[札幌 27日 ロイター] - 日銀の岩田規久男副総裁は27日札幌市内で講演し、一昨年4月にスタートした量的・質的緩和(QQE)1年目のペースで物価が上昇を続ければ、昨年7月にも2%の物価目標を達成できたと指摘。
現時点で目標未達の理由として、昨年4月の消費税率引き上げが原油価格下落とともに大きいとの見解を強調した。
<現在の政策間違っていない>
岩田副総裁は目標未達ならば「説明責任がある」「説明責任が取れない場合は最高の責任の取り方は辞職」と繰り返してきた経緯がある。この日の講演でも、QQE開始後2年経過した現在、物価がゼロ%にとどまっていることへの説明に力点を置き、「物価の基調は改善を続けていることも説明することで現在の政策が間違っていないと示せる」と強調した。
日銀はこれまで2%目標の達成時期を徐々に後ろ倒ししており、ことし4月末の決定会合では「16年度前半」とした。岩田副総裁は「従来の想定から多少後ずれしている」と認めた。同時に「物価の基調自体は、想定した政策効果の波及メカニズムが機能する形で着実に高まっている」とし、「現時点で物価目標の早期実現に向けたコミットメント(必達目標)を変更する考えは全くない」と強調した。
<消費増税の影響、想定より大>
またQQE開始後、消費税引き上げまでの最初の1年間は、指標とする消費者物価指数(生鮮除くコアCPI)が「マイナス0.5%からプラス1.5%まで2.0ポイントも押し上げた」と成果を強調する一方、昨年4月の消費増税以降物価が下落したと述べた。
消費増税の影響について「大方の予想よりも大きく、かつ長引いた」と指摘。理由として「低所得者層の拡大や、年金生活者の増加も一因ではないか」と推察した。ただ「消費増税がもたらした需要の下押し圧力は収束しつつある」と述べた。
物価の見通しについて、「当面はゼロ%程度で推移し、原油価格下落の影響がはく落するのに伴い上昇、2016年度前半ごろ目標の2%程度に達する」との公式見解を繰り返した。もっとも、「2%達成時期は原油価格に左右され、予想が難しい」とも指摘した。
<実際の物価が予想インフレ率影響>
物価の現状については「基調自体は想定した政策効果が機能する形で着実に高まっている」とすると同時に、物価の基調の判断には、1)需給ギャップ、2)予想インフレ率、3)賃金や価格の決定における将来の物価上昇の織り込まれ方を見ると説明した。
特に政策運営上で重視している予想インフレ率は、「先行き、実際の物価が上昇すると、そのこと自体も予想インフレ率の上昇要因となるため、予想インフレ率は底堅く推移する」との考えを示した。
*内容を追加します。
竹本能文
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