May 5, 2018 / 10:18 PM / 2 months ago

焦点:アイルランド米国債保有が急減、多国籍企業の資金還流か

[ロンドン 30日 ロイター] - 米財務省が公表した国際証券投資統計(TICデータ)によると、2月の国別米国債保有高でアイルランドが135億ドルも減少し、単月としては過去最大の落ち込みを記録した。

 4月30日、米財務省が公表した国際証券投資統計(TICデータ)によると、2月の国別米国債保有高でアイルランドが135億ドルも減少し、単月としては過去最大の落ち込みを記録。写真はアイルランドの国旗。ダブリンで2011年撮影(2018年 ロイター/Cathal McNaughton)

それまで2012年以降で6倍に膨らんだ保有高が急に減ったことで、米国の多国籍企業が税制改革を受けて海外に保有していた巨額の現金の一部を本国に還流させているのではないかとの観測が広がっている。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)のアナリスト、キャロル・ザン氏は顧客に対して「1つのデータがトレンドを形成するわけではないが、活発に議論されている米企業の資金還流というテーマに符合している」と話す。

アイルランドの米国債保有高は3140億ドルと年間国内総生産(GDP)にほぼ匹敵し、外国としては世界第3位。これほどの規模に上るのは、国際的な資産運用やカストディ(証券管理)業務の主要センターであるほか、米国の有力なハイテク・医薬品企業の欧州事業の拠点になっているからだ。

アップル(AAPL.O)やアルファベット(GOOGL.O)子会社グーグル、マイクロソフト(MSFT.O)、ファイザー(PFE.N)はいずれもかなり前からアイルランドに拠点を構え、米国外の銀行に多額の現金を預けている。

このうち少なくともファイザーは、アイルランドで財務管理の一部を手掛け、リンクトインの社員プロフィールから「債券運用」のための人員が同国で採用されたことが分かる。

各企業の子会社は個別に会計報告を公表する義務はないため、アイルランドに彼らが保有する現金の正確な額は不明だ。一方TICデータは、米国債の保有者ではなく、海外の保有登録地域のみを示している。

だからどの企業が米国に資金を戻したか、あるいは保有高減少の原因が資金還流に帰せられるのかは、はっきりしない。

ただ米国債利回りが最近4年余りぶりの高水準に達し、まとまった売りが出たと受け止められている。INGの債券ストラテジスト、パドレク・ガービー氏はTICデータについて「ドル建て商品の清算」を示唆したと話す。

アイルランド中央銀行は、米国の公式統計にはコメントできないと述べた上で、独自の分析に基づくと国内金融セクターの米国債保有高は昨年を通じて安定的に推移し、今年のデータはまだ入手していないと説明した。

<一時的な要因説>

アイルランドの米国債保有減少が一時的な動きという可能性はないだろうか。

ある証券管理銀行幹部はロイターに、最近運用資産が引き揚げられているという話は耳にしていないと語り、特定企業のバランスシートの変化が米国債保有高の減少をもたらしたのではないかとの見方を示した。

確かに135億ドルという減少額は、アイルランドのアップルに対する税制優遇を欧州連合(EU)が違法と認定したことを受け、同社が支払う必要が出てきた追徴税分にほぼ等しい。同社は3月にこの追徴税分の預託金融機関にバンク・オブ・ニューヨーク・メロンを選んだ。

米証券取引委員会(SEC)への届出書類によると、昨年末時点でアップルの米国債保有高はおよそ600億ドル、グーグルは370億ドルで、マイクロソフトは米国債とエージェンシー債合わせて1200億ドル近くを持っている。各社の地域別の保有高は明らかではない。

<現金還流加速も>

それでも米国の税制改革が2月のTICデータを変化させたとすれば、アイルランドや他の海外諸国の米国債保有は今後、さらに減っていく公算が大きい。

BAMLのザン氏は「保有高減少が本当に(米企業の)海外現金還流を反映しているなら、アイルランドの米国債保有高は減少が続くはずだ」と主張し、米企業の国債保有は上位7社合計で2000億ドルを超えると見積もっている。

またいくつかの試算では、米多国籍企業は海外に現金やさまざまな証券類の形で3兆ドルを上回る利益を保有しており、税制改革によって本国に還流する限り税金の支払いを「繰り延べ」できる。

3月にJPモルガン・アセット・マネジメントがクレジットアナリストを対象に実施した調査では、米国のハイテク・医薬品トップ10企業は、税制改革を利用して少なくとも海外に保有する現金の3分の1に当たる3000億ドルを本国に戻すと予想されている。

JPモルガン・アセットのグローバル債券責任者ボブ・ミッシェル氏は「米企業は今月もしくは年内にすべての現金を還流しないかもしれないが、既に一部を戻し始めている」と述べた。

海外現金保有額の多い米企業の第1・四半期決算を分析したJPモルガン・アセットによると、昨年第4・四半期に比べて累計で海外保有現金はほぼ200億ドル減少している。

(Sujata Rao、Ritvik Carvalho記者)

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