April 9, 2018 / 11:08 PM / 10 days ago

コラム:迫る核合意見直し期限、イランが交渉に応じない理由

Maysam Behravesh

 4月9日、トランプ大統領が設定した5月12日の期日を控え、歴史的なイラン核合意を救うための最後の努力として、欧州各国は同政権が問題視している主要項目について集中的な取り組みを行っている。写真は2017年9月、テヘランの広場に設置されたミサイル(2018年 ロイター/TIMA)

[9日 ロイター] - トランプ大統領が設定した5月12日の期日を控え、歴史的なイラン核合意を救うための最後の努力として、欧州各国は同政権が問題視している主要項目について集中的な取り組みを行っている。

米国が主張する最も重要な項目は、イランによる弾道ミサイル開発を制限することに「失敗」した点だ。非核ミサイル開発の継続を許したことで、この合意による核開発制限が期限切れとなった場合、イランはすぐに核弾頭を搭載することが可能だと批判派は指摘している。

フランスのルドリアン外相は先月5日、イランを訪問して同国指導部にミサイル開発を巡る交渉に応じるよう要請した。また、米国の要求を、欧州は受け入れざるを得なくなると警告した。

マクロン大統領の下、中東で積極的な姿勢を打ち出している仏政府はその2週間後、イランの弾道ミサイル開発と7年に及ぶシリア内戦関与に対し、より強硬な対応を取るよう欧州連合(EU)を促した。これを受け、核合意に署名した仏独英3国が、イラン政府のミサイル開発やシリア情勢に関与した「人物や集団」に対する新たな制裁を提案した。

このような一連の動きは、長期的には確実に失敗するだろう。トランプ氏が国家安全保障問題担当の大統領補佐官にタカ派のボルトン元国連大使の起用を決め、米国がイラン核合意から脱退する可能性が高まったことを踏まえれば、なおさらだ。

欧州諸国がいかなる懲罰的な対応を取ろうとも、イランが、ミサイルの射程距離に表面的な「上限」を設ける以上のミサイル開発規制に同意することは考えにくい。(イラン政府はこれまで、射程距離2000キロを超えるミサイル開発を自粛すると示している。これは、何らかの軍事衝突が起きた場合に、イスラエル中心部や中東地域の米軍基地を狙える射程だ。)

イラン政府の立場からみれば、ミサイル開発は自己保存の問題だ。数十年に及ぶ西側による制裁の影響で、強力な空軍を構築できなかったという事情もある。

イラクとの長い戦争期間中に、当時フセイン大統領が率いたイラク空軍が、いかにテヘランやタブリーズ、イスファハンやシラーズといったイラン主要都市に組織的な空爆を加えたか、イラン人は今も忘れていない。

「都市攻撃」として悪名を馳せた、1984年以降の都市部に対する戦略的な空爆作戦によって、多くの市民が犠牲となった。1987年6月、フセイン大統領は、イラン西部の国境町サルダシュトに対する化学爆弾攻撃を指示。少なくとも113人が死亡し、多数負傷した。

イラン側も、戦闘機を派遣して報復したが、空爆の防御は防空システムに、より依存していた。これを受け、フセイン大統領は次第に組織的なミサイル攻撃を増やすようになった。ミサイル装備を持たず、国際制裁下にあるイラン政府には、なすすべがなかった。

イランのザリフ外相は、ミサイル開発が国際社会との通商関係にマイナスの影響を及ぼしていることについて日本の記者に質問され、当時を振り返ってこう答えている。「イランには、サダム・フセインを止めるために撃ち返すことのできるミサイルが1発もなかった。われわれは、国民を守るためのスカッドミサイル1発を求め、いろんな国に次々と懇願して回った。ひたすら懇願に懇願を重ねたのだ。はした金のために、イランに国民防衛を放棄せよとあなた方は言うのか」

次に、イラン政府は、トランプ政権側が核合意の約束を守らなかったと考えている。そればかりか、米側が核合意の文言と精神に反する「あいまい政策」を利用して、イランが経済的利益を得ることを積極的に邪魔しようとしたとみている。

イランのアラグチ外務次官は2月に行われた英国放送協会(BBC)とのインタビューにおいて、ミサイル開発交渉に消極的なイラン政府の姿勢を説明する中で、この点を指摘している。

「われわれはすでに、核プログラムについて交渉を行い、その合意はイランにとって成功と言えるものではなくなっている。なぜその他の問題について交渉せねばならないのか。特に、われわれの国家安全保障に直接絡む問題について」と、同次官は話した。

イランと西側の数十年に渡る根深い不信と制度化された敵意により、イラン指導部は、譲歩や妥協をすればするほど、相手は前進し要求してくると確信するようになっている。

この確信は、イランの最高指導者ハメネイ師の演説にも繰り返し登場しており、特に国家安全保障分野のイランの政治決定プロセスにおける政治心理に入り込んでしまっている。

イラン政府が一般的に、国内の抗議活動や外国からの圧力に対して譲歩したがらないのは、これが一因だ。彼らの観点では、妥協はさらなる妥協につながり、目の前の政治問題だけでなく、政権の存続までもが救済不可能なまでに脅かされかねないのだ。

米政権が要求する通りにイランのミサイル規制を核合意に盛り込んだり、欧州が望むように別のミサイル合意を交渉したりすることで、核合意を存続させられるとは、極めて考えにくい。イラン政権と軍当局は、イランの「ミサイルと防衛力」についての交渉はありえないとの立場でほぼ一致している。

仮に国際圧力を受けてイラン側が交渉に合意したとしても、イランのミサイル開発の「質的」な制限や削減に至る交渉が出来ると期待するのは、甘く非現実的な考えだ。

*筆者はスウェーデンのルンド大の博士候補生。イラン・インターナショナルテレビのプロデューサーも務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below