[函館市 4日 ロイター] - 日銀の片岡剛士審議委員は4日、函館市内での記者会見で、足元でリスク要因が増えつつあるとして「従来よりも増して、政策対応の必要性が出てきている」との認識を改めて示した。
片岡委員は7月の金融政策決定会合で、短期政策金利を引き下げることで金融緩和を強化することが望ましいと主張した。
会見では「短期金利の引き下げは、経済・物価に対して最も効果的だ」と指摘。「金融政策の要諦はフォワードルッキングな政策対応が基本で、この線に沿って政策運営していくべき」と強調した。
9月会合で短期政策金利の引き下げを提案するかどうかは「経済・物価・金融情勢を十分に検討した上で適切に判断していく」と述べるにとどめた。
午前の講演では「イールドカーブの形状をより緩和的なものに変化させるよう、長短金利操作を行うことが適当だ」と持論を展開した。緩和的な形状について、片岡委員は「イールドカーブの形状は水準、傾き、たわみの3点でどういう形状が緩和的なのか判断される」と指摘。「2016年9月の総括的な検証の時に分析されているので、そのあたりを基準にしながらどういう形状がいいのかみていく」と語った。
7月会合で短期政策金利の引き下げに言及したことについては「長期金利を下げるべきなのか、短期金利を下げるべきなのか、どうするべきなのかは7月の決定会合の時に成立していたイールドカーブをみて判断した」と説明した。
足元では、金融機関を中心に金融緩和の副作用を懸念する声も目立つ。片岡委員は「仮に政策を緩和的なものにしていくことになるのであれば、その時に生じる影響──これは好影響も副作用も含めてだが──さまざまな影響について緻密に注意深く判断していくことが必要だ」と語った。
現在、長期金利は下限として意識されているマイナス0.2%を下回って推移しているが「金利変動の具体的な範囲を過度に厳格にとらえる必要はない」との認識を示した。
片岡委員は世界経済について「さまざまな意味でリスク要因が増しており、その影響も一部では顕在化しつつある」と指摘。「日本経済にも一部波及してきている」と警戒感を示した。足元で円高圧力が生じているに関しても「物価安定に一定の障害になり得る」と懸念を示した。
こうした状況を踏まえ、金融政策運営では「イールドカーブの緩和的な形状変更に加えて、フォワードガイダンスの修正、政府の財政政策との適切な連携を行っていくことが特に重要だ」と繰り返した。
志田義寧 編集:田中志保
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