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焦点:イラン内部で権力闘争再燃、米大統領の核合意「否認」受け
2017年10月16日 / 08:21 / 1ヶ月後

焦点:イラン内部で権力闘争再燃、米大統領の核合意「否認」受け

[アンカラ 15日 ロイター] - 米国が新たに示したタカ派的な姿勢を受けて、イランは直ちに団結して対抗する構えをみせているが、イランの強硬派は、この対立につけこみ、西側に対する親和姿勢を取る国内ライバルを弱体化させようと画策している。アナリストや内部の事情に詳しい関係筋が明らかにした。

トランプ大統領が13日、2015年に締結した歴史的なイラン核合意を破棄する可能性を示唆したことで、イランの複雑な権力構造内部における政治闘争を再燃させる環境が整った、と政府高官は述べた。

欧米など主要6カ国がイランと署名した核合意が、実際に崩壊し始めれば、現実路線のロウハニ大統領を筆頭とする、合意を強く支持した誰もが、キャリアの汚点となる逆風に直面することになる。

そうなれば、イラン国内における安全保障面の強硬派に対するチェック機能が働かなくなることで、イランが対外的な強硬姿勢を強め、中東の緊張が悪化しかねないと、アナリストは指摘する。

現段階では、派閥に割れた政治エリートの団結が同国の優先事項となっている。

「いま重要なのは、国外の敵に対して団結することだ。国家の利益が、イランの全政府関係者にとって優先事項だ」と、政府高官はロイターに語った。慎重を要する事案だとして、今回取材した関係者は皆、匿名を希望した。

とはいえ、核兵器開発につながる技術凍結と引き換えに制裁解除を実現した核合意交渉で合意締結を後押ししたロウハニ大統領など、現実路線主義者や改革派は、国内の政治的な立場が加速度的に弱まる可能性があるという。

<千載一遇のチャンス>

トランプ大統領は13日、国際機関の査察官がイランが核合意の合意事項を順守していると確認したにもかかわわらず、合意の順守を認めることを拒否。米国の同盟国と敵対国の両方を公然と無視してみせた。

米大統領は核合意の枠組みから完全な撤退は表明しなかったものの、米国議会に対し、対イラン経済制裁を再発動するか60日以内に決定するよう要請した。

「米国との関係緊迫化は、イランの強硬派にとって、ロウハニ大統領の翼を折る千載一遇の好機だ」と、18カ月の期間を要した核交渉に参加したロウハニ氏の支持者は語った。

イランの強硬派の最高指導者ハメネイ師は、ロウハニ大統領が主導した核交渉を慎重ながらも支持していた。だが同時に、米国が合意を順守する可能性については、たびたび悲観的な見方を示してきた。

ロウハニ大統領にとって、大きな賭けだった。世界との距離を縮めたことで、国内では人気を、国外では名声を得た。一方、西側との緊張緩和や国内自由化に反対するハメネイ師ら強硬派にとっては後退を強いられた。

だが情勢は逆転しつつある。

「強硬派は、トランプ大統領の脅しを、ロウハニ大統領の頭の上に吊るされたダモクレスの剣として使うだろう。核合意で得た経済的利益は享受しつつ、だ」。テヘランを拠点とする政治アナリストSaeed Leylaz氏はそう語った。経済的な利益とは、石油部門や銀行部門に対する制裁解除を指す。

「ロウハニ氏と彼のデタント(緊張緩和外交)政策は、核合意が存続しなければ、弱まるだろう」と、別のイラン政府高官は語った。「もちろん、攻撃的な地域政策が取られることは避けられない」

 10月15日、米国が新たに示したタカ派的な姿勢を受けて、イランの強硬派は、この対立につけこみ、西側に対する親和姿勢を取る国内ライバルを弱体化させようと画策している。写真はテヘランで9月撮影。提供写真(2017年 ロイター Nazanin Tabatabaee Yazdi/TIMA/File Photo via REUTERS )

聖職者と共和制による二元的なイラン独自の政治システム下では、選挙で選ばれた大統領が、選挙を経ていないハメネイ師の下に位置する。ハメネイ師は過去に、イスラム共和国の存在が脅かされるような内部対立が起きた際には、自ら統制強化に乗り出している。

トランプ大統領のイラン政策は、いずれ強硬派を利する結果になると、ハメネイ師の支持者は言う。「重要なのは、イスラム共和国とその利益だ」

<報復合戦>

トランプ大統領の発言を受けて、ロウハニ大統領は、もし核合意がイラン政府の利益を守れないなら、撤退もありうると示唆している。

合意存続は今や米国議会次第だ。同議会は、合意内容の修正や、イランに対して再び制裁を課そうとする可能性がある。だが仮に議会が再制裁の検討を拒否したとしても、もし両国政府が報復合戦に出れば、合意存続はやはり危うくなる。

「両国が言葉の応酬だけで済ませている限り、関係は平常通り続く」と、Leylaz氏は言う。

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ロウハニ大統領は制裁解除後、主要産業の石油産業に対する約10年の規制で荒廃した経済の立て直しに取り組み、海外投資家を歓迎してきた。

だが欧州の主要投資家も、イランと米国の緊張が高まり、合意存続が一層危ぶまれるようになれば、イラン投資を再考する可能性がある。

「米国が承認する政治合意という安心がなければ、欧州企業はストップをかけるだろう」と、仏外務省高官は言った。

核合意の発効後、対イラン投資計画を発表した欧州企業には、航空機大手エアバス(AIR.PA)や、仏石油ガス大手トタル(TOTF.PA)、独総合エンジニアリングのシーメンス(SIEGn.DE)などが含まれる。

<地域の混乱>

長年イランの代理戦争を中東地域で戦ってきた革命防衛隊について、ハメネイ師の「腐敗した個人の治安集団であり非正規軍」だと述べたトランプ大統領の発言は、イラン政府を激怒させた。ロウハニ大統領は、イランは常に革命防衛隊を支持すると述べた。

トランプ大統領の敵対姿勢により、イランが地域における振る舞いを変えることはないと、複数の政府高官の見方は一致している。地域政策は、ハメネイ師の決定事項だ。だがもしトランプ氏が脅しを実行に移せば、「イランは、より強硬で攻撃的な地域政策を取るだろう」と、イラン政府の意思決定に通じた高官は述べた。

イランとライバル関係にあるサウジアラビアは、中東地域の緊張を高めていると、互いを非難している。シリアからイエメン、イラク、バーレーン、レバノンまで、アラブ世界の争いにおいて、スンニ派王政のサウジアラビアとイランのシーア派革命指導者は対立している。

社会政策上では、個人の自由と権利に対する規制緩和を志向するロウハニ路線は、もし大統領が権威を失えば、強硬派によってつぶされるだろう。強硬派は、司法や治安機関、国営メディアを掌握している。

「国外で圧力が高まると、政権は国内で締め付けを強めて反対派を黙らせてきた」と、かつて中道派だった政府高官は言った。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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