[ブリュッセル 15日 ロイター] - 米国が2015年のイラン核合意からの離脱を先週表明したことを受け、イランのザリフ外相と英・仏・独の外相、欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表は15日、ブリュッセルで会合を開き、米国抜きでの核合意の維持に向けた方策を話し合った。
ザリフ外相は1時間半に及んだ会合の後、「われわれは正しい方向に向かっている。多くのことが今後数週間で何かできるかにかかっている」と述べた。
同相は会合に先立ち、欧州側はイランに対し、核合意に基づく経済的恩恵を保証する必要があるとし、そのための時間は限られていると警告していた。
一方、英国のジョンソン外相は記者団に対し、イランと取引する外国企業を対象とした米国の制裁を回避できる可能性について「現実的になるべき」と語った。
トランプ米大統領は先週8日、イランの核開発を制限するため欧米など6カ国とイランが2015年に締結した核合意から離脱し、対イラン経済制裁を再開すると表明。
これを受けてホワイトハウスは13日、米政府はイランと取引する欧州各国に制裁を科すと警告した。
15日の外相会合が始まる直前には、米財務省はイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」の資金調達に関与したとして、イラン中央銀行のセイフ総裁を経済制裁の対象に指定したと発表。
米国による制裁の回避は一段と難しくなっている。
EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は記者会見で「核合意の維持に向けた現実的な解決策を見出そうと努めている」と説明。解決策では、イランからの原油輸出と、欧州の銀行によるイラン国内での営業の継続を目指すとした。
また、16日の欧州委員会の会合でも制裁を阻止する方策を協議する、と述べた。
EUの外交官は米国の立場を理解するには時間が必要としている。
フランス政府高官は「米国の最終的な目的がイランに核開発を断念させることなのか、イランの体制を転覆させることなのか、われわれは米国側に確認する必要がある」と語った。
EUが核合意に基づきイランと取引する欧州企業を米国の制裁から守るために取れる手段はある。これらには報復措置、欧州投資銀行によるイランへの直接投資、欧州各国によるユーロ建て協調融資枠の設定などがある。
ただ、米国の金融システムの広範さや米ドルの優位性、欧州企業の米国事業への影響などから、EUが取り得る手段の有効性はさほど期待できない。
あるEU外交官は「われわれが米国に対抗できる手段はあまりなく、楽観できない」と語った。