November 26, 2014 / 3:27 AM / 6 years ago

インタビュー:原油70ドル台で推移の公算、サウジ政策停滞も背景=石井彰氏

[東京 26日 ロイター] - 今年6月から約3割下落し、1バレル当たり80ドル前後(ブレント)にある原油価格について、エネルギーアナリストの石井彰氏は「70ドル台でずっと推移する可能性は十分にある」と指摘した。世界の供給構造を変化させた米国シェールオイルの採算ラインが従来から低下していることが理由だ。

 11月26日、1バレル当たり80ドル前後(ブレント)にある原油価格について、エネルギーアナリストの石井彰氏は「70ドル台でずっと推移する可能性は十分にある」と指摘した。リヤドで2012年12月撮影(2014年 ロイター/Fahad Shadeed)

同氏は、サウジアラビアの石油政策の停滞も今回の原油下落局面に影響しているとみる。「サウジは王権交代期に差し掛かり、石油政策を決められないのではないか。シェールオイル(企業)の意欲を削ぐために価格競争を挑んでいるとの見方をする人もいるが、サウジにそこまでの力はない」と述べた。

石井氏は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)で上席研究員などを経た後に独立。文明論的な視点でエネルギー問題を論じた著書が多数ある。

インタビューの主なやり取りは以下の通り。

──原油価格が6月から3割安となった。下落はまだ続くか。

「まだまだ下がる可能性がある。70ドル割れは一時的と思うが、70ドル台でずっと行く可能性も十分ある。シェールオイルの限界生産コスト(採算ライン)は80ドルとの見方もあるが、古い数字で、多分60ドル台だ。鉱床によってコストがまったく違う。原油下落で採算割れしている鉱区もあると思うが、ごく一部だろう。シェールオイルの生産は、原油価格が70ドルを割らない限り、そんなに減るとは思わない」

「価格下落の要因は供給過剰だが、何年も前からずっとそうだ。なぜ急に下がり始めたかというと、1つの要因は米国の金融緩和が終わり、(原油など)コモディティーに流れていた投機資金が引き上げられた。加えて、軽質・低硫黄の原油がこの半年くらいで急激に余った。シェールオイルと(一部生産が回復した)リビア産はそれぞれ軽質で低硫黄。世界の原油指標である米WTIと北海ブレントも軽質・低硫黄の油種だ」

「こうした状況でサウジが減産調整をしていない。私は中東政治の専門家ではないが、高齢のアブドラ国王の健康悪化が取り沙汰されるサウジは、王権交代期に入り、王室が事実上、機能していないという話しをよく聞く。王位継承順位は決まっているものの、王室内部の権力闘争があるともいわれる。減産は大きな意思決定になるが、次の国王が誰になるか不透明だから、石油政策について誰も決められないのではないか」

──27日のOPEC(石油輸出国機構)総会で減産合意はできるか。

「できない可能性も十分にある。実効性にはかなり疑問がある。日量200万バレル以上減産しないと効果を上げられないだろう。仮に合意しても、合意が守られるかどうか分からない。合意を守るとしてもOPECではサウジとUAE(アラブ首長国連邦)、クウェートだけで、ほかの国はまずは減産しない。サウジが減産して他国が守らなかったら、原油価格が上がらず、サウジだけ丸損になるので決定は難しい」

「(世界の原油市場で)需給が崩れているのは軽質・低硫黄の原油だが、サウジの原油は軽質もあるが大半は中質から重質の高硫黄原油だ。これを減産してもどれだけ原油価格が上がるのか見通しが立たない。減産して輸出量が減った分を穴埋めできるほど油価が上がるかというとサウジは自信がもてない。リスキーな判断はなかなかできないだろう」

──サウジの国家財政を支えるには90ドル程度は必要か。

「2年前には100ドルないと(国が)持ちませんと国王が言っていた」

──失業給付金の給付など規律のないばらまき政策を取っていると聞く。

「少し前までは、イスラム国(イスラム過激派組織)の問題はあまり顕在化していなかったが、それでもばらまきを止めたら何が起こるか分からないと従来から言われていた。イスラム国の台頭で、ばらまきをやめた途端、何が起こるか分からない状況になった。革命が起きるリスクは十分にある。ばらまきを実施するには100ドル台は欲しいということだ」

──原油価格70ドルという低位安定が続くと中東の政情不安が表面化するか。

「長く続くと、いずれ遠からず中東(の地政学リスク)が噴火する可能性がある。半年先か2年、3年先かわからないが」

──1986年に原油が急落した「逆オイルショック」の再来は。

「86年に似ているが、86年ほどには落ちないというのが私の見方。60ドル台まで行くと、シェールオイルの伸びは止まる、もしくは減産になる可能性が高い。在来型油田は大規模になるほど初期投資が済めば、後はおなじ生産量が続く。シェールは半年たったら生産量が落ちるから、自転車操業で次から次に新しい井戸を掘らないといけない。新規の井戸が採算割れになればだれも掘らないから、半年経つと、(生産量が)減っていく。そこが在来型と違う」

「シェールオイルは、損益分岐点が80ドルくらいだから、そろそろシェールオイルの生産が落ちるとよく言われているが、それは多分違う。この3年くらいの学習効果が出て、シェールオイルの生産コストが下がっている」

──価格が下落することで石油需要が伸びるか。

「あまり増えないだろう。石油はリスクのある商品だというイメージが染み付いてしまった。自動車メーカーは、原油が安くなったからといって、大排気量のクルマをたくさん作るわけではない。節約志向は変わらない。加えてCo2問題があるので、需要回復するかといえばそれはないだろう」

「石油価格が下がると経済が活性化する可能性があるので、それで需要がじわじわ増えることもないことはない。とはいえ、ドライブの距離が増えるくらいで、産業用、発電用はほとんど増えない。日本は3・11(東日本大震災)以降石油火力がやや復活したが、主要国ではほとんどゼロ。工業用は、日本ではまだ残っているが、欧米、中国はほとんどゼロ。値段が下がっても飛行機と車の距離が増えるだけだ。供給のピークよりも需要のピークが先に来るだろう」

(インタビュアー:浜田健太郎、月森修 インタビューは19日に実施)

浜田健太郎

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