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焦点:生産ピーク近しの声、自動車起点の減速シナリオ浮上
2017年6月30日 / 08:47 / 5ヶ月後

焦点:生産ピーク近しの声、自動車起点の減速シナリオ浮上

[東京 30日 ロイター] - 「雲一つない青空」ともいえる好調が続いてきた国内生産に「薄雲」がかかってきた。生産に比べて足元で出荷の勢いが弱く、在庫が積み上がりつつあることから、生産のピークがそう遠くない時期に到来すると懸念する見方も浮上している。背景には米国販売の鈍化が鮮明になってきた自動車の「減速」傾向があり、在庫循環図が示す在庫調整リスクの高まりとともに、景気のリード役である生産をめぐる先行きに慎重さも必要との指摘が出ている。

 6月30日、「雲一つない青空」ともいえる好調が続いてきた国内生産に「薄雲」がかかってきた。生産に比べて足元で出荷の勢いが弱く、在庫が積み上がりつつあることから、生産のピークがそう遠くない時期に到来すると懸念する見方も浮上している。写真は横浜で5月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

<「死角なし」から一転、在庫調整リスク>

「生産の峠が視野に入ってきたのかなという気もする」──。経済産業省幹部は5月の鉱工業在庫循環図の解説で、生産のピークが近いとの見通しを示した。生産増加の勢いに比べ出荷がやや鈍く、在庫積み増しペースが速いためだ。

一見すると、今のところ生産に死角はないようにも見える。5月は前月の反動減が色濃く出たものの、6月予測指数を前提とすると、4─6月期は前期比2%程度の大幅増産も見込める。

それでも経産省幹部が弱気とも取れる表現を使う背景には、楽観ばかりしていられない数字もあるからだ。

6月予測の上昇は、5月が下振れたためであり、水準はむしろ前月段階での見通しより低い。7月の予測指数はほぼ横ばいにとどまり、8月以降、再び増加基調に戻るのか、不透明だ。

在庫循環図でみると、現在は需要増加をにらんだ生産増加と在庫の積み増しが進行中だが、在庫の増加と生産鈍化が始まる「在庫積み上がり局面」の領域に入る時期もそう遠くないことがうかがえる。

みずほ証券・シニアマーケットエコノミストの末廣徹氏は「生産はならしてみれば堅調な推移だが、全体の出荷・在庫バランスは悪化傾向にある。輸出の伸び率鈍化などによって出荷の伸び悩みが顕在化すれば、在庫調整のリスクが高まるだろう」とみている。

<自動車生産、米国販売鈍化の影響>

先行きの不安が漂うのは、主に自動車生産の行方だ。米調査会社オートデータによると、トヨタ自動車(7203.T)の米国での販売台数は、1─5月累計で前年比4.7%減。

米国における全社合計販売台数も、同2.0%減となり、今年に入ってからの停滞が明確になってきた。

信用力の低い消費者を対象にしたローンの増大で、自動車販売に先食い需要が起きた反動や、延滞に伴うローン抑制が影響しているもようだ。

日本の生産統計の出荷内訳をみると、自動車のウエートが高い米国向け輸出は、2月を除いて、今年に入って前月比減少ないし横ばいが続いている。

鉱工業生産ベースの輸送用機械の出荷は、今年1─3月に4四半期ぶりに前期比減少に転落。4、5月も一進一退となった。

在庫率も過去5四半期と比較しても高めとなり、今後の国内外の販売動向次第では、在庫調整も起こり得る状況になっている。

経産省は「今のところ、在庫積み上がりはコントロールされている」と認識しているが、SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミスト、丸山義正氏は、米国以外向けの輸出や好調な国内販売が米向け輸出鈍化を補う可能性を指摘しつつ、「自動車セクター発の調整で、7─9月期に生産の増勢が鈍る可能性はある」としている。

また、生産好調を支えているもう1つの大きな柱である電子部品・デバイスの動向にも、足元は前年比2割増の出荷ペースで在庫も低下傾向だが、振れが大きく需要動向には注意が必要だ。みずほ証の末広氏は「例年通り秋に発売される見込みである米大手メーカーの新型スマートフォン向けの電子部品の需要か、゙どの程度かに注目が必要」と話す。

<米中にも弱気材料>

一方、政府の月例経済報告は6カ月ぶりに景気判断を上方修正し、民間エコノミストの間でも足元は堅調との見方が多数を占める。

農中総研・主席研究員の南武志氏は「最近は景気減速観測も浮上しているが、実際に景気がすぐに悪化する可能性は大きくない。しばらくは生産活動の増加傾向が続く」と予測する。

ただ、米トランプ政権の政策実行力や、米金融政策の引き締め方向への転換が、米経済の行方に与える影響は読みにくい。

また、中国の金融引き締めの影響が、同国経済の減速につながると警戒する声もあり、複数のエコノミストは、今年後半の生産下押し材料に目を配るべきだと指摘する。

経産省は6月生産について、予測指数から1%ポイント程度、下振れすると予想。トレンドは再び下降線をたどる可能性が高まっている。昨年来の生産上昇局面は、先行きを大きく左右する分岐点に差しかかってきたようだ。

中川泉 編集:田巻一彦

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