August 3, 2016 / 6:01 AM / 2 years ago

焦点:人工知能が背負う巨大市場の期待、社会との共存課題に

[東京 3日 ロイター] - かつてはSF(科学空想)小説や映画が舞台だった人工知能(AI)が、実社会へ本格的に踏み出し始めた。

 8月3日、かつてはSF(科学空想)小説や映画が舞台だった人工知能(AI)が、実社会へ本格的に踏み出し始めた。ワルシャワで2013年6月撮影(2016年 ロイター/Kacper Pempel)

デジタルデータの爆発的な増大と、コンピューターの飛躍的な性能向上により、人間の頭脳や肉体の能力だけでは不可能だった「発見」や「認識」をAIが得るようになり、産業や医療などの現場で活躍することが確実視されている。

2030年には国内で約87兆円の市場規模(EY総研調べ)との予測もあり、安倍政権も今年5月、AIを成長戦略の柱に掲げるなど日本政府が本腰を入れだした。

その一方で、AIによって「失業が急増する」といった懸念も急浮上。「2045年頃にはAIが人類を追い越す」といった根拠に乏しい過激な言説も目立つうえ、プライバシーが有名無実化する恐れも増している。AIで急速に進歩したクルマの自動運転の導入を含め、AIの本格的な普及に向けた制度設計や社会的なコンセンサスの形成も急務になっている。

期待と不安が入り交じるAIの急発展に人や社会はどのように向き合うべきか。企業の実務家、シンクタンクの研究者、法学者の3人にインタビューし、AIが台頭した背景や現在の力量や限界、社会と共存への課題などについて聞いた。

インタビューの主なポイントは以下の通り。

ビジネスで「結果出すAI」、世界最先端と自負=日立・矢野和男氏

米グーグル(GOOGL.O)子会社が開発したAIが囲碁世界チャンピオンに勝つなど、特定の場面では人間をしのぐようになったAIが、ビジネスの現場にも浸透し始めている。日立製作所(6501.T)研究開発グループの矢野和男技師長は、ロイターのインタビューで、「ビジネスの売り上げ増やコスト削減など、顧客のアウトカム(結果)に直結すること」をAIシステムの開発に重点を置いていると述べた。

日立のAIシステムは流通、物流、金融、鉄道など14分野57案件(2016年6月時点)で稼働しており、矢野氏は世界で最先端の技術レベルであると強調するとともに、分野ごと案件ごとの個別対応を必要としない「汎用性」が同社システムの強みだと語った。

こうしたAIの汎用化は、電卓など専用機の機能がパソコンに収れんしていった経緯と同様、必然的な流れと指摘。グーグルやアマゾンAMAZON.Oなどの米IT企業は特定用途のAIで先行しているが、日立としては「いよいよ汎用化の時代が来たと判断してAIに投資した」との戦略を語った。

「医師の領域」に進出近い、過大な期待は禁物=KDDI総研・小林氏

「CTスキャン(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)による(体内の)断層写真をAIに診断させることは実用化が近づいていて、人間の医者以上に正確な診断ができるかもしれない」──。KDDI(9433.T)総研の小林雅一リサーチフェローは、AIが専門職の典型といえる医師の領域に進出間近だと指摘する。

こうしたことが可能になった背景として、人間の脳の神経回路の仕組みを模して画像などから特徴を抽出する「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる技術の飛躍的な進歩が挙げられる。小林氏は、医療のほか、人間と協調できる産業用ロボットなどをAIの今後の有望な事例として挙げながら、「人間が現在の人工知能のレベルを正確に把握していないと、役に立つアプリケーションは出てこない」とみる。

さらに同氏は、「2045年には人工知能が人類を追い抜き、世界はシンギュラリティー(特異点)を迎える」といったAIブームを伴い流布する言説について、「可能性は否定しないが、現段階ではとてもそんなレベルではない」と強調。「意識を持って人間と会話するロボットができるなどと、間違った認識で開発しようとすると大失敗するだろう」と警告した。

倫理判断を問う「トロッコ問題」、規範や法律の幅広い議論必要=平野中央大教授

AIを搭載した自動運転には避けて通れない厚い壁がある。衝突不可避となったときに、AIがどういう危険回避策をとるべきか、いわゆる「トロッコ問題」と呼ばれるテーマだ。大きな犠牲を避けるために、小さな犠牲を許容すべきか、そうした判断は誰が決めるのか。

総務省のAIネットワーク化検討会議の座長代理を務める中央大学総合政策学部の平野晋教授は「倫理問題はみんな避けて通ろうとするが、避けてはならない。どう設計するか社会全体で決めるべき問題だ」と警鐘を鳴らす。  

(浜田健太郎、志田義寧)

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