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アングル:国債入札日も日銀オペ、財政ファイナンス懸念高まらず 麻痺する市場

[東京 10日 ロイター] - 財政ファイナンスへの懸念に配慮して国債入札の当日には避けてきた日銀の国債買い入れオペ(指し値オペ)が実施された。市場では、実質的にすでに財政ファイナンスの領域に踏み込んでいるとの認識も強く、10年債入札当日の買い入れでも、財政規律への懸念が強まることは特になかった。日銀の国債保有比率が高まることで流動性が低下し、国債入札の需要が強まる構図は「健全」と言えないが、市場には諦観ムードも漂っている。

 財政ファイナンスへの懸念に配慮して国債入札の当日には避けてきた日銀の国債買い入れオペ(指し値オペ)が実施された。2013年2月撮影(2022年 ロイター/Shohei Miyano)

<「原則」から1歩踏み出す>

日銀はこれまで市場機能や財政ファイナンス懸念に配慮して、利付国債入札と同日の国債買い入れを回避してきた。国債買い入れ計画の注釈にも、買い入れ対象銘柄の残存期間が重複する利付国債の入札日には、「原則」としてオファーしないと明記している。

しかし、4月の日銀決定会合では、憶測を排除するため、指し値オペを毎営業日実施するとし、例外は「明らかに応札が見込まれない場合」のみとした。例外規定に国債入札日は入っておらず、10年債入札のきょうも指し値オペを実施した。

中央銀行がいったん国債の引き受けによって政府への資金供与を始めると、その国の政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがある――。日銀HPでは、財政法5条に明記された国債引き受けの原則禁止の意義を強調している。

黒田東彦総裁も、日銀による国債買い入れは財政ファイナンスではないと繰り返し強調している。昨年10月の会見でも「日銀の金融政策自体は、財政資金の調達を助けるために行っているわけでは全くない」と指摘。「あくまでも2%の物価安定目標の実現を目指して必要な金融政策、金融緩和を行っている」と述べている。

<すでに財政ファイナンス領域、「感覚が麻痺」>

この日の入札で発行された10年債366回債は、日銀が指し値オペで大量に購入しており、4月28日の時点の保有残高は2兆0506億円と発行額の76%。他の国債に比べて割高な状態にあったが、需給的な不足感に加え、ショートカバー需要などが加わり、落札結果はやや弱めながら無難に通過した。

日銀は国債補完供給制度を通じ、366回債を9日時点で7822億円貸し出している。市場の「モノ不足」を緩和する一時的な貸し出しとはいえ、日銀が購入することで市場に不足感が生じ、日銀が市場に国債を貸すという「マッチポンプ」的な循環になっている。

日銀の国債買い入れオペは、あくまで民間金融機関が「自主的に」保有している国債を売る制度だ。強制的に買い入れるわけではなく、国債引き受けといった国と中央銀行の直接的な国債の売買でもない。しかし、日銀の国債購入や金利抑制が結果的にせよ、国債の需要を高め、国の財政拡大を容易にしている状況であることも否めない。

「実質的な財政ファイナンスの領域に入っているのではないかという懸念はすでに市場にある。ある意味、感覚が麻痺しているのかもしれないが、国債入札と同日にオペがあったからといってそれは特に変わらない」と、りそなホールディングスのチーフストラテジスト、梶田伸介氏は話す。

一方、日銀の「サポート」は量から金利に代わっていると、野村証券のチーフ金利ストラテジスト、中島武信氏は指摘する。「数十兆円規模の国債発行額に対し、日銀の国債保有額は年間10兆円程度の増加にとどまる見通しだ。金利を抑えることで、国の財政運営がやりやすくなっているとは言えるが、量を買うという意味での財政ファイナンスには当たらなくなっている」という。

<安倍元首相「日銀は政府の子会社」>

10日には安倍晋三元首相の発言が波紋を呼んだ。時事通信によると、安倍氏は9日の会合で、日銀が市場を通じて政府の国債を買い入れていることに触れ、「日銀は政府の子会社だ」と述べた。「日銀は政府の子会社なので60年で(返済の)満期が来たら、返さないで借り換えて構わない」とも語ったという。

この発言について、鈴木俊一財務相は10日の参議院・財政金融委員会で「永続的に日銀が国債を買い入れる前提で、日銀保有国債は借り換えれば良いとの考えはとっていない」と指摘。「市場からそのような疑いを持たれ、信認が失われるような事態を招くことがないようにする必要がある」と話した。

日本の2022年度予算は、一般会計総額107兆5964億円と過去最大。公債依存度は34.3%に低下したが、早くも国会では補正予算の議論に入っている。日銀の国債保有額は21年12月末時点で530兆円と全体の43.4%。財政ファイナンスではないとしても、日銀をあてにした浪費的な財政拡張が続けば、日本の信用力は低下を免れない。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニア・マーケットエコノミストは「物価がエネルギーを除いた実力ベースでそれなりに上昇しているにもかかわらず、日銀がそれを一切認めず、今の政策を継続してしまうと真の財政ファイナンスになってしまうのではないか」と話している。

日銀は10日の指し値オペについて「10年物国債金利について0.25%の利回りでの指し値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き毎営業日実施するという4月28日の金融政策決定会合の決定内容に基づくもの」とコメントした。

(伊賀大記、和田崇彦 編集:石田仁志)

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