August 5, 2019 / 7:26 AM / 13 days ago

アングル:世界的なリスク回避、「日銀フロア」試す円債市場

[東京 5日 ロイター] - 円債市場が長期金利マイナス0.2%の床(フロア)を試そうとしている。グローバルなリスク回避を背景にした世界的な金利低下圧力が要因だが、日銀が事実上の許容幅を越えて容認するかが焦点だ。円債の金利低下は、円高抑制には効果的だが、日本株にとっては必ずしもプラス材料ではない。日銀にとって難しい判断となりそうだ。

 8月5日、円債市場が長期金利マイナス0.2%の床(フロア)を試そうとしている。グローバルなリスク回避を背景にした世界的な金利低下圧力が要因だが、日銀が事実上の許容幅を越えて容認するかが焦点だ。写真は都内の日銀本店。2017年4月27日撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

<世界的な金利低下の「波」>

日本の10年最長期国債利回り(長期金利)JP10YTN=JBTCは5日、マイナス0.200%まで低下。2016年9月に決定されたイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作付き量的・質的金融緩和)導入後の最低水準を更新した。

日銀は現行のYCC政策において、長期金利をゼロ%中心に上下0.2%程度の範囲内に誘導しており、マイナス0.2%が事実上の下限となっている。

しかし、米中貿易摩擦などへの懸念から、世界では金利低下が加速。ドイツでは、30年債利回りが2日、史上初のマイナスを記録し、すべての年限で一時マイナス圏に突入した。米10年債金利も16年11月以来となる1.7%台まで低下している。

世界的な金利低下の流れに逆らわず、日銀はマイナス0.2%の「フロア」突破も認めるのか──。6月はマイナス0.195%で止まり、マーケットが日銀に配慮した形となったが、今回は当時を上回るリスク回避と金利低下圧力だ。

金利上昇局面と違って、金利低下局面では日銀の「武器」はそれほど強力ではない。金利上昇局面では、指し値オペを使い国債を無制限に買うことによって、金利を強引に抑え込むことができる。しかし、金利低下局面では、オペ減額や買い入れる国債の利回りに下限を設けることが可能だが、日銀が提示している以上に低い金利(債券価格は高い)で買いたいという投資家がいれば、フロアは簡単に突破されてしまう。

年金などは、金利が低くても一定程度、国債を買わなければならず、海外投資家は、為替スワップによって利回りを確保できる。

「日銀はフロアをどうするのか、マーケットは試しに行く」と野村証券のシニア金利ストラテジスト、中島武信氏はみる。

<日銀は拡大容認との見方、試すのはマイナス0.25%か>

日銀の雨宮正佳副総裁は1日の記者会見で、長期金利が大きく変動した場合の対応を問われ、水準だけでなく変動率や背景なども考慮するとしながらも、「大きく動くようであれば、それ(変動許容幅)を広げることも当然、ありうる」と話した。[nL4N24X1WC]

2日に公表された6月19・20日の金融政策決定会合議事要旨でも、長期金利低下について、何人かの委員は「金利変動の具体的な範囲を、過度に厳格にとらえる必要はなく、今後も、弾力的に対応していくことが適当」と指摘している。

金利が急低下するなかでも、5日の日銀オペではオファー額が据え置かれた。市場では「日銀内でも許容幅を容認する考えが広がっているのではないか」(国内証券)との見方が浸透。今月は16日まで長期債対象のオペが予定されていないことも加わり、「日銀フロア」を試す機運が高まる要因となっている。

日銀の金融政策方針を示す声明文には、下限がマイナス0.2%と明記されているわけではない。長期金利の目標は「ゼロ%程度」。その「程度」の範囲が、黒田東彦総裁の発言などによってプラスマイナス0.2%とみられているだけだ。

ただ、決定会合を待たず(次回は9月18─19日)に、執行部の判断で許容幅を広げることはないとみられている(雨宮副総裁が18年8月の記者会見で言及)。そこで市場が注目するのは「マイナス0.2%」と判断できるギリギリの金利水準だ。

「マイナス0.3%ではなく、まずはマイナス0.25%をマーケットは試すのではないか。その程度であれば、世界の金利低下に整合的と説明が付く」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア債券ストラテジスト、稲留克俊氏は予想する。

<円高抑制期待されるが日本株には功罪>

円金利低下は円高抑制効果が期待される。7月後半に開かれた日米欧中銀会合は無難に通過したものの、1日にトランプ米大統領が打ち出した対中関税・第4弾の実施方針で、相場ムードは一変。世界的な株安・金利低下が進み、円高も進んでいる。

ドル/円は5日、一時105円台まで低下。今年1月3日の「フラッシュ・クラッシュ」以来の円高水準となっている。「世界的に金利が低下するなかでは円安にはならないにしても、日銀の許容幅拡大は、過度な円高を食い止める材料にはなるかもしれない」(国内証券)という。

ただ、円高が抑制されても、日本株のプラス材料になるかは別問題だ。長期金利の低下は、利ザヤの低下を想起させ、銀行株の下押し要因になる。イールド・カーブのフラット化はキャリー運用を難しくさせ、銀行収益を圧迫することもマイナス要因だ。

日銀がマイナス金利政策を導入した16年1月。マーケットは銀行株が下落する形で、株安・円高が進行。期待されたような効果は生まれなかった。

黒田日銀総裁も前月30日の記者会見で、イールドカーブのフラット化について「もう少しスティープになった方が正常」との考えを示した。ただ、そのうえで、追加緩和時にどのような措置をとるかについては「その時の経済・物価・金融情勢を十分考慮して、副作用にも十分目配りして、適切な追加策を講じる」と述べている。

円高を防ぐために金利低下を許容するのか、それとも過度なフラット化を防ぎ副作用を抑えるのか。制度的な「きしみ」も聞こえ始めた現在の金融政策フレームワークをどうするのかといった先を見据えながら、日銀の選択を市場も注視している。

(伊賀大記 編集:石田仁志)

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