺都市の間に格差が生じる恐れがあるほか、ギャンブル依存症による勤労意欲の減退など、問題点も少なくない。

<期待される東京五輪後の集客効果>

もっともこれらの問題点に対し、対策は可能であるとの見解もある。ギャンブル依存症の増加懸念を払拭するため、公明党の井上義久幹事長は9日、依存症対策チームを年内にも発足させる方針を明らかにした。自民党も13日、依存症防止策の強化を明記した同法案の修正案を掲示している。

双日総合研究所・チーフエコノミストの吉崎達彦氏は「成長分野を探すと必然的に遊びの分野になる。ばくちの空間というより、東京ディズニーランドのような、家族で訪れることができるテーマパークを目指すべき」と、カジノ誘致を前向きに受け止める。

2020年の東京オリンピック終了で「宴の終わり」が訪れるとの懸念もあるが、「カジノ都市への訪問を周辺地域への観光とパッケージ化して売り出せば、外国人観光客の誘致にもつながるだろう」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券・景気循環研究所副所長の鹿野達史氏)と、インバウンド需要の継続効果を期待する声も出ている。

辻茉莉花 編集:伊賀大記

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