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焦点:巨大IT企業のネット広告、必要なら規制対象に 公取委が一石

[東京 19日 ロイター] - 公正取引委員会がインターネット広告を巡り優越的地位を乱用すれば独占禁止法違反の恐れがあると指摘した最終報告は、巨大IT企業への規制のあり方に一石を投じそうだ。独禁法に紐付けた事前規制法の本格運用を控え、ネット通販やアプリストアに次ぐ規制対象事業にネット広告も加えるかが焦点。世界に先駆けて導入した事前規制の帰すうは国際社会からの関心も高い。

 2月19日、公正取引委員会がインターネット広告を巡り優越的地位を乱用すれば独占禁止法違反の恐れがあると指摘した最終報告は、巨大IT企業への規制のあり方に一石を投じそうだ。写真はグーグルのロゴ。チューリッヒで2018年12月撮影(2021年 ロイター/Arnd Wiegmann)

規制対象とするかの検討が必要になる――。ネット広告の現状をまとめた公取委報告を踏まえ、政府関係者の1人はこう述べた。

公取委は、商取引で優位な立場にある巨大IT企業による取引先に不利益を与えかねない契約の一方的な変更や、競合他社の排除につながる取引制限などの行為に独禁法違反の恐れがあると、17日に公表した「デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書」で新たに表明した。

インターネット上のデジタル広告市場は2019年に2兆円に膨らみ、国内市場全体の広告費の約3割に急成長した。公取委によると、このうちの検索連動型広告では、検索エンジンやブラウザ、マッチングアプリなどの幅広いサービスを提供する米グーグルが70―80%のシェアを占める。

一方、所有・運営型のディスプレイ広告で米フェイスブックやヤフー、グーグルが少なくとも10―20%のシェアを握る現状に、同委は、市場全体のシェアが高いグーグルは「独占的な地位」、フェイスブックとヤフーについては「有力な地位」にあると位置付けた。独占禁止法上問題となる「具体的な案件」に接した場合には、厳正に対処することも、報告書で併せて明記した。

最終報告書では「アドフラウド」と呼ばれる手法で1秒間に数万回単位でクリック数を水増しし、広告費を積み上げる実態にも触れた。

数年前から政府内でも懸念されていた事案で、「支払う側にしてみれば広告料に見合う広告効果が得られず、不当なプログラムを介して広告料をつり上げる実態は刑法の詐欺行為に当たる」と、別の政府関係者は指摘する。

政府は、昨年5月に成立させた新法「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」を2月から施行し、今春からの本格運用を視野に入れる。本格運用に先立ち、ネット通販やアプリストアの対象事業者を指定する運びだ。

透明化法に関しては「事業者に細かく規制をすることではなく、事業者みずから実質的に取り組むという枠組み」(一橋大の岡田羊祐教授)とされ、専門家の間でも一定の評価を得ている。

ただ、性善説に立った事前規制の考え方で十分な対応が期待できるかは不透明だ。

「イノベーションの妨げとしないためにも規制範囲は必要最小限であることが望ましいが、優越的地位の乱用を巡る懸念が払しょくできなければ、ネット広告を規制対象事業とすることも考えていかなければならない」と、自民党競争政策調査会で会長を務める伊藤達也議員は言う。

<イノベーション推進との両立焦点>

欧米では「市場支配的な地位」を重視し、日本の独禁法に当たる「相対的な地位」に基づいた優越的地位の乱用に対しては罰則規定を設けていない。ドイツやフランス、韓国には日本と似た規制があるが、米国やカナダ、欧州連合(EU)、イギリス、オーストラリアでは、相対関係に基づいた違反行為に対する金銭的不利益処分は課されない。

日本は、取引上の優越に関する独禁法19条に加え、欧米の市場支配にあたる「私的独占」に関する同法3条の規定がある。デジタルプラットフォーマーに限定する形で透明性を求める新法は、海外ではそもそも存在しない。

独禁法は、外資企業の日本法人にとどまらず適用対象となるため、日本政府がどう対処するかは海外からの関心も高い。透明性を高める規制強化と同時に、経済成長の源泉となるイノベーション推進をどうバランスさせるかが課題となる。

ダニエル・ルーシンク、山口貴也 編集:石田仁志

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